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第1話

裕福だったとか、両親が仲良かったとか、そんなの覚えてない。




あたしが4歳の時、父が死んだ。




記憶にある父の顔はもう思い出せないけど、飾られた写真が嫌でも父を思い出させてくる。




そんな風に写真を飾ったり、よく死んだ父の話をしたりしてるし、夫婦仲は良かったんだと思う。




父が死んでから、父方の家族とは交流がない。というより、あたしの記憶にはほぼ残ってない。唯一ある記憶は、父の三回忌で祖母があたしを忌々しい目で睨みながら泣いてた記憶だけ。




母の両親は、日本のかなり西の方に住んでいて、元々体の弱い祖母に祖父が付きっきりだ。




父が死んでから再婚するまでの約9年、母は1人であたしを育ててくれた。総合病院でバリバリのナースとして働く母の帰りはいつも遅かったし、休みもバラバラだった。




それでも待っていれば帰ってくるし、学校から帰る頃には仕事が終わって母が家に帰ってきていると思えば小走りで家まで帰った。




仕事が忙しい母の力になりたくて、毎日料理を作って待ってた。




何時に帰ってくるか分からない母を待つ為、友達と呼べる友達も作らず、母が帰ってきたらすぐに起きれる様にソファーで寝た。

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