第10話「休日の迷宮」
先日の盗賊狩りの翌日、私は朝起きた瞬間に腰に手を当てる、まだ未だに刺された所に違和感があった
いや、正確には違和感はないのだがなにか心残りがあるような感覚がする
朝は昨日手に入れたお米を炊き、お肉を焼く
味付けは塩しかないので少し悲しいと思ったがこの世界の魔物のお肉は魔力を持っているからか味付けなしでも美味しい
朝からガッツリ食べ迷宮に行く準備をする
収納魔法の中に予備の食料、腰に短剣といつもの装備にボディバッグを用意する
これはたまたま露店で見つけて衝動買いしたやつだ
あの露店以外で同じものを売ってるのは見てないので買えてよかった物だ
ボディバッグの中には回復ポーションと解毒ポーション、マジックアイテムの短剣など基本即座に使えるようなものを入れる
ポーション類は武器屋の店主が投げナイフと一緒に使ってくれとたくさんサービスしてくれたので思い存分使える
短剣は毒を縫っているためヒットアンドアウェイになった時と魔物に掠らせて置けば殺せるので一応持っていく
家を出る時に荷物の最終チェックを行い冒険者ギルドに向かう
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冒険者ギルドには人は多くなかった
多分私が朝ごはんを食べてる時がピークで依頼の争奪をしているのだと思う
楽で報酬がいいものは片っ端から消えている
私は依頼をこなしに来た訳ではないのでギルドカウンターに行く
初心者向けの迷宮を教えてもらうのだ
ギルドカウンターは遠くから見ると小さかったが近ずくとかなり高いところにあった
小さくなった体が意外と不便なことに気づきながら
カウンターの前で手を挙げ認識してもらうことに成功した
カウンターに身を乗り出してる受付の人に初心者でもいける迷宮と迷宮の中の地図を欲しいと言うと快く用意してくれた
迷宮の位置は西門を出て真っ直ぐの場所にある
名前は死者の迷宮、スケルトンとゾンビ系の敵が多く出るから死者の迷宮なんだけど
「安直すぎる」
思わず口に出てしまった
歩くこと15分、道中は整備されており草原の中を少し歩いただけなので後ろを見ると普通に門が見える
迷宮の入口には軽い検問所と売店があった
荷物の準備は終わっているので検問所に行く
ここでは身の丈に合わないような迷宮に勝手に入らせないようにする場所だ
身の丈に合わないと言ってもこの迷宮はいっちばん簡単な迷宮なのでこの受付がある意味はほぼないと言っても過言では無い
「ギルドカードを見せてもらおう」
「はい、これです」
私は言われたどうりにだす
「1人かい?」
「1人です」
「パーティは?」
「私だけです」
「死ぬなよ」
簡単な会話をしギルドカードを受け取り中に入る
受付の人は暗かったけど多分いい人だ
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迷宮の中はかなり整備されており迷宮探索と言うより散歩の気分だ
散歩と言ってもたまにスケルトンやゾンビが出るがどちらもファイヤーボールで一撃なので緊張感は出ない
奥に進みながらファイヤーボールを使い続けると
感覚的に少しファイヤーボールが打ちやすくなった気がした
久々にスキルボードを見るとファイヤーボールのスキルレベルが2に上がっており、ナイフ投げのスキルのレベルは4まで上がっていて、1人前まであと1レベルのところまで来た
収納魔法に関してはいつも使っているのでスキルレベルが3まで来ている、思ったより早い
そして称号の〈人殺し〉が〈人殺しII〉に上がっていた
これはなにかの皮肉だと思うが変わってしまったのもに文句を言うつもりは無い
そしてたぶんどこかのタイミングから頭の中でも出る音は消えたんだと思う
急に音が出る恐怖は消えたがいちいち確認をしないと自分のスキルを確認できないめんどくさいさの方がギリギリ勝っているかもしれない
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そこから更に奥に行くと急に子供の悲鳴と泣き声と男性の笑い声が聞こえてくる
私は声が響く方に走る
聞き耳スキルを駆使しながら探し続けると次の角を曲がれば見える位置まで来た
角から首を出すとたくさんの男性が笑いながら全員同じ方向を向いている
私もその方向を見ると小さい子が2人モンスターの前に立たされており武器も持ってない
モンスターはスケルトンで私なら一撃だが武器を持ってないあの子たちにとってはかなりきつい
男性たちは逃げないように体で逃げ口を塞いでおり、子供がスケルトンに怯えてるのを見ながら笑っている
小さい子は逃げようにも逃げられず泣きながら助けを求めているが男性たちは笑っているだけで助ける素振りもない
私はあの子たちを助けるために男を殺す
目標は3人、3人同時に倒すには投げナイフを2人に投げた後に1人を殺しに行くしかない
この世界は一筋縄では絶対に行かないので確実に殺しに行く
ナイフ投げのスキルは4、今なら魔力闘気なしでもかなり強めに投げ急所に当たれば補正もかかり殺せるはずだ
私はナイフを腰から取り出す、左右の敵にナイフを投げた後に魔力闘気を使い真ん中の男を殺す
本当ならナイフを投げる時も魔力闘気を使いたいがまだ長く魔力闘気を纏えないので投げた後に使う
人殺しは初めてでは無いが抵抗感と緊張で心臓がドキドキする
わたしは深い深呼吸をしてナイフを投げる準備をする
こんなことをしてる時にもあの子たちは襲われて死んでしまうかもしれない
私は自分を奮い立たせナイフを投げる
投げた瞬間に走り出し足にナイフを突き刺しひざまづいた瞬間に心臓に突き刺す
「なんだてめぇ…」
そんな言葉を言う時にはとっくに倒れていた
遅れたように左右の男がこっちを見るが投げたナイフがしっかり狙い通り首に突き刺さり左右の男も倒れる
私はしっかりとどめを刺すために心臓に刺さってるナイフを抜き左右の男の心臓にも突き刺す
この世界では甘えが自分を殺すことになるためしっかりトドメを刺してから女の子の方を見る
驚きと恐怖の顔をしている
後ろから来ているスケルトンにはファイヤーボールをぶつけて倒す
スケルトンを倒した後に少女に近づく私も十分小さいがこの子達は私より20cmぐらい小さい
「どこから来たの?」
優しく聞いてみるが少女たちは震えて止まったままだ
その後も根気強く年齢など聞いてみるがなんにも答えてくれない
このまま放置して探索する訳にもいかないので着いてきてとだけ言ってみると背中にピッタリくっついてきたのでこのまま帰ろうと思う
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入口まで行くと受付の人が驚いた表情をしたが何も言わずにとうしてくれた
このまま冒険者ギルドまで行こうと思い道を歩く
帰り道では何も起きなかったがガタイがいい人がすれ違うたびに体を竦めて私の後ろに隠れるので多分トラウマになってると思う
冒険者ギルドに着いたら朝と同じカウンターに行った
受付の人は少し驚いた表情をしていた
この世界に時計は無いが多分思ったより早く戻ってきたので驚いたのだと思う
「この子たちが襲われていたので3人殺して助けてきました」
「よくやったわね、人助けはギルドの貢献として1番おっきいわ、少しその子たちをちょっとよく見せてくれないかしら」
私は後ろの子達を前に出すように背中を押す
そうして受付の人が首の根元を見るとまた驚いた表情をした
「ギルドカードを貸してくれる?」
慌てた様子でそう聞かれたのですぐに渡す
するとなにかの確認を初め少し待つと安堵したような表情で返してくれた
その後部屋を用意してもらいそこに通された
ギルマスはいなかったがギルドの受付の人と私、子供達の4人で受付の人が話し出した
「シオリさん、善意で救われたこの2人ですが奴隷の方たちです。
先程ギルドカードで殺人の記録を確認したのですが良かったことに殺した3人に犯罪歴があったのでシオリさんには犯罪歴は着きませんでした
その子たちの首元を確認して頂けますか」
私は焦りながら首元を見る
服で隠れているところを捲って見るとなにかタトゥーのようなものが入っている
真ん中に鍵、それを囲むように丸く鎖がデザインされているそしてその周りに小さい文字が書かれている
顔を近づけて見てみるがなんて書いてあるか読めない文字だった
「これが奴隷紋ですか…?」
「はい、それが奴隷紋です
早速ですがあなたには2通りの選択肢があります、この2人を引き取って自分の奴隷にするか、奴隷商に引き渡してお金を貰うことです」
私は隣に座ってる二人を見る
2人は助けを求めているような顔をこちらに向ける
「奴隷紋を消す方法は無いんですか?」
「無いです、死ぬまでその紋章は体に刻まれます」
「もしこの子達を売ったらどんな仕事をさせられるんですか?」
この話を切り出した時1人は泣きそうになっていた
過酷な肉体労働とかをさせられるんだろうか
「主に裁縫などの雑用ですね」
私の思っていたのと違っていたが仕事を1つでも間違える度に叩かれるのだろうか
流石に人道的な扱いはしてくれると思うがやはりイメージの中の奴隷の姿が脳裏にチラつく
私が救った命だから最後まで見どどけたいという思いもある
「どうします?」
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数分後私は、いや私たちは食堂に来ていた
私がいつもと違いテーブル席に着く
奴隷の子達も座ると思ったがすぐに地面に座り出した
「え?なんで?
席に座りなよ」
「いえ、ご主人様と同じ席に着くこと許されてません」
「ごしゅじんさまのとなりはどれいはすわっちゃだめー」
と口を揃えて言われてしまった
奴隷がここまで厳しいとは知らなかったが想像はできる、こうゆう時どうやって座らせるのか考えていると
「おじょうちゃんご注文は?」
と言われたのでとりあえずグレードウルフ定食を3つ頼む
昔最初だけ見たラノベで奴隷に座らせる命令を出してるのを思い出し私はそれを実践する
「私の隣に座りなさい、これは命令です」
と言うと2人は困惑した顔で渋々命令に従い座った
名前も聞こうと思ったのだが先に料理が来てしまった
さすが料理の提供が早い
そのまま料理をみんなで食べたが会話は弾むわけがなく、名前も聞けなかった
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ご飯を食べ終わり外に出た時には空は真っ暗になっていた
私の家に向かいながら子供たちに名前を聞く
「名前ってあるの?」
「あります、私は18484で妹は18485です」
うっわ、数字で管理されてたから名前を付けてあげたいが、私は名ずけが大がつくほどの苦手なのだ
考えながら歩いていると妹の方が上を見てぼーっとしてり何があるのかつられて見てみると綺麗な満月が出ていた
「月が好きなの?」
「あれって月って言うの〜?
私はあの光ってるのは好きだよ〜!」
月、月ってルナみたいな言い方があった気がする
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「先輩〜切り詰めすぎですよぉ〜」
「しょうがないでしょ、切り詰めないと仕事が終わらないんだから」
今一緒に呑んでるのは宮原
この子は酔ってくるとだんだん豆知識を披露しだす
この豆知識が以外に面白いので楽しんでいる
「僕って先輩について行ってるまさに月みたいな存在だから先輩がいないとなんにもできないんですよ」
「そんなことないって柔一くんもしっかりできてるよ」
「月ってルナって言うのは知ってると思うんですけどこれってラテン語なのは知ってました〜?」
豆知識の時間が始まった
毎回突拍子が無いのでどこからが豆知識なのか最初は分かりずらかったが何回か飲んでる内にわかるようになってきた
今回は惑星の名前の知識を披露してくれるらしい
「月はルナなんですけど地球はテラなんですよ〜
火星はマルスで金星はウェルスなんですよ、いつか使う時が来たら思い出してくださいね」
そんなことを知っていてもどうにもならないがこうゆう飲み会の時にちょっとした豆知識を披露できるのは特技かもしれない
が1度もこの知識が役にたったことは無い
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まさか一生使うことがないと思っていた宮原くんの豆知識を使う時が来るとは思ってもいなかった
妹の方がルナで姉がテラまさに地球と月の関係だからピッタリだ
「じゃあ君はルナでお姉ちゃんの方はテラでいい?」
「るな!私るな!」
「テラですか、いい名前です」
と言ったもののテラってなんか男性ぽいなと思ったが本人はにっこりした様子で自分の名前を何度も口に出しているし多分問題ないと思う
家に帰ってきて水浴びをした
いつか絶対にお風呂を作ろうとは思っている
浴室はあるがまだ水の通り道しか用意出来ておらずお湯も作るのに時間がかかってしまう
テラとルナは魔法が使えないのでお湯を用意しようかと思い用意したが水だけで体を洗い出てきてしまった
今度教え込もうと思う
寝室に入った瞬間にやらかした事に気づいた
ベットが一つしかないのだ
テラとルナは床で寝ると言っているがルナの顔には悲しみの色が少しある
どうしようかと思ってるとふと自分も床で寝るという判断が出てきた
日本ではベットなんか置くスペースが部屋になかったから敷布団でねていた
働き始めてから家で寝ることは少なくなったが…
私は家にあるもので布団を作る
家にある布を集めた結果セミダブルぐらいのサイズの敷布団ができた
小さいので全員寝れるか心配だったが私もテラもルナも全員身長が小さいので余裕そうだ
テラは私と寝ることと床でねる事を本気で止めてベットで寝るように言ってきたが自分で寝ると言い出し私も一緒に寝ることに成功した
私がテラに床でねる事を説得している時ルナは眠そうな目を擦りながらでずっと立っていた
多分難しい話が分からなかったのだと思う
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