神社

 駐車場に停まってすぐ、転がるように車を出た。砂利が近かったので、かなり小さかったと思う。

 それから私は、痩せて骨ばった手に軽々抱き上げられ、オレンジ色の袈裟を見下ろした。黄色かもしれない。砂利が遠かった。剃った頭も見下ろした。当時の私はこれをハゲだと思っていた。

 いずれにせよ、その違いは私の彼への好意に影響を与えなかった。たぶん初恋の君。

 私は白熊神社(仮)に行くのが大好きだった。神社の敷地は広大で、私にとってはちょっとした異界だった。何より、白熊神社(仮)のお坊さんに会うのが好きだった。

 神社であるのに、お坊さんがいることに疑問に抱く余地は幼い私には無かった。神社と仏閣に違いなど無かった。また、神仏集合の概念も無かった。

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