第38話 入学初日の朝(補完的な話)

 高校初日の朝。


 出かけるにはまだ少し早い。

 だがしかし、今日が登校初日。

 学校までの道のりに慣れていないこともある。

 頑張ろうと心の中で思い立ち上がったが、俺の目の前に母親が立ちふさがった。

 大学を卒業してから数年で父と結婚した母は、俺が言うのもなんだけど年の割には少し若く見える。

 見た目維持のためか忙しい毎日の中でも軽い筋トレなどをしているのを毎日のように目にしていた。

 普段は仕事が忙しくこの時間にはもう家にはいないはずだけどな。


「な、なんだよ……? 大体なんで今日は仕事に出かけないんだ」

「入学式くらい親として出席するの当たり前でしょ。子供の晴れ舞台で、1度しかないことなんだから……たくっ、知らないうちに髪そんな色にしちゃって……どうするのよそれ、悪目立ちするわよ」

「い、いいんだよ、それで……」

「おおかたギャップ狙いとか、しょうもないこと考えたんでしょ」

「……」


 まだ慣れていないネクタイの結び方が気になったのか、少し強めに締められる。

 図星で返す言葉もなくなっていると、階段をどたばたと降りてくる音がして、台所に妹が顔を出した。


 俺を視界に入れると、心底嫌そうな表情が露に。

 そのまま荷物を持つと、すぐに踵を返す。


「こら由加、お兄ちゃんにおめでとうくらい言いなさい」

「ふん……そんな見た目で新生活をどうにかしようとか浅はかすぎ。なんで自分のこととなると全然頭使えないわけ……おめでとう、ぼっちが確定的なバカなお兄ちゃん」

「……」


 こっちを一切見ずに、完全な嫌味とも取れる言葉を吐き出す妹。

 数秒後、勢いよく玄関の扉が閉まる音がした。


「怒ってるわね……なに、まだ実の妹と険悪なの……」

「あれを見て険悪じゃないと思う人はいないだろう……全部俺のせいだから……」

「敬大も由加も言わないからこっちから聞こうとしなかったし、事情を全部知ってるわけじゃないけどさ、一人で背負いすぎなんじゃないの……自分の良さとか、本質とかからも今は目を背けてる状態でしょ」

「……」

「たくっ、誰に似たのかしらね……ねえ、見た目から自分をさらけ出す人と、偽る人、どっちが魅力的に映る?」

「そ、それは……」

「ちゃんとわかってはいるようね。なら、もう一つ質問。とあるホームパーティで事件が起きました。どうやら林檎から毒が検出されましたが、林檎を食べた人全員が症状を訴えたわけではありません。どうして食べても症状が出なかった人がいたのでしょう……?」

「そんなの、林檎を切ったナイフの反対側だけに毒を塗っておいたからだろ。ターゲットには毒が付着した刃で切った林檎を渡せばいい」

「どうやら頭が鈍ってる、ってわけではなさそうね。由加が言っていた通りか」

「……」

「まあ、いろんなことをどうしようもなく悩んで、考えて、1つずつでも答えを出しなさいな。そんな見た目でも、クラスに一人くらいは味方してくれる子がいるかもしれないし」

「な、なんだよそれ……お、俺もう行くぞ」

「あっ、ちょっと……」


 玄関に向かう俺の背中に母親が思い出したように声をかけた。


「なに……?」

「制服、真新しいんだからね。変なことに首を突っ込んでいきなり汚さない事」

「……そんなことするわけないだろ……」


 母親にありえないとばかりに反応した俺なのだが……。

 この後、本当に真新しい制服を汚してしまうことになってしまうとは夢にも思っていなかった。



☆☆☆



 この度、本作がカクヨムコンテスト10(ラブコメ部門)特別賞を受賞しました。

 応援してくれたお知り合いの方々、そして読者のみなさん、本当にありがとうございます♪

 これから読んでくださるであろう読者様もありがとうございます♪


 この話は特になくてもいい話なのですが、受賞を記念して、こうして書かせていただきました。


 完結済みでしたが、今回話を投稿するにあたり連載中に戻しました。

 第2章も描く気満々ではいるのですが、いつ始められるかはちょっとまだわからないので、気長にお待ちいただければありがたいです。


 重ねてになりますが、本作をお読みくださった読者の皆さん本当にありがとうございました♪

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学園のアイドル「じゃない方」の女の子と友達になった俺は、彼女の見た目が偽装であることを知っている 滝藤秀一@カクヨムコン10特別賞受賞 @takitou

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