3−16 ゾンビ世界のお礼の仕方





「うーん……《ステータスオープン》」


***********

名前:ヒラヤマ・アキト

種族:異世界人

称号:異世界ブレイブダンジョンマスター・腐界の王

装備:封印の指輪(呪)


LV:1 (固定)

HP:481/481(+70%)

MP:729/729(+70%)

攻撃力: 519(+70%)

防御力: 436(+70%)

魔攻力: 731(+70%)

魔防力: 664(+70%)

素早さ: 432(+70%)


固有職業:

【ゾンビマスター】

固有スキル:

《オートトランスレート》

《ステータスアップ・ブレイブダンジョンマスター》(半封)

《パーシャルターンアンデッド》

《ゾンビステータスアナリシス》

《サモンゾンビ》

汎用スキル:

《ステータスオープン》

***********



「うん……やっぱりステータス横の増加%が増えてるんだよな。このステータス表示って数字の方が固定で、そこからさらに%アップが加わって実際の値が決まるってことになってるってことかな。言われてみればララ村で戦ってたとき、かなり動きが良くなってたような気がするし……きっとこの%でのステータス上昇効果があったってことなんだろうね」


 ララ村でゾンビにかこまれていたときの戦闘時の動きは、僕がダンジョンから外に出てきたばかりの時よりもだいぶ良い感じだった。


 身体が高いステータスに馴染んできたってこともあるだろうけど、それ以上にステータス自体が更に上がっているってことが感じられたのだ。


「ってことはこの%をもっと増やせるようにすれば、僕がレベル1のままでも強くなれるってことなんだろうけど……うーん、どうすればこの%が増えるのかはわかんないんだよね……今は勝手に増えてくれてるみたいだからいいけどさ」


 【ゾンビマスター】の職業なのか【腐界の王】の称号の効果なのかはわからないけれど、まあきっとゾンビに関係している何かってことではあるんだろう。


「まあ、いろいろ状況の変化を確認しながら、たまにステータスオープンを使ってみるしかないか……って、ん?」


──コンっ、コンっ


「はい、どーぞ……ナーニャ? ……じゃ、なくてカレンさんでしたか、どうしたんですか?」


 部屋に入ってきたのはこの宿屋の女将である、カレンさんだった。


「ええ、アキトくん、ちょっといいかしらー?」

「もちろんですよ、入ってください」


 宿の女将たる彼女だ……もちろん彼女が入室することに否やはない。


 僕の言葉に応えてすっと部屋に中に入ってくるカレンさん。美しい巨乳女将である彼女が入ってきただけで、落ちついた内装の部屋が一気に華やかなものになった気がする。


 なんだか大人の女性らしい甘くて落ち着いた匂いがするし、心臓がドキドキと高鳴っていく。


 カレンさんは僕の側まで来ると、すとっとベッドに腰を下ろす。


「ねー……アキトくんー……」

「はっ、はいっ……なんでございましょうかっ」


 なんか最近ベッドで女性と隣になるパターンが多くないか……と思いつつも、魅力的な女性にベッドで横から声をかけられて嬉しくない男なんていないわけで……


「お礼……言ってなかったなって思ってー……」

「へ……お、お礼……ですか?」

「うんー……アキトくんが、ヘレナのこと……助けてくれて、ありがとうねー」


 こてっと首を傾けその美顔を僕の肩に預けながら、カレンさんは甘い吐息を僕の耳元に吹きかける。


「い、いえいえー……それは、その……困ってる人を助けるのは、当然ですからー」

「そう、それは素晴らしい志ねえ……あらー、でも、アキトくん、もしかしてー……?」

「も、もしかしてっ、って、なんですかっ!? ……ぁっ!」


 なぜか僕の太ももに乗せられたカレンさんの手のひら。


 そして……ツツツー、っとカレンさんの美しい指先が、僕の太ももを撫でていく。


「うふふ、なんでもないわー、アキトくん……さて、アキトくんには、どんなお礼をあげたら、いいかしらねえ?」

「ど、どんな、お礼、でしょうかねえ……? ど、どんな、お礼でも、僕は……ごくっ…………」


 このまま妖艶すぎるカレンさんから、素晴らしすぎるお礼を受けとりまくってしまいたい。


 そんな暴走していく思考に頭を支配されかかったところで……


──コンコンッ


 僕たちの動きを止めるノックの音が室内に響く。


「えっ、まずっ、誰だろっ……ナーニャさんかなっ!?」

「えぇっ、なんでー、ナーニャちゃんは今日は遅くまで戻れない、って聞いてたのにーっ」

「えっ、そうだったんですかっ……じゃ、じゃあ、誰でしょうか?」


 僕とカレンさんは身を寄せ合い、小声でささやきあう。


 今の所はベッドで隣に座ってお話していただけではあるんだけど……なんだか、いけないことをしているのを見つかってしまったような気分。


 そして……


「……アキトさんっ、ご不在ですか?」


 扉の外から聞こえてきた声は、僕たち二人ともが知っている声だった。


「あらー……アキトくん、これは……彼女のことは迎えたほうがいいわねーっ。そうね、私はー……ちょっとそこのクローゼットの中にでも失礼するわねーっ」


 そんなことを言いながら、カレンさんがクローゼットを開き、その中へと身を滑り込ませる。


 薄っすらと真ん中が開いているから、カレンさんはしっかりとこっちを覗いているようだ。


 どうやら僕はカレンさんの監視の下に、ドアの外にいる彼女の対応に当たらなければいけない、ということのうようだ。


 まじすかー……とは思うけれど、廊下の彼女のことをあまり待たせるのも悪い。


「あっ、今いきますっ!」


 そう声をかけてから、僕は扉をひらく。


「アキトさん……」


 その場所にいたのは、僕たちが想像した通りの人……カレンさんの姪っ子でもある、ヘレナさんだった。


「ヘレナさん……」


 何かを覚悟しているっていうか、真剣な顔をしたヘレナさんが僕の顔をじっと見る。


「その……今、大丈夫ですか?」

「も、もちろんですっ……」


 それがクローゼットに隠れているカレンさんの意志でもあったようだし、ここで断るって選択肢はないだろう。


「さあ、入ってください……」


 僕は部屋の中にカレンさんの匂いが残っていないか気になりつつも、ヘレナさんを部屋へと迎える。


 僕がベッドへと腰かけると、ヘレナさんも続いてその横にぽすっと腰を落とす。


 またこの配置か……と思いつつも、女の子と、特に彼女のような美少女とベッドに隣あって座れるってのは、何度しても良いもの。


「あの……アキトさん……」

「はい……」

「私……その……」


 潤んだ瞳で僕を見上げる


「…………お礼が、したくて、伺ったんです……その、受け取って、いただけますか?」


 これって、なんてデジャブだろうか。


 つい数十分前のカレンさん、そしてちょっと前のナーニャ。


 そのまますっと目を閉じた金髪美少女は、カレンさんのような積極タイプではなく、どちらかというとナーニャみたく受け身タイプの女の子なのかもしれない。


 なんかうっすらと開いてるクローゼットの隙間から、「いけっ、いけっ!」みたいなささやき声も聞こえてくるし……きっとこれはいくっきゃないのだろう。


「ヘレナさん……嬉しいですっ……」


 僕はそれだけ告げると彼女の柔らかな肩を両手で支える。


 目をつぶったっままこちらに身体を向けてもらい、僕は彼女の美しすぎる美少女顔に顔を近づけていく。


 僕はそのままヘレナさんの唇をいただいてしまう。


──ちゅっ


 そんな軽い音が室内に響いた後で、ヘレナさんがうっすらと目を開く。


 細めた目の端に涙を浮かべながら、熱く湿った視線を送ってくるヘレナさん。


 あまりにも魅力的なその姿に暴走してしまいそうになるので……


「お、お礼は受け取りましたっ! あ、ありがとうございましたっ! 最高のキスでしたっ!」

「い、いえっ! よ、喜んでいただけたなら、嬉しいですっ!!」


 照れたように微笑むヘレナさんがめちゃくちゃ魅力的すぎて頭が暴走してしまいそうだった。


 僕はそんな彼女にぐっと頭を下げながらお礼を言うと、下半身まで暴走してしまう前にヘレナさんを部屋から送り出すことに決める。


 そのまま立ち上がってヘレナさんを送りだそうとしたのだけど……この事態はそれだけで終わることはなかった。


「駄目よ、だめだめーっ……お礼にきた女の子がキスだけで終わりだなんてっ! そんなの今時許されないわーっ!」


 なぜか、そのタイミングでクローゼットの中からカレンさんが飛び出してくる。


「カ、カレンおばさんっ!? な、なんで、そんなとこにっ!?」


 ヘレナさんの口をつく、そんな最もすぎる疑問。


 カレンさんがそこにいることを知らなければ、僕であっても同じことを口にしたことだろう。


 そして、そんなカレンさんはとんでもないことを言い出す。


「おばさんが、『本当のお礼』の仕方ってのを教えてあげるからっ! ヘレナはまずはそこで見ていらっしゃいっ!」


 そんな彼女の言葉には嘘はなく……僕はカレンさんに『本当のお礼』というものをこれでもかと叩き込まれてしまう。


 そして、その後にヘレンさんからの『本当のお礼』……そして、とうとう最後には美人叔母・姪が二人協力する究極の『本当のお礼』まで受け取ってしまったのだった。




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