第6話 主人公登場

このアガレスト学園は、四つのクラスに分かれている。


S,A,B,Cと分かれており、事前試験の結果や才能によって決められる……建前上は。


実際は未だに身分制度が残っており、現に俺は試験を受けていないのにSクラスだった。


まあ、元々剣技と魔法に優れていたから不正ではないが。


「……リオン殿下」


「学校にいらっしゃるということは」


教室に入った俺は、当然注目の的になる。

先程の出来事もそうだが、何よりの問題は……俺が学園にいるという意味。

つまり、俺が王太子争いに負けた事を意味する。


「まあ、それでいい」


王太子など目指したら、破滅ルート一直線になってしまう。

だったら、どんどん広まってくれたらいい。

そう思いながら、教室の黒板に書いてある文字を見る。


「ふむ、一番後ろの端か」


教室内は大学の講義室に近い感じで、後ろに行くにつれ段差があるタイプだ。

生徒達に注目されつつ、俺は自分の名札が置いている席に向かう。

すると、途中で先程会った女の子が頭を下げてきた。


「あ、あの! 改めまして、先程はありがとうございました!」


「気にしなくていいと言ったはずだ」


「いえ! わ、わたし、カレンと申します!」


おっとりしてそうだが、その目は意外と意思が強くどうやら引いてくれそうにない。

俺はため息をつき、仕方ないので相手をすることに。

……どうでもいいが、お辞儀をした際にこの子の胸が大きいことに気づいてしまった。


「俺の名前はリオン-フレイヤだ」


「フレイヤ……この国の王様と同じ?」


「ああ、そうだ。この国の第二王子になる」


「し、失礼しました! わたし、礼儀とか知らなくて……」


「いや、気にしないでいい。この学園においては、俺はただの生徒にすぎん」


建前上は身分差のない学園だが、さっきの通りそれは表面上だけだ。

そしてこの身分制度こそが、主人公が打破すべき名目の一つだ。


「ふぇ? ただの生徒ですか?」


「ああ、そうだ。なので、さっきのはただのクラスメイトを助けたということにすぎん」


「で、では、わたしもお助けします!」


「その機会があればな」


そして彼女の横を通り過ぎて、自分の席に着く。

すると、横から睨みつけてくる女子生徒がいた。

紅髪に赤い制服が似合っている、幼馴染であるセシリアだ。


「……どうした?」


「べ、別になんでもないわ。ただ、随分と平民の女の子に優しいことね」


「大したことはしてない。単純に、気に食わなかっただけだ」


「本当に変わったわね……いや、戻ったのかしら?」


何やらブツブツと言っているが、俺が言った事を覚えているのだろうか?

俺と関わっていると、セシリアがこっちルートに来てしまう可能性がある。

それだけは、何としても避けねばなるまい。


「おい、この間も言ったが俺に関わらない方がいい」


「ふんっ、指図は受けないわ。それは私が決めることよ」


「……相変わらず、頑固な奴だ」


「うるさいわね」


どうやら、こちらも引きそうにない。

すると、スーツを着た先生らしき人が入ってきた。

ただ、その容姿は中学生程度にしか見えない。

身長は小さく幼児体型、金髪の可愛らしいボブの女の子だ。


「皆さん、おはようございます。担任のセリーヌです」


「せ、先生?」


「どう見ても、中等部の女の子にしか……」


「でも、確かセリーヌって……あの、風魔法の達人の方では」


「なんと……あの方が風雷のセリーヌ様か」


……なるほど、セリーヌか。

確か、唯一の先生攻略キャラだったか。

風魔法の使い手にして、シルフィード伯爵家の長女でもある。

きっと、容姿に関しては……開発陣の願いが詰まってるに違いない。


「もう! 私はきちんと成人してますから! もうすぐ二十二歳です!」


「……嘘だろ?」


「何かの間違いじゃ……」


「間違いじゃありません! さあ、チャイムもなったので席に着き……」


その時、教室の扉が勢いよく開かれる。

当然視線はそちらに向かい、俺は目を見開く。

日本人風の顔に色素の薄い茶髪、少し頼りなさそうな雰囲気。

身長や体型は平均的で、どちらかというと美少年系の男子。

あれは……アガレスト学園の主人公に間違いない。


「はぁ、はぁ……間に合ったかな?」


「まあ、チャイムは鳴り終わってませんから……良しとしましょう」


「ありがとうございます」


黒板の席を確認し、少年は自分の席に向かう。

その際に、一瞬俺の方を向き……睨みつけてきた。

しかしすぐにやめ、真ん中辺りの席に座る。


「何だ? 何故、睨みつけてくる?」


おかしい、俺はまだ何もしていないはず。

もしや、知らない間にフラグを立ててしまったのか?

くそっ、こういう時にゲームの知識が中途半端なのが悔やまれる。


「姉貴もリオンが好きだったので、ゲーム自体に興味は薄かったしな」


むしろ、主人公を嫌いまであったような。

確かなんだっけ? ヘラヘラして調子が良くて嫌いだっけ?

女の子に囲まれてデレデレして、正義感ヅラしてむかつくとか。


「……我が姉ながら、何でゲームやってたんだろうか」


「ねえ、大丈夫? さっきからブツブツ言ってるけど」


「すまん、平気だ」


おっと、いかん……つい、動揺してしまった。


ともかく、あいつの行動には気をつけないとな。




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