心地いい心音
愛羅の髪を乾かした後、ちゃんと俺の髪も乾かしてから、俺は買った服や下着を愛羅の脱いだ服の入った袋と一緒に見ないようにしながら、自分の部屋の中に隠し、リビングへと移動した。
もちろん、愛羅には姿を隠してもらっている。
とはいえ、近くにはいる。相変わらず気配は感じられないけど、俺の腕を握ってきてるし。
「姉さん、お風呂上がったよ」
「冷めて無かった〜?」
「暖かかったよ」
「良かった〜」
そんなやり取りをしつつ、リビングのソファに座った。
そこからは特に会話は無かった。
別に仲が悪いわけじゃなく、仲が良いからこその気まずくない時間だった。
正直、俺としては久しぶりだし、いっぱい話したいことが無いわけでも無かったんだけど、8年前から大体いつもこんな感じだった記憶があるから、不自然に思われないためにもこれでいいんだ。愛羅と過ごす時間とは少しだけ違う意味で姉さんとのこんな時間は心地いい時間だからな。
……朝、明らかに8年前の俺だったら言わなかっただろうことを言ったような気もするけど、朝は仕方ない。……愛羅の存在に頭が混乱してたってのと、シンプルに帰ってこられた喜びで色々と感情のコントロールが難しかったからな。……体が若返った反動もあったんだと思う。
「私はもう寝ようと思うけど、大翔はどうする〜?」
そんなこんなで、隣に座って俺に体を預けてきている愛羅の頭を姉さんにバレないように撫でてあげたりしながら過ごしていると、直ぐに時間が経ち、姉さんがそう聞いてきた。
「ん、俺ももう寝るよ」
愛羅がずっと体を俺に預けて甘えてきていたからか、今の時期でも体が暖かくて、うとうととし始めてきていたから、ちょうどいいとばかりに俺はそう言った。
「なら、私が電気を消しておくから、大翔は先に部屋に戻っちゃいな〜」
「んー、そうするよ。ありがとう、姉さん」
姉さんの言葉に甘えることにした俺は、そんなやり取りをして、愛羅を連れながら部屋に戻った。
「ヒロト、寝るの?」
すると、直ぐに愛羅が俺にも姿が見えるようにしてくれて、小さく首を傾げながら可愛らしくそう聞いてきた。
「……あぁ、そのつもりだけど、愛羅は──」
「一緒に、寝る」
まぁ、それもお風呂の時同様何となく分かってたよ。
……そろそろ親離れをさせた方がいいのかなぁ、とか思ったりするけど、無理なんだよなぁ。
あっちの世界にいた頃なら、まだ大丈夫だったけど、こっちではなちょっとな。……ここは愛羅の全く知らない世界だし、愛羅にとってこっちの世界で頼れるやつなんて俺だけだし……うん、無理だな。
……友達を作れる場とかを作れたらいいんだがな。
「ヒロト? 寝ないの?」
「いや、寝るよ。先に入ってくれていいぞ」
「うん」
どうせベッドは一台しか無いんだ。
愛羅を床で寝かせる訳にはいかないし、かといって俺が床で寝ているところを姉さんに見られでもしたら言い訳が思いつかない。
……一応、ベッドから落ちたって言い訳が使えないこともないかもだけど……俺、残念なことに寝相はいい方だからな。
ベッドから落ちることなんて有り得ないんだよ。
まぁ、風呂はともかくとして、娘と一緒に寝ることくらいは別に普通だろうし、いいか。
……一応、愛羅は16歳ではあるんだけど……ま、まぁ、寝るだけなんだし、平気だ。
内心でそんなことを考えつつ、俺は愛羅の隣に寝転ぶようにして、ベッドに寝転んだ。
すると、その瞬間、布団の中に潜っていた愛羅が横から俺に抱きついてきた。
「ヒロトの匂い……好き……」
までなら良かったんだが、布団の中からそんな声が聞こえてきた。
……聞かなかったことにしよう。
もう眠いしな。
「愛羅、おやすみ」
「……おやすみ、ヒロト」
俺の方からも軽く愛羅を抱きしめてあげながら、そのまま眠りについた。
……愛する娘を眠る時に抱きしめることくらい普通だと思うし、愛羅の雰囲気的にもそれを求めてそうだったから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます