第32話
「旦那様、お嬢様。そろそろ参りましょう。」
「あぁ。それじゃあメリア、手を。」
『はい。ありがとうございます。』
お父様が差し出してくださった手を取り、そのままお父様のエスコートで、私の家の馬車に乗る。
馬車の中には、私にお父様、そして護衛のためユルリッシュが乗っている。
隣国に向かうので、結構の時間がかかってしまう。私の家は国の真ん中に、そしてアレス様の家もアレス様の国の真ん中の方に建てられている。国を代表するお城ですから仕方ありません。
「そういえばメリア。お前に伝えなければいけないことがある。」
『はい。なんでしょう?』
「アレス君との婚約破棄なんだが、まだ正式に公表していないのは知っているな?」
『はい。アレス様が止められたとか。』
「そうだ。それによって、お前は多くの家の人間から妬まれている。いつもならアレス君が近くにいたが、今回はそうも言ってられない。アレス君の国の建国パーティーだからな。」
『そうですね。ですがお父様。私は今までアレス様の近くに居ました。妬みなどには慣れています。そして、私たちは近くに居ても居なかったような関係でした。何も今までと変わることはありません。』
私達の関係は完全に冷えきっていた。それは紛れもない事実です。近くに居ても、一言も話さない。目も合わせない。私が陰で何を言われても、アレス様は一切関与しない。
それが当たり前ですもの。それにそれは私が望んでそうなるように仕組んだこと。今更妬みなどで怖くなんてあるわけがありませんわ。
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