格致狂言
白玖黎
龍鶏邂逅
天の
宗教、哲学、芸術その他あらゆる
中でも最も
後の時代には「科学」という名で広く知られるようになった
◆ ◇ ◆
誰もが夢見るような
生来学を好み、忠君愛国の精神を持ちあわせ、天子の覚えもめでたく、
加えて、かの中原
天は人に二物を与えずと言うが、二物どころか三物四物を抱えた彼は君子の
しかしその日、世にも珍しい
「……
「
「しかし、私は何も耳にしておりませんが」
「決まったことは決まったことなのだ。ほら、この通り」
上官の男が見せた書状を陳元龍はまじまじと観察した。
末尾には、当代の大清国皇帝である
「聞いたぞ。
「私はそのようなことなど一切……」
「ああ、もうよい。その気に食わない
男は
公明正大な陳元龍が理解するはずもなかった。
泥を
かくして、学士の位を
しかし、取り次ぎの官吏に案内されている間も、彼の思考にはある違和感が引っかかっていた。
「欽天監だというのは本当に間違いないのか?」
「は。そのように
「いや、しかし……かの官署は天文を
「さあ。末官からは何とも」
地方の
たしかに、変人と
心中で
城外の
広大な庭に巨大な道具がいくつも影を落としている。
地球儀、
薄暗い部屋の中に
「ひっ……し、
陳元龍の後を追った官吏は、力なく床に横たわるものを前に硬直した。
それは若い青年のようだった。
陳元龍が目を
怯える官吏を
一面に飛び散った赤黒い液体が衣服の胸元にもこびりついていた。
呼吸を見て、脈をとる。案の定反応はなかった。
「何だ、本当にただの
そのときだ。
ふいに屍の指先が動き、かっと両眼が開かれた。
「……ぷはあああ! やった、やったぞ! おお神よ、ついに我は成功した! 息を殺し脈を止める、これぞ真の
深い海を
「誰だきみは!」
「こちらの
「ああ、わかったぞ! 天子が言っていた新しい教え子とはきみのことだな!」
教え子? いったい何の話だ。
陳元龍が首を
「臣下に
地べたで
「これで九人目だ!
「……どん底?」
「どんぞこだっ!!」
一体なんだこの屍は。死んだと思えば生き返る。
蚊の鳴くような声で
おまけに。
「監正、ということはお前がここの長官か」
「そうだ! きみは天子に命じられてやってきたんだろう?」
「そういうことになっている」
「ならば話ははやい! きみは新たな弟子に選ばれたのだ! これから毎日ここへやってきて、我から教えを授かることになる! 逃げた先代の代わりにな!」
ちょっと待ってくれ、と陳元龍はこめかみを押さえた。
「疑問が尽きないのだが……そもそも、お前は
「違う!」
「ならばなぜ息を吹き返した? この血はどうしたのだ」
「息と脈をとめる練習をしていただけだ! これはおやつの
「なるほど、狂人だったか」
「少し違う気がするが、まあいいだろう! 我が名はジョアシャン・ブーヴェ、この地では
しばしの
「私の仕事はそれだけか?」
「それだけだ! いいな!」
「私は、こんなやつと
「サセン、は知らないが、きみは逃げてくれるなよ! 新人!」
陳元龍はまだ知らなかった。
この白晋とかいう
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