銀髪魔女は今日も憂鬱

みろうどひえん

第1話遠い道のりとその欠片

暖炉に薪を並べて、欠伸をしながら火の言葉を呟く。

火種がないのに薪から白い煙が立ち昇り、燃え始める。

黒い外套、白い麻布の服。黒いスパッツ姿の少女は再度、退屈そうに欠伸をすると円盤の椅子に腰を降ろす。

銀色の長髪は彼女の意志とは無関係に揺れ、透き通るような青い瞳からは涙が出てくる。

夜通し、本を読んでいたのもあって眠気は最高潮に達していたが、眠気を程よく排して、直食の支度を始めるのであった。

ボータリアス大陸の辺境の地に落ち延びてはや100年とちょい。

ここの生活も馴染んで来た頃、私ユーリシアカ=ベルガンダは1匹のスライムと出会う。

眠気を我慢しているのもその同居人に餌を与えなければ五月蝿いからと言う魔女からぬ理由である。

「おはよう、ベアトリス。早いのね今日も」

「おはよう、ユーリ。健全な一日とは朝のコンディションから決まるのだ」

同居人である丸っこい黒いスライム。

自称魔王と名乗る不遜なスライムは今日もぷにぷにしている。

可愛い、そしてぷにぷにしたいが本人が許さないのだ、悲しい。

朝食は豆の炒め物。外で飼っているコカトリスの卵スープ、そしてボブ豚のベーコン焼きである。

通常個体のスライムの食事は丸呑みであるが、そこはベアトリス。

スライムではないと思われたいのか、人型に擬態して食事をしている。

食器を器用に使いこなす様はまるで人のようである。

「で?今日はどうするのだ?」

「え、寝るけど」

苦笑に近い、笑い声。

眠気で船を漕ぎながらそう答えた私は少しムッとなる。

「食事まで作ったのにー」

「それは感謝している。その対価に吾輩は獲物を取ってきてくるであろう?」

確かに食事担当は私、調達担当はベアトリスと決めていた。

「それに自堕落な魔女と一緒に魔王が居る森などと言われるのは吾輩の沽券に関わるのだ、うんうん」

そういい、食べ終わった分の食器を洗い始めたスライム。


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