間章 ②
第15話 悪ノリは程々に♪
時はもどり喫茶店 solve
黒崎がリリィの『やらかし』を藤村に話す二時間程前––––
まだ大王と藤村が店に着く前の時間帯である。
店の客足が一旦落ち着き二階の部屋にて休憩に入っていた黒崎。
そこにはリーズ、京子、イステリアにアルセルシアがリリィも含めてあの惨劇を映したビデオカメラをテレビに繋げて流していた。
そこで自身の隠れた裏の姿を見て驚愕するリリィ……
というか信じられないといった様相であった。
ぷるぷると震えながら画面に指をさすリリィ。
「こ…… これが…… 私?」
「そうだよ♪」
笑顔で答えるリーズレット。
「そっ! そんなはずありません! わっ! 私がこんな…… お酒に溺れてこんなはしたない真似するわけがっ!」
「でもリリィこの時の記憶ないよね♪?」
「そっ! それはそうですけど……」
「リリィ…… これは純然たる事実なんだ♪ ぷぷっ! いや僕は君のその悪癖を以前から心配していてね。 そろそろ君にこの真実を…… くくっ♪ いやこの辛い現実に向き合ってもらう為にも知っておくべきだと思って、ここは心を鬼にして君にアルコールを飲ませたわけだよ♪ 決して面白がってやってみたわけじゃ––––」
ズガアッ!
「!!!っうわっ!」
リーズが言い終わる前に彼女の眉間に向かって銃弾を放つリリィ!
間一髪躱すリーズレット!
「~~っ! 危ないなあ! リリィ!」
「うるさい! 元はと言えば
「合成じゃないよ♪ !!っ おっと!!」
ズガア! ズガアン! ズガアン!
「何避けてるんですか! 従姉さん! さっさと撃たれて死んで下さい!」
「メチャクチャ言うねえ! 君も!」
「待て待て待て待て! 落ち着け! リリィ! なっ!」
流石にまずいと判断し後ろから羽交い絞めの形でリリィを抑える黒崎!
「離してください! シリウスさん! この人は一度痛い目みないと絶対にわからない人なんです!」
「それに関しては激しく同意するが俺の職場の二階で殺人現場を作ろうとするな!」
「嫌です! いつもいつもこの人は本当にもう! もう堪忍袋の緒が切れまし……」
ここで酔った勢いで黒崎ことシリウスに爆弾発言をしてしまった事を思い出すリリィ。
途端に顔が真っ赤になってしまい必死に黒崎に弁明する。
「シっ! シリウスさん! ちがうんですよ! あのビデオのっ! その…… シリウスさんが私の初恋の人っていうのはその……」
「そう! 子供っ! 子供の頃の話ですからっ! 決して今も引きずっているわけではないというか! そのっ!」
「わかってる! わかってるから! とりあえず銃を収めよう! なっ!」
とまあ、こういう感じのやり取りを経て今に至るわけなのであった。
「–––– ってな事があったってわけだ」
「はははは! なんですか! その超面白展開♪!」
大爆笑する藤村。
「いや笑い事じゃねえよ! マジで大変だったんだからな!」
「式の時もどいつもこいつもソッコーでバックレやがったしよ…… なあ! ユリウス!」
「! やっ! やだな~! 黒崎君たら~! 僕は決して面倒な役回りを君一人に押し付けたわけではないよ! 僕は閻魔大王として式に参加してくれた者達の安全確保をだねっ!」
「それだったらお前かエレインのどっちか一人でも十分だったよなあ…… それに明らかにあの時俺と目が合ったのにすぐ視線を反らしては俺の声も聞こえないふりしてくれてたじゃねえか……」
「そっ! そんなっ! 誤解だって~! 本当に気付かなかったんだってば! 僕が君を見捨てる訳がないじゃないか~!」
「よしエア坊! お前に任務を与える。 今後エレインにバレるとユリウスがメチャクチャ怒られる、もしくは殺されるかしそうな出来事や隠し事があったら俺に逐一報告しろ。 報酬としてその情報に見合った分のプレゼントを買ってやる」
「! ホントですか!? 既に百個位ありますけど♪ 私欲しいゲームソフトがあるんです!」
「でかした! 早速聞こうじゃないか! エア坊! 後でゲームショップ連れてってやるからな!」
「やったあ♪ え~とどれから言おうかな~ え~っと」
「いや! 娘よ! たかがゲームソフトでそんなあっさり父を売らないでくれるかな! マジでママを怒らすとパパ殺されちゃうからっ!」
「黒崎く~ん! 僕と君との仲じゃないか! 機嫌を直してよ! あっ! 肩凝ってない!? 不肖このユリウス! お揉みさせていただきますよ! あっ! そのコーヒー代も自分が出させていただこうかな! あっ! そうそう! それと黒崎君好みのカッコイイ新車が来月出る予定みたいなんだけどそれもよかったら––––」
「! 新車っ! ん~、どうすっかなあ~」
「はは♪ 大王様♪ 控えめに言ってクソダサいっすねえ♪」
「ふっ 処世術と言ってくれたまえ! 藤村君!」
「わお♪ 決め顔だけど言ってる事がかっこ悪いっすね♪ とても閻魔大王とは思えない♪」
「閻魔大王だって命は惜しいのっ!」
「おいユリウス手が止まってるぞ。 もっとしっかり揉め」
「はっ! 仰せのままに!」
「…… それでええんか。 大王はん」
「大丈夫だよ♪ 兄上。ドM属性だし♪」
「ってどんな閻魔大王やねん!」
「ってリリィはんも! ええ加減泣き止んでぇなあ」
「まあまあリリィさん。 物は考えようですよ」
「うっ ぐすっ…… え?」
ここで藤村がフォロー(?)に入る。
「悪癖があるってわかったならそれを正せばいいだけです。 一番まずいのは気付かず放置し続けている状態です。 寧ろ今まで周りが放置しすぎだったんですよ。 今回は収まってくれましたけど、もっと重大な場面でそうなってしかも周りに止めてくれる人とかいなかったらもっとまずかったですからね」
「今回の件でそれに気付けて良かった位に思った方がいいんですよ」
「藤村さん……」
「…… 確かに…… 一理あるかも……」
「それに…… ぷぷぷ! 普段のリリィさんとのギャップもこれはこれで好きと言ってくれる人も…… ぷぷ! いるかもしれないじゃないですか」
「オイこっち向けよこの野郎」
笑いを堪えながら最終的に後ろを向いてしまった藤村に怒り心頭のリリィ。
既に銃を抜いている始末であった。
「! リっ! リリィはん!? おっ! 落ち着いてえなっ! なんだかどんどんキャラが崩壊してってるで!」
「やれやれ…… 藤村さんもあまり悪ノリしないで下さいよ」
「はは! すいません。 リリィさんとも何度か面識はあったんですが普段の彼女とのギャップが大きくて…… しかもなんだか可愛いじゃないですか♪ なのでつい♪」
「だよねだよね! すっごいわかるよ~♪」
「お♪ 気が合いますね♪ リーズさん♪」
「そこ! 意気投合するな!」
こうして暫く泣いたり怒ったりと情緒不安定なリリィを窘めながらも時はまた少し進んでいくのであった––––
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