第3話 魔獣との戦い
会議室で重要な話が終わった後は、色々とこの世界についてのお勉強会という名の雑談をしていた。
テオ君もユジンさんもとても親切で、元の世界にすぐに帰れないという事実さえなければ、紅茶もお菓子も美味しいし、いつまでもここにいてもよいと思えた。
今後のことについて、思索しつつお茶をごちそうになっていると、突然、バンッと扉が開き私は1センチほど飛び上がる。
「急報です。森に魔獣が現れました!」
伝令の騎士の声に、さっと二人の表情に緊張が走る。
「では、聖女様は勇者様の魔獣討伐隊に同行して下さい」
(はひ? いきなり
*
私はテオ君の馬に乗せられて魔獣が出たという街外れの森へ到着した。
魔獣……。
象よりも大きい動物は見たことのない私には、それよりも2倍から3倍は大きいように見えた。
その魔獣は、家一軒くらいの大きさがある猪だった。
「後のこと、よろしくお願いします」
とテオ君は騎士団長に声をかけるや否や、魔獣へ向かい駆け出した。
走りながら抜き放ったのは幅のある大剣。
刃は銀色に光り輝いて、鏡のように磨かれている。
なにか文字のような模様が刻まれとても美しい。
どう考えても重厚な剣をテオ君はこともなげに正面に構えて、鼻息の荒い魔獣の前に立つ。
私だったら、震えあがり身動きできないだろう。
離れて見ていても、魔獣から獣臭い匂いが漂って来て身が縮む。
すると、ずっと私が目で追っていたはずのテオ君が軽い跳躍とともに視界から消えた。
ハッとして見回すとテオ君がマンションの3階くらいまで跳躍していた。
それだけではない。その中空で素早く身をひねり回転する。
それは、さながら剣を携えた風車のように見えた。
私は驚きで目を大きくする。私には、あまりの速さに何回まわったのかさえわからない。
ただ、キラキラッと剣が眩しく光ったように見えた直後、テオ君が魔物の頭めがけて落ちて来た。
私は息を飲む。
自然落下ではない、勢いがある。
(あんなの地面に落ちたら、死んじゃうじゃない!?)
ハラハラして胃が痛いよぉ。
私は両手をぎゅっと握りしめる。
(テオ君! がんばって!)
まるで、弾丸のようにテオ君の勇者の剣が魔物の脳を捕らえて突き通した。
重い斬撃で地が揺れた気がした。
私の心配をよそに、テオくんはまったくもって大丈夫そうだった。
魔物がどうと倒れた。
魔物に深々と刺さる大剣を抜くと、すぐさま魔物から飛び降り数十メートル距離を取る。
その直後、テオ君が片膝をつき苦しそうに肩で息をしはじめた。
(さっきまで平気そうだったのにどうして……?)
すかさず騎士団長がテオ君を抱えてこちらへ連れて来る。
ユジンさんの治療を受けさせるためだ。
テオ君は木陰で樹に背を預けてぐったりしている。
少し顔が赤い。首元に発疹が見えた。
肩で息をしていて苦しそうだ。
(医者じゃないから何もわからないよぉ)
でも何かが私の記憶に引っ掛かった。
不思議とこのテオ君の体調に、既視感があった。
苦しそうな様子が病気がちだった弟のユウちゃんと重なり、私は胸がぎゅっと締め付けられる。
ユジンさんは、腰ベルトに下げているに小物入れからキラッとする小瓶を取り出しテオ君に飲ませた。
聖水を口にすると、テオ君の症状は一時的におさまった。
(良かった~。でもこれってホントに呪いなの?
病気じゃなくて?)
医療知識のない私がここに、聖女として呼ばれたことに理由があるならば、この症状は呪いではなく、私の知っていることなのかも知れない。
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