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久良さんと話して気付けば夕食の時間。
わたしたちが食堂に向かうと、なんとそこでは驚きの光景が広がっていた。
食堂には大きなテーブルが置かれ夕食はビュッフェ形式となっていたのだ。お寿司やサンドイッチ、ローストビーフにシーザーサラダに冷製パスタと、極め付けにはチーズフォンデュ鍋まであるという徹底ぶり。こんなにもすごい数の料理、いったいいつ用意したの?
わたしは食事をする研司さんと同じテーブルにいる千花さんに訊いた。
「これ、全部千花さんと美和さんだけで作ったんですか?」
すると千花さんはにっこりと笑って、
「いえ、これらはすべて美和さんが一人で作ったんですよ」
「嘘ぉっ!? こんなにあるのに全部美和さんが一人で!?」
千花さんが頷く。
「ええ。美和さんって手際がとてもいいんです。あと、デザートにはチーズケーキとゼリーも用意しているそうです。あ、ちなみにチーズフォンデュは皆様においしい状態で食べて欲しいと、あえてセルフサービスにしているんですって」
わたしは今一度用意された料理を見た。これだけの料理があるのにデザートまで作ったって……。美和さんって本当に何でもできる人なのね。研司さんが執事にしているのも納得だわ。
浴衣の袖を引っ張り無邪気な笑みを浮かべる菘。
「ふふ、セルフサービスなら気兼ねなく結衣お姉さまにお願いできますわね」
「……」
この子、セルフの意味を知らないのかしら?
雉間が言う。
「あー、でも、どうしてこれだけの料理を美和さん一人だけに作らせたの?」
「はい。いつもなら料理は私と美和さんの二人で準備をするのですが、今日は私、研司様の仕事部屋で書類をまとめるお手伝いをしていたもので」
それを聞いて、同じテーブルにいた研司さんが「とても助かりました」と言った。
「へえ。あ、ところで美和さんは今どこに?」
「美和さんでしたら調理服を着替えてくると、先ほど二階の自室に……」
そのときだった。
「た、大変です、研司様!」
慌てた様子の美和さんが食堂に飛び込んで来た。
美和さんは食堂に入るなり、似つかわしくないほどの声量で叫んだ。
「ぞ、『象の黄金像』がなくなっています!」
「なんだって!」
「は、早く二階に来てください!」
息も絶え絶えの美和さんに言われて、わたしたちは二一二号室へ走った。
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