今まで探して、求めて、でも無かった作品にようやく出会えた
- ★★★ Excellent!!!
ヤンデレ作品のヒロインは多かれ少なかれヤンデレになる気質を持っている。
それが多ければ主人公に関係なくその人に依存するだろうし、少なければ主人公がヒロインをヤンデレにした要因を持っているのだろう。
この作品は前者の色が濃く出ている作品だ。ここでありがたいのが、主人公がヤンデレにした要因を持っているのであれば、納得性を持たせるため主人公が尖ったキャラになりがちで、それを受け付けない人が一定数いることだが、ヒロイン自身に問題があるならその心配がほとんどなくノンストレスで読むことが可能なことだ。
この作品のヒロインはヤンデレではあるが、
包丁を振り回すだけで主人公が自分のものになると考えているわけでも、
他のヒロインの心優しさを受けて主人公を譲るなどというエセヤンデレでも、
愛の重さを髪の毛を食べさせて表現しようとする気色の悪いヒロインでもなく、
ただただ、自分と自分が愛した人が幸せになるために動くヒロインである。
ここで重要なのが、自分が幸せになるために動くという点だ。そのために主人公に近づきそうのキャラを排除するように行動するし、それが主人公にバレないようにもする。ここまでだったら他の作品にも見られるだろうが、この作品の秀逸なところは、主人公視点で見るとこのヒロインのそのような行動と深い愛情がわかりづらく、自分はヒロインに少し深く愛されているくらいの認識で済んでおり、さらにそれらをあり得ないと感じさせない展開と文章であるように感じる。
また、この作品の個人的に好きなポイントは外野が主人公とヒロインの間に深く入ってこようとしない点だ。よく見られるものとして、後から出てきた性根がよく芯の強いヒロインがヤンデレヒロインを見て「自分が助けてあげないと」だったり、主人公を好きになって元からいたヒロインとライバル関係になったりなどがある。ここで新たに出て来るヒロイン達は少なくとも元々いたヒロインと同程度、もしくはそれ以上のインパクトを持っていないのであれば、それは主人公とヒロインの関係を邪魔するだけの無駄なキャラだと断言したい。しかし、この作品のキャラはそういうキャラが出てきたとしてもそいつらをいつまでも出すのではなく、いいタイミングで、意味を持たせてフェードアウトさせている。基本的にヤンデレ作品において私が求めるものは、主人公とヤンデレヒロインが織りなす物語なので、こうした余計なものがずっと付き纏っている状態でないのは有難いと思った。
私には文才がないため、ここまでダラダラと色々書いたが、最終的に言いたいことはこの作品に感動したということだ。願わくば、今のような書き方のままこのまま完結まで持っていくことを願っている。