リミテッド勇者! ~余命7日の極道英雄は異世界で無双する~
花沫雪月🌸❄🌒
第1話 余命7日からの勇者召喚
「勘。まさかお前さんがハジキじゃなく病気で倒れるなんて思いもしなかった」
「そいつは俺もでさ、鉄の親父」
とある市立病院の病棟の個室に2人の男がいた。
かたや患者衣に身を包み病床に身を横たえている筋肉質の角刈りの男。
はだけた患者衣から露出する肌のアチコチに刃物傷が見てとれる。
かたや黒いブランドスーツの恰幅のよい男。
こちらも頬に深い傷が入っている。
どちらも明らかに堅気ではない雰囲気を纏っているこの男達はいわゆるヤクザというやつだった。
「余命、一週間だって?」
「長くてそんなものだそうで。手の施しようもないってんで邪魔っ気な管やらなんやらもこの通り、全部片付けて貰って今は痛み止めに強い薬を。ま、ブツよりは効きやせんがね」
「そうかぁ」
傍目にはピンピンしている患者衣の男、
対する鉄はどこか寂しげな雰囲気を醸し出していた。
鉄は抱えていた紙袋からガサゴソと小さな1CUPの酒瓶と煙草の箱を1つ取り出した。
「おぉ、ありがてえや」
「本当に良かったのかい? 末期の酒と煙草がこんな安物で」
「えぇえぇ、舌が安いもんで。下手に味の分からなさそうなのよりはいつもやってたやつのほうがいいってもので」
「ならほれ、看護婦がやって来る前に」
「へい、ありがたく」
いそいそと煙草の封を破り1本を口に咥えた勘に鉄はジッポを擦ると火を差し出した。
すぐに煙草に火がつき、勘は煙を大きく吸い込む。すぐに瓶の口を切るとグッと煙ごと流し込むように酒をあおる。
「相変わらずめちゃくちゃなやり方だ。そんなだから癌なんかになるんだ」
「へへっ、せっかちな性分で。すいやせん」
再び勘は煙を吸い込み酒をあおる。
噎せそうになったか、それとも最期の嗜好品の味を噛み締めているのか。かたく瞑った目の端から涙が溢れた。
「カーーー……たまらねぇ!」
そう漏らした勘が目を開けると、そこはもう病室ではなかった。
「はぁ?」
ぽかんとアホヅラを晒す勘。
先程まで居た筈の鉄はおらず、ベッドもない。
患者衣のまま何もない空間に放り出された勘の頭に何者かの声が響き渡った。
「パンパカパーン! 勇者カン! 貴方は選ばれました! 世界を救う者として!」
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