4−7 ゾンビマスターは拠点でまったり落ち着く





「いやー、まさかダンジョンマスターの力でこの超S級ゾンビダンジョンが拠点化できるようになっていたなんてねー……それにしても、これは極楽極楽……」

「ゔぁー……」

「すべてはアキト様のおっしゃる通りです」

「にゃ、この温泉は本当に極楽だにゃ。こんな素晴らしいものがある世界から来たんだから、アキトが素晴らしい人間にゃのにも納得だにゃ」

「いやアキト殿はとても鬼畜だと思うのですが、この温泉が素晴らしいものなのには同意ですっ。ゾンビの冷たい身体にも染み渡る暖かさですねっ!」


 誰が鬼畜だっ! なんてツッコミはおいておいて……僕は溜まりに溜まっていたダンジョンポイントを使って、ゾンビダンジョンを僕の思うがままに改築し始めている。


 前世ばりに整えた安眠できるベッドルームに、配下のゾンビちゃんとしっぽり遊ぶためのハーレム系プレイルーム、そしてこの不思議パワーでどっかから源泉掛け流しになっている温泉大浴場。ちょと皮膚がぬるぬるする系のぬるめの温泉は、僕が一番好きなタイプのやつだ。


 ちなみにさっき喋っていたのは、温泉につかってくたっとしているアサシンゾンビのマリー、なぜかメイド服に着替えて僕の身体を洗うべく待機しているノーブルゾンビのルーナ、片手で自分の首を持ちながら身体は温泉にしっかりと浸かっているデュラハンゾンビのナーニャ、以前よりもさらにしなやかで美しい身体に温泉の湯をかけているデイムゾンビのコーネリアちゃんだ。


 ちなみにメイド服のルーナ以外は大人の事情で水着を着ている。マリーは可愛らしいワンピース型の水着。ナーニャはどこで手に入れたのか謎なスク水っぽい水着、そしてコーネリアちゃんは自慢の腹筋を見せつけるようなビキニタイプの水着だ。


 僕はショートパンツ型の普通の水着だけど、まあそこに興味がある人はいないか。


「……それで、ルーナ……ダンジョンの外の方はどうなってる?」

「はっ、各地から集まってきたさまざまなゾンビたちを知能レベルに合わせて階層構造の街に振り分けているところですっ! 上位種であるゾンビほどダンジョン近くに小さな村レベルの集落を作りながら生活を送っております。彼女たちが何かしらの功績を上げた場合には、このダンジョン内の居住層への居住権を与える予定となっております。知能の低いファルメントゾンビやスケルトンなどは最外層で歩き回っているだけですが、我々の同族である彼女たちが安全に暮らせる環境はしっかりと整えてございますっ!」

「うんうん、それでいいと思うよ。ファルメントゾンビたちにも、もうすぐ活躍してもらわないといけないしね……流石に王都は、これまでよりも抵抗が激しいだろうし、上位ゾンビたちにもしっかりと鍛えておいてもらわないとだね」

「はっ、おっしゃるとおりですっ、アキト様っ!」


 僕たちが今いるゾンビダンジョンの周りに作ったのはゾンビタウン──人族や魔族が元となっている人型のゾンビだけでなく、動物やモンスターが元になったゾンビなんかもペットとして飼われていたりする。


 その強さもなかなかのものだし、基本的に不死だってのもあるから戦力としてはかなりのものだ。


 このダンジョンを中心としたゾンビタウンの防衛に問題がないのはもちろん、攻めに回ってもかなりいいところまでいけるんじゃないか、って感じの戦力が揃ってきているのだ。


「順調に進んでるみたいだねっ、よしルーナ、ご褒美だっ、こっちにおいで」

「はっ、あ、ありがたくっ……失礼させていただきますっ!」


 メイド服を脱いだルーナは……なぜか競泳水着のような水着を見に纏っている。全員どこからこの水着を仕入れてきたのだろうか?

 ともあれ、僕は温泉に入ってきたルーナを側の呼び寄せる。


「ほれ、遠慮することなくちこう寄るが良い……」

「ああ、お代官さまぁ、お許しくださいませぇ……」


 僕のネタ振りにしっかりと付き合ってくれるルーナ。


 その戦闘力も絶大なわけだけど、こういう機転の効くところがルーナが一番の副官として側から手放せない一番の理由となっている。


 そんなルーナを呼び寄せてそのままイチャラブしていると、ナーニャが腕に抱えた自分の生首をぐっと僕の方に近づけてくる。


「ず、ずるいにゃぁ……そ、そうだにゃっ! うちからも、報告があるにゃ! 報告したら、うちともイチャラブするのにゃっ!」

「ふふ、いいけどさ。ナーニャ……は、各地の情報かな?」

「だにゃ! 元商人のネットワークを活かして情報を集めているのにゃ!」


 デュラハンゾンビとして戦闘力の方もめちゃくちゃ強くなったナーニャ。だけど、彼女はそれだけじゃなくて、ゾンビ化した商人の知り合いと意思疎通して各地の情報を集めることができる、なんていう特殊能力にも目覚めている。


 おかげで人族の動向も魔族の動向も僕には筒抜けだったりする。魔族の方はまだそんなに動き出している様子はないようなんだけど、人族の方は着々と僕たちとの決戦に向けての準備を整えている。


 もっとも戦略という意味では、攻めまくっているのは僕たちの方なんだけどね。


「各地に忍ばせたままのゾンビたちは無理せずに少しずつゾンビを増やしているのにゃ。それから、アキトの王液をばらまいて攻略の難しかった街なんかも着々とゾンビ化が進んでいるのにゃ」


 僕の各種体液──王液と呼ばれるそれは、他のゾンビの体液に比べてかなり強力なゾンビ化の劇薬。今のゾンビたちはただ噛んだり引っ掻いたりして仲間を増やすだけでなく、水源に王液を撒いたり、王液を塗った武具を使ったりして、効率的にゾンビを増やしていっているのだ。


 そのおかげもあって僕のステータスは馬鹿みたいに増強されてきている。


 今ならあのルーナと正面から戦っても負けないくらいだ。


「うん、順調、順調……じゃ、ナーニャにもご褒美をあげないとねっ。さあ、おいで」

「んにゃぁっ、ルーナ、頼むにゃっ……」


 ナーニャは自分の生首をルーナに預けると、身体の方を僕の身体に寄せてくる。


 そして、生首を預けられたルーナがその首を僕の前に出してくるので、僕はそんなナーニャのほっぺたにちゅっとキスをする。


 そんな感じでナーニャともイチャラブしていると、残されたコーネリアちゃんも僕に近づいてくる。


「わ、私からも報告があるのですっ! アキト様はっ、この私ともイチャラブをするべきだと思うのですっ!」

「んっ、そうだね……コーネリアちゃんが良い報告をしてくれたら考えようかな……」

「ええっ……私はっ、上位ゾンビの中で優秀なのたちを鍛えあげているところですっ、新たな《スキル》なんかが開眼してるゾンビもいますし、上位のゾンビに進化を遂げているものもいますっ。人間界の普通のS級冒険者じゃ相手にならないレベルのゾンビが3桁になろうとしているのですっ!」


 デイムゾンビとなったコーネリアちゃん本人の戦闘力もかなりのもの。


 だけどそれ以上に特筆すべきなのは、彼女が戦闘訓練の指導をすることによって、その指導を受けたゾンビたちの能力が急上昇することだ。


 デイムゾンビという進化先は、他のゾンビたちの戦闘育成に特化したゾンビだったのだ。


「それは……すごいね。やっぱりコーネリアちゃんが僕たちの仲間になってくれたのはラッキーだったよね」

「で……ではっ?」

「うん……僕の一番そばで、僕とルーナとナーニャがイチャラブしてるとこ、見てていいよ」

「わ、私だけっ、み、見てるだけなのですかっ? か、悲しいのにぃ……なぜか、それが嬉しくてぇっ! ふっ、ふー、ふーっ……わ、私の前で他の女性とイチャラブしてるアキト様ぁ、こ、この放置感がたまらなくっ、いいのですぅっ!!」


 コーネリアちゃんはなぜかゾンビ化してから変な趣味に目覚めてしまったようで、直接相手をするよりもこうして放置をした方がよろこんでもらえる。


 もちろんたまには美少女騎士な見た目のコーネリアちゃんとのイチャラブも楽しんでいるけどね。


「マリー」

「ゔぁーゔぁー……」


 マリーは変わらず暗殺や情報収集などの諜報活動に精を出してくれている。


 ナーニャが集めてくれるのが市井からの大量の情報であるならば、マリーは要所に一人で潜入して少ないながらも貴重な情報を集めてくれるもの。


「そう、人間族は精鋭を王都に集結させている、か……ここを攻めるつもりじゃなくて、僕たちの攻めを警戒してるってことなんだね。マリーの調べてくれた情報だと、あそこの皇帝ってダンジョンマスターでかなり強いんだよね?」

「ゔぁー」

「ああ、人間族の数が減ったから、少し弱ってきてるのか……でも……」

「ゔぁーゔぁー」

「うん、そうだよね、戦闘経験みたいのだと、僕には分がないからね。うん、できるだけ皇帝は後回しにして、人族の勢力を削っていく方に集中するよ。そうすればするだけ、やつはもっと弱くなっていくはずだし、逆に僕は強くなっていくしね……」

「ゔぁー……ゔぁっゔぁっ!」

「え、あのベルティアナがまた何か準備してるの? 皇城の奥に誰も入れない一角があって、マリーでも侵入できなかった……か。気になりはするけど、今できることはないのかな。マリーは出来るだけそのあたりの情報を集めておいてくれる?」

「ゔぁー」


 マリーは僕に報告をしながらも、広い大浴場でぱしゃぱしゃと泳ぐように水遊びをしている。


 彼女も僕のことが好きなのは確かでイチャラブしたがることもあるんだけど、精神年齢はまだちょっと幼いところがある。


 こういう大浴場とかだと、一人で水遊びをしたくなっちゃったりするのだ。


「ふふ、いつも助かってるし、マリーへのご褒美は……」

「ゔぁー」

「ああ、後で個室で二人で、がいいのね。まあそれでいいけどさ。じゃあ、温泉から上がったら一緒に遊ぼうね」

「ゔぁーゔぁー……」


 そんなことを言いながら、お風呂から先に上がってしまうマリー。


「「「ずっ、ずるいっっ!!」」」


 僕と温泉の中でイチャラブしてるゾンビちゃんたちは、僕と二人だけの時間をしっかりと確保していったマリーの背中を羨ましそうに見送っていたのだった。



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