2.「僕とメイドさん。」豆ははこさん

タイトル:僕とメイドさん。

キャッチコピー:わたしは、あなたのモノ。

作者:豆ははこさん

URL:https://kakuyomu.jp/works/16818093089549953632

評価:★3

味のご希望:甘口から中辛

あらすじ:国の庇護のもと研究開発を続ける天才少年とメイドさんとの絆のお話。


初めに、当自主企画に参加してくださったことに感謝申し上げます。

豆ははこさんが最初に自主企画参加をお申し出くださったこともしっかり覚えておりますので、本当に感謝の念に堪えません。

が、ここではそのことは加味せず講評を書いていきます。


[甘口]

おねショタ度は高めです。

天才少年とお世話をするスーパー何でもできちゃうメイドさんという組み合わせは、非常に貴重で良いものですね。

天才少年が主人公なので、ショタおねといってもいいかもしれません。

甘えられる存在であるなのさんがおいしいホット豆乳を出してくれるところも、とても好きです。


タイトルにもエピソードタイトルにも本文にも、あまり難しい言葉は使われていません。

ちょっと難しそうな漢字にはきちんとルビが振られています。

会話文が少々多めで、改行も多い。

読みやすいタイプの文体ですね。

始まりは日常的な会話でゆるりと。

読み進めていくうちに、お話にメリハリが生じてきます。


【ここから先ネタバレあります! ご注意を!】






ゆるく読めるお話、と思いきや、お話の舞台は戦争中の国。

きな臭く不穏な空気の中、主人公の天才少年である博士は、メイドのなのさんとともに生きていこうとします。

その生き方が良いですね。

作品内で描写されている事物が過不足なく機能しているため、ストーリー運びについても全く問題ないと私は思います。


前半は博士となのさんの生活風景や会話で進むため、ほんわかとした雰囲気が漂っています。

しかし博士が研究を進めていく過程で、「亡命したい」というセリフが出てきます。


戦場には爆弾ではなく、花を。

博士には女の子の服を。

なのさんは、男性に見える合成皮膚と男性用の服を。

そして、背に銃を持つ兵士が差し出すのは、甘い味であろうチョコレートバー。

この対比がすごく好きです。

国内の混乱を暗喩しているのかな、とも思いました。

恋を成就させるだけでなく、ともに生きることに彼らが注力している様が美しい。

最終的な彼らの目的は「生きていくこと」。

信頼関係があるからこそのシンプルな目的が素敵ですね。

未来を感じさせるラストは圧巻です。


私が一番胸を締め付けられたのはなぜか、空港で博士が兵士にチョコレートバーをもらう場面でした。


> 怖かったろう、すまなかったね。こんなものしかなくて、ごめんな。

> 未開封の携帯食料のチョコレートバーを差し出してから、兵士たちは遠くに行った。


ただのモブキャラとして出てきた兵士にも心がある、そう思えたからかもしれません。

たぶん私自身がこういうのに弱いです。

登場人物はNPC(ゲーム用語でNon Player Character=コンピュータプログラムで制御されたキャラクターのこと)ではない。

ただの私の持論なんですけどね。

誰にでも生活があって、考えていることがあって、希望もあって、嫌なことだってある。誰にでも。

だからこそ、兵士の言葉がしみました。

みんな生きているんです。

銃を背負っている兵士だって、家の前で見張りをしていた兵士たちだって、みんな。

なお、この件については私が書いた応援コメントでも触れていて、いただいたご返信で作者の豆ははこさんからしっかりしたお話を伺うことができています。

やはり、NPCなどではなく生きている人間として描かれていたのだと、そこでもまた胸がぎゅーっとなりました。

もしよろしければそちらもご覧くださいませ。


[ちょっとだけ中辛]

というようにとても良いお話なのですが、一点だけ、こうしたほうがいいかもと思ったことがあります。

人称変更されている点です。

冒頭から「なのさんは、分かってはくれないのだ。」までは博士の一人称なんですよね。

そして次の文からラストまでは三人称。

余裕でアリだと思います。

豆ははこさんくらいのベテランさんになると、作中に人称変更があってもストーリーへの影響はそれほどない。

「読みづらくなったなぁ」とそこでページを閉じる読み手もいないでしょう。

ただ、私には少し違和感がありました。

本当に少しだったのですが、初読時に違和感を覚え、二回目でその部分を繰り返し読みました。

そして「ああ、人称が変わってるのか」と認識するということをね、まあ私の頭のせいなんですが(笑)、やってしまいまして。

なので、「なのさんは、分かってはくれないのだ。」までは一ページ目、次の文からは二ページ目というように、ページを分けたほうがスムーズにお話に没頭できたかもしれないなという、ちょっとしたもったいなさを感じます。

それだけです。

他にはありません。


[総評]

天才少年とメイドさん、たまらんですよね。

しかも豆ははこさんの作品という安心感よ。


いやぁ、良いおねショタ(ショタおね)でございました。

大変おいしゅうございました。

ありがとうございました。

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