第13話 試合2
開始の合図と同時、両者が指を鳴らした。
シエラが盾を構えながら即座に後退を始める。
次いで右手を振り翳すとほぼ同時、テレーズの足元が凍りだした。
気付いたテレーズは疾走する。
シエラは後退しつつテレーズの進行方向に、着地点を潰すように地面を凍結させていく。
凍る地面に捕まらないよう、ジグザグに走りながら少しずつ距離を縮めていくテレーズの体に、電流が流れる。
その瞬間、瞬く間に加速した。 紫の髪が一文字に靡く。
だが、シエラに焦りは見えない。手を翳し広範囲を一気に凍らせる。
テレーズはそれを大きく跳躍し一回転、回避したか。
・・・いや、着地点が凍結している。
だが、範囲が狭い。 エーテルが尽きたようだ。
再び魔力を広げるシエラだが、ほんの少しタイムラグが生まれてしまった。
「遅い」
テレーズは凍った場所を巧みに避け接地し、その脚で更に加速する。
魔力干渉に気を取られたシエラは、一瞬彼女の姿を見失ってしまった。
マズい。
気づいた時にはテレーズが眼前まで迫っていた。
しかしシエラは、まだ生成に時間がかかるはずの氷壁を生成し、左側だけ地面を凍結させテレーズの回避の動線を誘導する。
エーテルが尽きた理由はこっちだったか。器用な奴だ。
そして次の瞬間に、氷剣を生成する。
壁を素早い踏み込みで回避したテレーズの視界に映ったのは、振り下ろされる氷剣――。
だが、テレーズそれを身体を捻りギリギリで回避する。
「まだよ!!」
シエラが大きく踏み込み氷剣の刺突を繰り出す。
テレーズは飛び退くが、シエラが追い縋り氷剣の連撃を放つ。
だが、どの斬撃も巧みに避けるテレーズに届かない。
そしてシエラの攻め終わりを待っていたかのように、テレーズは体勢を立て直し突貫する。
その時、テレーズの剣に電流が流れ――
シエラの盾とテレーズの剣が激しく衝突し、金属と電撃の音が同時に響き火花が散る。
一瞬の火花が止み、視界が晴れた。
テレーズは剣をゆっくりと下ろし立ち直る。
シエラはよろめき、倒れ伏した。
「勝者、テレーズ・テスラ!!」
・・・感電。金属の盾が仇になったか。
同属性の仲間が敗北した悔しさからか、眉間に力が入ってしまう。
ロイに手当され、意識を取り戻したシエラはセレーネ教官に支えられながら、こちらへ戻ってくる。
「負けちゃったけど、私頑張ったでしょ?」
「ああ。格好良かったぞ」
「ありがとう。でも、悔しいなぁ・・・」
悔やし涙を浮かべながら微笑むシエラ。
少し胸が痛い。
*
その後、オレは順調に勝ち上がり準決勝まで残った。
一方、ユーゴはエレナを降したヴィンセントとかいう男と当たり、負けてしまった。
そして準決勝。相手は、――トーマスだ。
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