→10_step!?_ZERO∞「±特異点:あらゆる正負、また無限の始まり」

 ──(ahoy!_help_ME☻)


 また声がした。

 その瞬間、周りの空間が少し歪む。

 さらにシドの脳内に狂いそうになる情報量が、前回の様に流れて来た。




『±0-1=-1』



 カチッ、カチッ──と時計の秒針が動く音がする。



『アホイ!大好きだよ!ベル!……』と少年の声。





 ──いつか見たラトとシドの悪夢ケンカは現実となる。





『ああ……! ワタシも、大好きさ!愛しているよウォーカー!!……』と女性の声。



『必ず、私が、貴方を……』と少女の声。





『IF_World_Shift_世界線No.-1』





『──幸せに……』


 ---


 Loading……


 Loading……


 ---


 カチッ、──世界線変更ワールドシフト。特異点の発生。世界はまた、新たにされた。


 ※スキル『セイバーロード』のセーブデータが変更されました。


 Loading……



 IFインフィニティフィクション『もしもあのとき、ベルが



 た

 す

 け

 て

 ベ

 ル


 頭痛が起こるほどの情報量に、脳が処理しきれない。だが、自然と全ての意味が分かる。


『ぁぅ、くる、ぅ……!!』



 ……──観測した。



「はッ!?」



 シドの正気が戻る。

 驚いて周りを見渡しても、目の前のベルが変わらず微笑んでいるだけで、これといった変化は見当たらない。

 だがしかし、先程とは何かが少し違った。

 それはシドの脳内に存在した、『事実では無い事実』。



「な、なんで、………………、え?、今……僕、なんて言った……?」



 不意にシドの口から出た

 しかし……何かが。そんな強烈なを感じざるを得ない。



「え、だって、ベルは生きて…… (ahoy!_☻)───え、ベルって……、んだっけ?」



 シドは混乱する。『ベルは生きている筈なのに』という当たり前の事を脳内が処……──死者は生き返らない。そんな世界の絶対の理を無視して何故、vs.J.J戦あの時死亡したはずのベルがここに存在しているのか?


 その疑問は再びベルに会えた感動と喜びと共に、シドの心に同居していた。



「ああ、シド……頑張ったね、さあおいで……愛しいシド」



 ベル?は腕を広げ、シドを迎え入れる準備をする。一方でシドは戸惑いつつも、ベルの胸元へ向かう。

 そしてシドは抱き締められ、ベルの温かい体温と胸の柔らかい感触、さらにアロマキャンドルの様な、いつものベルの匂いを体感する。


 一拍おいて、シドの顔に水滴が垂れた。顔を上げると、ベルは涙を流していた。



「本当に、ベル……なんだよね?」

「ああ、そうだよ……しかし、死んだはずの人間が生き返っているんだ。その反応も無理はない。だが詳しい話は後でしようじゃないか、シド。今、私は……キミを感じて居たいんだ……」



 ベルはそれから1分間程ハグをし続けた後、シドを持ち上げおんぶして空間の奥へと歩き出す。

 その空間は照明がない。しかしどこか薄暗い。そしてその正体とは、ケーブルやコードなどが血管の様に光を運び、ベルの進む方向へ向かって伸びていた。


 何となく、それがシドの不安を煽る。

『この先には何があるのか……?』と。

 ただ、ただ不安だった。



「……ねぇベル!ここはどこなの?」

「ここは、NOAHの地下、『5層』。現在は国連がお気に入りの、そして"私たち"の極秘実験場なつかしいおもいでのばしょだ」



 これが、サラ先生が言っていた『NOAHの闇』に関係があるのだろうか?

 そんなことを考えている内に、巨大で見るからに厚くセキュリティが厳重そうな扉の前に着いている事に気づく。



『──キーを挿入し、生体認証後、パスワードを入力して下さい』


 ベルは突然現れたホログラムのキーボードを素早くスムーズにタップした。


『……生体認証を確認。ロックを解除します』



 ベル?はスムーズにタスクをクリアし、再度2回ほど同じ調子でセキュリティを突破する。



「──さて、着いたよシド」



 そう言われシドが見た光景は、オイルの油膜の様な虹色が混ざり、光る漆黒で満たされた巨大な機械装置の柱およそ10m程あるビーカー。そのビーカーの中心のガラスは何故かドロリと液状化しており、薄らとが見える。

 そして柱の両隣にはガラスが割れた痕跡のある空洞の培養カプセルが何本もあった。


 シドは特に気になったガラスなのに液状化している部分を見つめ、薄らと見える謎の白い人影をさらに凝視する。



「あ……え?……僕?」



 見えた。それは何かに呼応するように突然、ハッキリと見えた。その人影の姿はシドにかなり似ており、髪はありえない程に伸び、シドのツノの形と同じ形のツノが、本来目があるはずの部分から生えている。


 それは、機械装置の柱ビーカーに磔になっていた。



「天使……」



 そして特筆すべきは背中から生えている純白の翼と頭上に浮く歯車の様な漆黒のヘイロゥ。

 その神々しい姿は、もはや天使という存在を優に超えている様に感じられた。


 ──しかし、自我は無さそうだった。



「ベル……何コレ……?」

「──これは『ラプラス』だ」



 瞬間、驚きから来る衝撃がシドを刺す。

 サラ先生はラプラスを『人間』と言っていた。しかし目の前にはそれを超越したと思われる存在がいる。──本当にこれが人間なのだろうか?



「……まて、やめ──私が何故生きているのか、知りたいかい?シド?」



 一瞬だけ……ナニカがベルの意識を奪い取った様な気がした。シドは自身の目を疑ったが、最近ずっとあまりよく眠れていなかった為、疲れによる幻覚と片付けた。



「……う、うん!」

「ハハハ!それでは説明しようか。私は確かに1した。だが『因子』により生き返る事が出来たんだ。驚いたかい?」



 驚いた。と言うよりも『因子』というものが一体何なのかという疑問の方が強い。



「因子……って?」

「おや、"そこの"彼女から説明は受けて居ないのかい?」

「え──?」



 そう言った後、ベルは後ろの物陰を少し見て、気にせず説明を続けようとする。



「──いつから、お気づきでしたの?」



 そして突然、ベルが視線を向けていた所から隠れていたサラ先生がシドが今までに見た事のない異常な見幕で出てきた。



「はは……まあ、さっきからだ。殺意はもう少し、抑えていた方がいいよサラ・テイラー。これは私からのアドバイスだ……あと少し待ってくれないか?まだシドへの説明が終わってないんだ」



 そうしてサラ先生は気を失った様に無言で立ち尽くした。そんなサラ先生を横目にベルは「ありがとうサラ」と言い説明を続けようとする。


 先程からのベルから溢れ出る異常な違和感をシドは感じざるを得ないが、シドはそれでも願い続け、再度奇跡的に出会えたベルを信じて、この明らかな異常な違和感から目を背けようとする。



「そうだね、因子というのは、簡単に言えばある種の”不死性”のようなものだ」



 ベルは静かに説明を続けた。何事も無かった様に淡々と。



「シド、7人の科学者という都市伝説は知っているかい?」



 7人の科学者。それはサラ先生を初め、この『ラプラス』を開発したという伝説の科学者達。サラ先生が言うにはベルも7人の科学者の一人だったらしい。



「うん!その他にもラプラスの事とかサラ先生が説明してくれたんだ!」

「はは!そうかそうか!」といいシドの頭を撫でる。

「私たち『7人の科学者』はラプラスを開発した。しかし『とある事故』が起きてしまってね、ラプラスと──やめろ!」



 先程の様にまた、ベルの意識を一瞬だけナニカが乗っ取った気がした。恐らく先程のは幻覚などでは無いとシドは確信した。だがその事実とは別に、それを信じたくないという気持ちの方が強かった。



「……ベル、大丈夫?」

「あ……ああ、先程から心配をかけてすまないな、シド。生き返ってきた時から頭がどうやら追いついて居ないらしいんだ」


(偽物だ。ベルがラト姉や僕に嘘をつく時はだいたい、罪悪感から少し引き攣った顔をするけど、コイツは無表情で──ッ、駄目だ駄目だ!嫌だ!信じたくない!せっかくベルが生き返って会える事が出来たのに……!)



「そう……なんだ……」



 何とかシドは自身の気持ちを沈める。



「それでは続きと行こうか。先程言ったようにラプラスを開発し、が起きた。そしてラプラスはとある少年と融合してしまったんだ」


 疑問はあるが、シドはベルに説明を続けさせる。



「そして融合した少年というのが──シドを傷つけるな!っ、シド逃げろ!──ッ、『ウォーカー』という少年だ」



 3度目。今度はハッキリと言葉を発した。それはシドに警告する様だった。



「ウォーカーは弱冠6歳ながら世界で初めて『魔素マナ』を発見し、さらに人類で初めてPSYのうりょくに覚醒した為に『神の子』とも言われる様な世界中の誰もが認める天才少年だった。だが、その『魔素マナ』が争いを生み、それにより国連は私たち『7人の科学者』とウォーカーの一切の情報を抹消してしまった」



 これが『7人の科学者』が所詮、都市伝説止まりとされている理由。



「ウォーカーは心優しき少年だったが為に、少年には重すぎる責任を背負い、感じ、心に闇を落とした。その感情が自身のPSYのうりょくの力を増幅させ、彼のPSYのうりょくと世界中の『絶望』の感情、そしてラプラスに何故か元々含まれていたヴォイドが結びつき、融合してしまった」



 シドは自身にウォーカーを重ねる。どこか共通点が多い為だろうか?



「──そしてその時、彼によって混じりあってしまったモノが『大罪つみ』として7人の科学者に因子が宿った────シド!」



 また、ナニカによって遮られる。それと同時にサラ先生が突然動き出す。



「シド!今すぐベルから離れなさい!!」



 サラ先生が必死そうに言う為にシドは勢いに呑まれ、離れる。

 すると今度はベルが話し出した。



「すまない!時間が無い!簡潔に言うぞ!まずワタシは乗っ取られている!コイツはマ…──チッ!」



 シドの理想が崩壊した音がした。今まで目を逸らし続けてきたというのに。それが一瞬にして崩れ去った。



「やっと正体を現しましたわね、悪魔憑きヴァンパイア……」

「あーあ、めんどくさいな……やっとウォーカー君に会えそうだったのにさ、キミも会いたかったんだろ?なのにさぁ!!なんで邪魔しちゃうんだよサラ・テイラー!!……ま、祖先が聖職者エクソシストだったからかな?」

「ぁ……ぁぁ、ベルぁ……おまえぁ、だれだ」



 シドは震えた声で問う。



「クク……いいねぇ。あぁ可愛いねェ、全く変わらない……名前かい?ああいいさ!俺の名前は『ルシファー』またの名を『傲慢の魔王かがくしゃ』さ!」

「あらあら、随分気色悪い偽名です事。早くそのムカつく顔をベルごとぶん殴ってやりたいですわ!ゲイゲイのサイコキチガイナード陰キャ!!!!」



 サラ先生が本気でキレる。その目は真に『殺す』という殺意と『シドを守る』と言う保護者の目がオッドアイの様に混在していた。

 それはいつもの『サラ先生』ではなかった。



「おいおい、そりゃフルセ君に言ってくれよ!俺はもうナード陰キャじゃない!」



 ルシファーはホルダーから銃を取り出し、銃口をサラ・テイラーへ向ける。



「フルセは確かにちょっとサイコでナードなのは否定しませんが……テメェ程!!人の道までは踏み外してはありませんわ!ちょっとは自重しろよジョーカー気取りが!!」



 一方でサラ・テイラーは懐から手のひらサイズのガジェットを取り出した。それは変形していき、先端が武器となった傘に変形した。



「わたくしの神器けっさく、『キングスマン』……!!」



 まさに一触即発。しかし先にその空気を打ち破ったのはルシファーだった。

 ルシファーは向けていた銃口から弾丸を発射し、サラ・テイラーは傘でシドを守りながら避けようとするが、弾丸はギリギリで右肩に直撃する。



「……チッ、ラプラスがシドに強烈に反応しているせいで観測未来視が使えませんの」



 しかし、サラ・テイラーは弾丸を受けても表情を何一つ変えることなく、次に打ち出された弾丸を傘で防いだ後にルシファーに向かって走り出し、傘を投げ、懐へ入り込む。



「ッ!クソ、邪魔……前が見えない……!」



 そしてサラ・テイラーは傘の下から潜り込み超低姿勢の状態から強烈なアッパーを繰り出した。そしてルシファーがよろけた所に予告通り顔面へストレートのコンボを放つ。



「早く起きなさいですの!コアラ女!貴方の子供のシドが泣いていますのよ!それでは保護者としても、わたくしのライバルとしても失格でしてよ!」

「ウォーカー君!!……じゃなかった。シド君!俺がさっき言った事は本当だ!愛して──ッ黙れ!シドすまない!ワタシはキミを愛している!その気持ちはいつでも変わらない!どんな事があっても挫けるな!諦めるな!可能性がある限り、希望を捨ててはならない!」

「ぁ……あぁ、べる……!」



 シドが震えながら、ベルに反応する。



 本物がルシファーの意識を乗っ取り、シドに語りかける。そして本物のベルのターンは続く。



「そしてサラ!コアラ女は少し……いやかなり傷ついたが、ありがとう!──『殺してくれ!』」

「え?」



 その瞬間に放たれた衝撃的な言葉、それはシドの心を挫いた。



「OK……待っていましたの、そのお言葉を!」



 サラ・テイラーは傘を拾い、取っ手に付いているスイッチを押した。

 そしてその傘の先端が伸び、完全に剣へと変形した。



「お覚悟はいいですの?!コアラ女ァベル・ホワイト?!!」

「ああ、早くやれ!成金ビッチサラ・テイラー!」



 その言葉を聞いたサラ・テイラーは傘の露先についたエンジンにより超スピードでベルに向かって飛んでいく。



「嫌だ……やめて、やめろおぉォォォォォォォ!!!!」

フリィィィバァァァッッフリーバード──!!!!」



 シドが叫ぶも叶わず。

 そしてまた彼女も叫びながら、サラの剣は──ベルの身体を貫いた。



「ぁ、ぁぁ……そんな、ベルが、ベルがぁ……!」



 ベル、2度目の死。あまりのショックにシドは膝から崩れ落ちる。そしてベルを殺した張本人、『サラ・テイラー』は絶望に打ちひしがれ座り込むシドに、同じ目線の高さになり励ます。



「……ぁなんで、」

「……シド、わたくしの目を見ますの」

「ぇ、サラ、先生……?」



 シドは言われた通りに目を見た。すると『サラ・テイラー』の目にはもう殺意などは無く、いつものサラ先生の目に戻っていた。



「ええ、サラ先生ですわ!」

「ぁぁ……サラ先生ぇ!!」



 シドはサラ先生と泣きながら抱擁を交わす。サラ先生の身体はベルと同じように柔らかく、そして温かかった。



「シド、彼女が言っておりましたわ。『可能性がある限り、希望を捨てるな』と、まだベルが生きている可能性はありますわ。」



 その言葉は、絶望一色のシドの心に僅かながらに希望の火を灯した。



「でも……ベルは、身体を貫かれて!!」

「いいえ、シド。可能性はありますわ。」



 困惑するシドにサラ先生が優しく語りかける。



7人の科学者わたくしが持つ『因子』は、持っている間に一度だけ、殺した相手に『因子のうりょく』が移る事を代償に『死』という世界の理から逃れられる事が出来るという、不可解な法則がありますのよ」



 知られざる因子の法則をサラ先生は説明する。



「そしてベルは恐らく、J.Jに襲撃された際に一度死亡し、シド達が気絶した後の『空白の時間』に瀕死のJ.Jを殺し、因子を奪い返したのでしょう」

「それじゃあ……!」

「ええ!きっと恐らくベルは生きていますわ!」



 その言葉を聞いた途端にシドの顔は少しだけ、明るくなった。そのシドの顔に微笑みを浮かべるサラ先生だが、少しした後に再び、真剣な表情へと戻る。



「しかし、これはあくまでわたくしの推測に過ぎませんわ。そしてあのサイコナードは、『傲慢の因子』でベルを"精神的に"操っていましたの。因子はナードの『精神』に引っ張られるのか、はてまたベルの『肉体』に引っ張られるのかが未だ不明瞭ですわ」



 シドは息を飲む。しかしそれでも、シドの複雑な心境は前向きに進んでいた。



「ですが、今の貴方のすべき事は『希望を捨てない』というベルからの言いつけを守る事ですの!それを守れる貴方なら、きっと!ベルはまた戻って来てくれますわ!」



 そうしてサラ先生は腕を広げてシドを受け入れる。シドは再び抱擁を交わした。


「さらせんせぇ……」


 涙が止まらなかった。ずっと孤独に苦しんでいたシドの心に光が刺す──



「──がはッ……!」



 バンッと拳銃の音がした。グチャ、と音がした後、暖かかったサラ先生の体温は徐々に低くなっていった。

 シドは自身の手のひらを見る。そしてその手のひらはサラ先生の赤に染まっていた。



「ぁ?え、?」



 シドは困惑しながら振り返る。そしてシドが見たのはジャケットとジーンズを着た天使ルシファーだった。

 ルシファーの背中には翼が生え、頭には純白のヘイロゥが浮いている。



「俺を差し置いて、勝手に俺の可愛いウォーカー君とチープなミュージカルやっといてさあ……勝手に終わらせちゃあダメだって。まだウォーカー君を絶望させる爆弾ネタはあるというのにさあ……」

「お前ェェェェェェッッッッ!!!!」



 シドから無意識に出る影。シドの強烈な感情に反応し虚影操作シャドウエディタの複数の影はルシファーの心臓に向かって伸びていく。



「うんうん!そのPSYのうりょく!懐かしいねェ!ウォーカー君!」



 ルシファーはそう言うと、腕を広げてシドの虚影操作シャドウエディタを受け入れ、貫かれた。



「は、?なんで……」



 ルシファーの突然の謎の行動にシドは困惑するしかない。



「ああ、コレがウォーカー君のぜつぼうか!魔王エンド・ウォーカーの成長が楽しみだ!……サラ・テイラー!キミは爆弾の導線を切り間違えたんだ!せいぜいそこで死にながら後悔してるがいいさ!」

「ク……ソ、ナード!!!!」



 サラ先生は再び、殺意を溢れさせる。



「クク……クハハハハハハ!!ああ!!最っ高に面白い!!全次元のウォーカー君!俺は全員を、全てを愛しているよ!!」



 ルシファーはシドに視線を向ける。



「ウォーカー君!……クク、違う違うwキミはウォーカー君じゃなかったねw……えーと、そう!シド君!!キミはね、なんだ!!」



 シドの困惑は深まる。



「キミはァッ!!ベルによって──」

「……ッ!?、マックイーン!!やめろ!!!!サイコナード!!!!」



 そして何かに気づいたサラ・テイラーが叫ぶ。



12月25日1週間前に完成した──!!」

「サイコナード!!!!」



 しかし、サラが叫ぶもルシファーは止まらない。



「──愛玩の為に作られたラプラスの模造品クローンなんだ!!」



 瞬間、希望の火が勢いを増し、徐々に炎になりつつあったシドの心は──消えた。



「…………は?何、え……? どういう、意味……?」



 今までにないくらいの衝撃がシドを襲う。そしてシドの思考が停止する。



「そういえば、俺と僕がベルを乗っ取ってた時、ベルは心の中でウォーカー君にとても謝りたがってたなぁ!」



 シドの心臓の鼓動が高まる。何がどういう事なのか分からないシドを、置いていく様に話し続けるルシファー。



「なんだっけ?えー……ああ!確かこう言っていたなあ!ベルっぽく言うなら『ああ、大きくなったなシド……、謝罪させてくれ、さみしい思いを今までさせて、済まなかった。だが許してくれ、キミは偽物の記憶を植え付けられたウォーカーのクローンだが、私はキミを愛している! 記憶が偽物でもキミへの愛は本当だ!……その証明と言ってもなんだが、キミをいじめていたグループが居ただろう。あれは酷い、よくいじめに耐えたなシド。尊敬するよ。私はああ言うのがどうしても許せなくてな、キミを守る為にそのグループOUTCASTの元リーダーのJ.Jに自ら手を汚させて、消して貰ったよ。……そしてキミはよく自身の能力に悩んでいたな。それは特に気にする必要は無い、前にも言っただろう『キミの能力は感情により最弱にも最強にもなる』と、だから気にする必要はない。キミはいつまでも、私の息子だ。……愛しているよ、シド。』……ってさあ、クヒッ!!」



 ルシファーはベルの口調で煽りながらシドに真実を告げる。





「──つまりキミはぁッ!ッ!ッ! 劣化模造品クローンなんだよッ!!」





「嘘、でしょ?……僕が、クローン……? 本当に、ベルが……? どうして……!? 嫌だ、そんな訳……──ッッルシファ!──」

「ああ、キミまおうの復活を心待ちにしているよ……エンド・ウォーカー君。……愛しているよ──」



 直後、ルシファーの姿は無かった。

 シドはワープした。

 そこは燃え盛る小屋の中だった。


 少女が居た。

 次々と起こる事に何が起きているのか分からず思考停止し、ただ立ち尽くすだけのシドを、死にそうな、そして悲しそうな目でこちらを見ている。


 シスターと神父が来た。

 シドは殺された。


 ---


 1章『天空学園都市NOAH:日常編』完。


 Universe!!

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