Chapter 4-3
5回目のテストも4回目と同じような宙域で行う。
片道2か月、人工惑星作製1年、テラフォーミング作業10年となる。
今回は長いと思いながらも、途中、コールドスリープを行うので一瞬となるだろうか。
人工太陽は思ったよりも大きいため、3隻で牽引することになった。
牽引する宇宙船はワープは使えないが、通常の速度から亜高速付近で運行して人工惑星の冷却前には到着する予定となっている。
人工太陽は本番用にも使用する予定としている。
物が大きい上、早々に用意が出来ない、とマリアから聞かされている。
牽引用宇宙船にもAIは搭載されている物の、リン達みたいなものではなく、オートメーションに特化した物となってる。
リン達が強強AIと呼ばれる人型を模倣するAIに対し、複数作業を淡々とこなす弱弱AIとなる。
艦橋の艦長席で1人でホットドリンクを飲みながら、今回のテスト航海を振り返っていた。
艦長席は、私の形に変形していっている気もしている。
いつもここで何かしているとラビが来ていたが、今日はまだ見ていない。
代わりにリンが後ろから首に抱き付いてきた。
「リナママ、考え事?」
抱き付かれた拍子にホットドリンクをこぼしそうになったが何とか耐え、リンの方を見た。
「ちょっとねー。今回のテストも上手くいくかなって思ってね」
「大丈夫よ。私が全部やるからね」
私達がコールドスリープをしている間、リン達AIが全てを行う事になっている。
「そうね、よろしくねリン」
「うん、わかってる」
あまり元気が無いように見えた。
「1人でやるのに不安?」と聞いた。
「不安と言うより、お喋るする人が居ないからきっと寂しいのかなって思って」
10年は1人で観察する事になる。人間だと発狂物だろうが、AIもその辺りの感情を人間みたいに既にできているみたいで、私はちょっとだけ感激していた。
「そう、よね。寂しいわよね。あ、そうだ。工程日数の半分…つまり5年したら起こしてくれない?」
「……なんで?」
「途中経過を見たいからよ。私と、序でにラビもね。あいつ、一応副リーダーだしね」
リンは腕組して少し考えた後、聞いてきた。
「うん、いいよ。でも、ラビスケも本当に必要なの?」
リンは微妙ににやけている顔でこちらを見てくるが、笑顔で「勿論よ」と返した。
リンはきょとんとし、「了解」と言って、くるっと一回転した。
「あ、後ね、それとこれもできる?」
私は出来るかどうかはやってみないとわからないが、リンにある事を相談し、ちょっと検証してみるという事になった。
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目的宙域で人工内核コアの作製が始まる。
艦橋に全員を集め、これからの事を話した。
予定通り、人工内核コアを起動したのを見届けてから11年、コールドスリープを行う事になる、と。
冷却完了までは起きていても良いかもしれないが、全ての作業をリン達にまかせるため、私達は本番に合わせて眠る事とする。
「後は、ちょっとリンに検証して貰ったことが有ってね。リン、説明をお願いね」
元気よく返事をして私の横にリンが立った。
検証した内容を説明し始めた。
検証内容は、コールドスリープ時に意識だけAR空間に移動するものとなる。
通常の生活でも脳の状態を読み取る事で、AR空間に移動し、アバターを動かして色々とできるらしい。
らしいって、リンが調べているときに初めて知った機能となるためだ。
コールドスリープは、言わば一時停止状態となる。
そんな状態でも出来るのかと聞かれると、完全にコールドスリープに入る前に脳の状態の観測データをリンのPCに保存し、それをAR空間で個人に展開すれば行けるという事になる。
疑似記憶データでの検証では問題が無かったそうだ。
コールドスリープから戻るときは、逆に脳に情報を流し込んでやればいいだけみたいだ。
ただ、脳の容量は大きく、リンのPCだと2人が限度になるので、ルージュとブルーに1人ずつ割り当てる事になる。
これを聞いた皆は驚き、本当にそんなことが出来るのかと言ったが、説明でもしたように疑似記憶データでは可能と示している。
まずは私が今から試し、問題が無いなら皆も続けてやって欲しいとお願いした。
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私がコールドスリープに入り、目を覚ますとAR空間内に居た。
今のところ私だけとなっている。
全身スキャンしているAR空間内の私は良い感じで体を動かせる。
少し待っているとラビが入って来た。
ラビは少しビビっていたそうだが、入ってみるとかなり楽しそうにしている。
他の2人はどうなのかと聞くと、ルージュとブルーに移動してからなのでまだ時間が掛かるそうだ。
前のテストの時は、それぞれの艦でリンのAR空間へ接続は不可能だったが、マリアが調整して使えるようになっているらしい。
1光年ぐらいはいけるんじゃないかとか言っていたが、それ以外にも色々と改修や取り付けしているみたいだ。
リンは全てを把握しているだろうが、他に何が有るのかは、これからのお楽しみと言う所だろうか。
2人が来るまでAR空間内で映像を表示する。
リンが見ているデータをそのまま表示する事が出来るようになっており、人工惑星の観測をここからでも行えるみたいだ。
「思っているよりも、便利ねこれ」
私がラビに問いかけるが、無表情のまま返事が無い。
「えっと、何か怒ってるのラビ?」
目を閉じて片手で頭をかく仕草をし終え、口を開いた。
「そりゃそうだろ!疑似記憶データで検証はしているとはいえ、いきなりやるやつがあるか!」
「え?心配してくれてるの」
「そりゃそうだろ!だって俺はお前が……おま、えg」
言い終わる前にキャサリンとイリヤがAR空間に現れた。
ラビは反射で私から距離を取った。
キャサリンとイリヤは、ラビをからかう事もなく、リンが来てから私を含めて雑談を始めた。
遠巻きにラビがこちらを見ているが、片手でごめんのジェスチャーをしておいた。
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コールドスリープ装置から私とラビが目覚めた。
5年半ぶりの体である。
リンには5年と言ったが半分とも言っており、どっちだと確認されたが、5年半に起こすと情報を更新した。
AR空間内は観測もおしゃべりも、楽しい事はあったが少し実感が足りないのが残念だろうか。
コールドスリープから起きる時、AR空間内での記憶を書き戻す。
書き戻す時の影響か、ちょっとだけ頭痛がする。
AR空間内で見ていた人工惑星は、5年半の間――正確には4年半になるが――成長促進装置のおかげで、良い具合に緑が広がっていた。
大気や水分も、地球に近いじょうたいになっており、申し分が無い様に伺える。
微生物や小さい生物も文字通り爆誕しているようで、残りの期間でどうなるか楽しみとなる。
艦橋に移動し、ラビと合流した。
艦橋の窓から実物を目視する。
確かに、AR空間から見ていた物と同じとなっており、感激した。
「やったなーリーダー」
「そうね、今のところいけそうね」
窓から人工惑星を眺めるラビの顔を見ながら私は意を決した。
前回、2人きりよと言って名前で呼ばせようとしたことがあったが、じれったいので私から仕掛ける事にした。
「……今、2人きりよ」
少し緊張した顔でラビを見て言った。
ラビはこっちを向き何のことという顔をしている。
「えっと……ラビ、じゃなかった。ポール」
名前を呼ばれたラビはきょとんとしていたが、直ぐに何かを察したのか、ラビも少し緊張した面持ちになっていた。
「な、なんだよ、えっと……リナ」
「やっと名前で呼んだわね」
「いやまぁ、仕方がねーじゃん!2人になる時なんてなかった……厳密にはあったけど!!ないようなもんじゃん?!」
「はっ!いつまでも緊張して言えないからよ。お子様じゃないでしょうー?」
「なにぃっ?!」
それから少し口喧嘩をしたが、ちょっとだけ無音になった後、お互いに笑いあった。
ポールが片膝を地面につき、私の手を取った。
「俺とずっと一緒に居てくれ」
それに対して私は笑顔で「はい!」と答えたものの「もっといい言葉があったのではないか」と言った。
ポールは立ち上がりながら「いや、それもそうなんだけど、色々と考えてたら結局シンプルなのになっちゃってな」と言うことになったみたいだ。
ポールは私の両手を握りながらそのままの流れで顔を近づけてこようとした所で、リンが間に入って止めに来た。
「リナママもラビスケも、今日はここまでねーっと」
突然現れたリンに驚き、手を放してお互いに後ろに距離を取った。
「リン!」
私は怒ろうとしたが、リンは私に近づき耳打ちしてくる。
「艦橋に入って来た所から録画しているけど、あの2人にも見せておく?」
私は思い出した。
リンは艦内の映像を録画できるんだったという事を。
私はワナワナしていた。
ポールは「え?録画ってなに?」とリンに聞いているが「教えなーい」とだけ言われ、私に聞いてくるが私も答えることが出来ず、この日はこれで終わった。
私達はまたすぐにコールドスリープに入るのは体に良くないだろうからと1か月間はそのままで生活をした。
この間に、キャサリンやイリヤにどうなったか聞かれたが――流石に工程の半分で2人が起きるのは怪しいからとカマを掛けられ、まんまと引っかかった――ぼちぼちやるとだけ答えた。
実際、コールドスリープを行うまでは私達の仲は一気に進むことは無く、リンに目を瞑って貰いながら、程よく進んでいる。
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この1か月の間、単に人工惑星の観測だけをしていたわけではない。
出航直前にマリアからデータを渡されていた。
内容を聞いていたのだが、見る気が起きていなかったため、先にコールドスリープに入ってしまっていた。
「ん?なんだよそのデータ」
作業室のモニターにデータを表示し、私1人で見るのはきつい物が有るのでポールにも一緒に見てもらう事にした。
「これね……かなり言いにくいんだけど、ルイ・ペレーとフレッドの調書よ」
「ほーん。あの2人の、って、フレッドは判るけどペレーは死んでんだろ?」
「ええ。そう。あの時火星で死んだわよ。でもその時のじゃなく、連合組織発足前の物ね」
「それって、かなり昔って事だよな……」
ペレーの分は多いため、フレッドから確認する。
内容は、病室で私達に話したものとなっている。
それ以外の追加事項は、特にないみたいだ。
フレッドとペレーの間柄は、ペレーが言った通り義弟となる。
それ以外の事は無いと書かれている。
次にペレーの分だが、かなり黒く塗りつぶされている。
判断が付くところだけを上げると、反組織運動に研究者として加担していたと書かれている。
何処の国になるかまでは書かれていないが、かなり大規模な所に居たとなっている。
ただし、連合組織が発足される際に反組織運動の母体は解散。
連合組織側にも何らかの恨みがあるのかどうかは判らないが、テラフォーミングのリーダーを務める裏で反組織運動を再編し、操っていたようだ。
ただし、連合組織側はあえて泳がせ、反組織運動のメンバー全員を火星に送った。
そして、仲たがいさせ、暴動等を起こし、私達が見た結末となった。
なお、ペレーの奥さんでありフレッドの姉は、全てを知らないし、連合組織としては伝える事は無い。
テラフォーミング自体、片道切符の旅と計画時に設定されており、火星側から地球に残った親族等へ連絡する事はできないためとなる。
最後まで読み終わった私とポールは、何も言えないでいた。
ペレーは最後に罰と言っていたがこういうことだったのだろう。
お互いに何もしゃべる事は無く、データを閉じ、ポールの肩にしばらく頭を預けた。
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再度コールドスリープを行っても大丈夫となり、さっそく眠りに付く。
そして、目覚めたら、途中で起きていたが合計11年の歳月が立ち、全員コールドスリープから目覚めた。
私とポールが途中で起きた時よりも人工惑星は安定している。
しかし、大気保護バリアはまだまだ必要な状態であった。
大気保護バリアを停止すると、人工太陽が有る状態のため直ぐに凍り付く事は無いが、徐々に地峡温度が下がってきている。
人工太陽を停止すると、急速に地表温度が下がり、凍り付き始めているがそれでも進行が遅い様だ。
10年程度の歳月では、機械仕掛けからは脱出できない様だ。
人工太陽は簡易点検をし、本番でそのまま使用してもよさそうだ。
宇宙船に牽引し、人工惑星のえいせいとしてそのまま周回をさせておく事にした。
次回、本番時に回収する予定だ。
今回の帰りは連続ワープを行う事により、早く到着する事になった。
途中、火星の状態を見たいと言った私のために、寄り道をしてもらった。
が、火星は前と変わってはいなかった。
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月基地へ到着すると、アドヴェンと強制冷却装置搭載戦艦は入念なチェックを行う事になった。
今までは1年半でも機械としては長いが、10年以上となる機関はどれだけの負担が掛かっているか判らないからと言うためとなる。
全ての艦に、自己修復・自己進化・自己増殖を適用してはいるが、それもどこまで対応できるかも不明となっているためとなる。
月基地メンバーは、ちょっとだけ更けている様に見える。
と、いうよりもテスト航海メンバーがコールドスリープを行っていたので時間差が生まれてしまったわけだ。
一種のタイムスリップだろうか…。
見た目は変わっても、私達は気にすることなく今まで通り接している。
月基地メンバーは、3組のファミリーが出来ているが、それぞれに1人ずつ子供が出来ていた。
一番上が9歳、次いで7歳、6歳となっている。
全員男の子で、それぞれの親に似ている。
ブリーフィングルームで5回目の成果を発表した。
今回は少し役職が上の連合組織の方々の人も参加していた。
成果としては10年ではあるが、人工惑星として問題なく作れているという事を伝えた。
連合組織の方々は小声で何かを話し合い「次が本番でいけるのか」と確認をしてきた。
月基地メンバーに目線を送るとサムアップしており、問題なく行えると回答した。
もっとも、元から次が本番の予定にしている。
連合組織側からの合意も得られたので、確定となった。
連合組織の方々が退出し、私達だけでブリーフィングを行う事にした。
「元から次が本番にする予定にしていたけど、連合組織の人達は何で確認してきたんだろう?」
マリアの方を向き、聞いてみた。
「ああ。簡単な話さ、人工内核コアの製造コストがバカ高いからさ。それに戦艦もだな」
「ああ……なるほど。コストに見合ってるかどうかの確認だったわけね」
「そういうこと」
人工内核コア、戦艦の製造コストは詳しくは判らないが、億単位で掛かっているとは聞いている。
連合組織もそんなにかかる物にはホイホイと出せないのだろう。
11年前も、地球の私達の施設を売却していたぐらいだ、今も厳しい状況と言う所だろうか。
そのため、続行か中止を判断しなくてはならないのだが、今回のデータで問題が無いため、続行となったということになる。
「この後はどう進めるんだ?」
マリアから私に聞いてきた。
人工惑星自体は大気保護バリアを使いつつ、時間が立てば住めるようになるだろう。
10年でもいいだろうが、安全かは判らないので、早くて100年としている。
入植希望者の移動をどうするかとなるが、100年後どうなっているかは想像できない。
そのため、10年後に移民船を飛ばしたいと考えていると伝えた。
こっちに到着しても、直ぐに人工惑星に降りれないだろうから、コールドスリープをして100年近く眠ってもらうつもりだ。
私の考えで問題ないかとマリアに聞くと、連合組織にも確認する手はずとなる。
さっき出て行った人が残っていれば良かったのではと思ったが、担当が別になるらしい。
次にアドヴェン達だ。
マリアから、それぞれを確認していたが、自己修復があるためか、エンジンやそれ以外も問題無かったみたいだ。
100年となるとどうなるかは判らないが、大丈夫だろうと言う見立てだ。
PCの容量が大幅に使用されている形跡があったため、何をしたか確認された。
私は行っていた事――コールドスリープ中の意識をAR空間に移動させる――を説明すると、そんなことも出来るようになったのかと感心された。
11年立っているとPC環境もアップデートされているらしく、各艦の改修項目として挙がった。
アドヴェンには他に、サブユニットの空いている所に生命維持装置等の医療道具も搭載する事になった。
今度こそ、超長距離の旅になるためだ。
ブリーフィングはこれで終わった。
解散となったが、私は何となくでマリア達月基地メンバーはどうするかと聞くと、このままここに残るとの事であった。
そんな感じはしていたが。
出発前にはみんなで送別会をしようと提案すると、皆これに賛成した。
マリアは周りを確認し、小声で聞いてきた。
「で?ラビとはどうなったの?」
その問いにどう答えたものかと考えていたら、ポールが近づいてきた。
「何の話?」
能天気に何も考えずに話しかけてきた。
マリアはポールにも同じ質問をした。
「あんたらどうなったの?」
「え?そりゃ……」
ポールは私の腰に手を回し、自分の方へと寄せた。
「めでたくこういうことだぜ!!」
ラビの大きな声で周りの皆がこちらを向いていた。
マリアからは祝福の言葉と拍手を送られ、周りもそれにつられて拍手をした。
艦の改修が必要になり、その間に2人の結婚式でもするかと言われたが、全員そう言う事はしていないため、マリアの案はお流れになる。
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各艦の改修は2か月を要した。
外装や内装の交換だけではなく、エンジンも最新式へと換装したためとなる。
2か月間は最後のシミュレーションを詰めていき、ちょっとだけ精度を上げれそうであることが判った。
観測チームからは銀河系の渦に乗るように端っこの辺りの位置を決めてもらう作業を行い、作製宙域は決定した。
予定通り、前日に送別会となった。
地球に居る時の壮行会のように全員飲み過ぎに注意だ、とポールは言っているが、皆良い年なので程ほどという物を覚えている。
ポールも流石に、昔みたいに皆に注ぎに行くことはしなかった。
マリア達からは、明日でお別れとなるが「会うとしたら私達の孫かひ孫とだな」と冗談めかしく言ってはいるが、涙を浮かべていた。
私もつられて泣くことは無かったがハグをし、お互いの検討を祈り、称えあった。
ポールだけは、皆にサヨナラは言わないぜと、格好つける様に言ってはいるが、その目にある涙は皆見過ごさないでいた。
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月基地を出発して半月、人工太陽牽引用戦艦を拾いに来た。
人工惑星は緑色ではあるのだが、その表面は凍りついているように見えた。
やはり、大気保護バリアが無いとダメらしい。
人工太陽を再度検査し、再利用に問題が無い事を確認した。
戦艦のAIに次の目的地を伝え、私達は先に向かった。
目的の宙域に着いた。周りには何もない。
一番近くても、人工惑星に影響は出そうにないため、もってこいの場所である。
艦橋の窓から外を見ている。
艦橋には全員揃っており、私が開始の言葉を言うのを待っている。
コールドスリープで寝ている時間もあったが、ここまでの期間、あっという間だった。
と言っても、本番もかなりの時間を要すが、コールドスリープで眠る間は一瞬で過ぎていく。
いわば、時間のワープという所だろうか。
私は皆の方に向き直った。
「これから、人工惑星最後の作製を開始します……」
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