退廃的焼きそば
白川津 中々
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幼稚園の頃は仮面ライダーで、小学生の頃は社長で、中学生の頃は声優で、高校生の頃はユーチューバーで、夢はころころと変わっていき、今は正社員である。
どんどん夢のハードルは下がっているけど、なれる気がしねぇなぁ。
PCモニタに出力されている履歴書。志望動機の欄は空白。動機もくそもない。安定して金がほしいだけだ。そこを建前で塗りつぶすのが、酷く気怠い。
普通の生活ってのは、難しいもんだね。
当たり前に学校へ行って当たり前に高校を出て、当たり前に働けると思っていたらそんな事はなかった。就職面接の結果はすべて落選。それでも金を稼がねばいけないから、バイト、バイト、バイト。気がつけば三十手前。収入や世間体を考えると定職に就きたいが、今更人生の軌道修正なんてできるわけもなく、する気もなく、それでいて、ただ無気力に、今より楽な生活をしたいと望んでいる。仮面ライダーも社長も声優もユーチューバーも同じ。当時の俺は、彼らを見て楽そうだから、なりたいと思っていた。
みんな、頑張ってるのになぁ……
仮面ライダーも社長も声優もユーチューバーも楽しいばかりじゃないし楽なわけでもない。それを知り、「なれない」と諦め、俺は徐々に人生をくだっていった。結果、無気力無力な底辺生活が続いている。それで満足できれば幸せになれそうだが、どうしてだか、変わりたいと思ってしまう自分もいる。何もできない、何もやらないくせに。
……昼か。
結局履歴書は埋まらず、焼きそばを作ってビールを飲んだ。退廃的な味が身に染みる。
悪くない。焼きそば屋でも始めるかな。
ありきたりな焼きそばを食べながらそんな妄想をする。バイト生活は、まだまだ続きそうだ。
退廃的焼きそば 白川津 中々 @taka1212384
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