11話 1stライブ そして―――

1stライブ そして―――①

 1stライブのグッズ販売が十時から、公演の列形成は三十分前からと公式からアナウンスがあったので、その時間に到着するようにしていたが、電車の乗り継ぎが上手くいきすぎてしまい四十分前に会場に着いてしまった。


 列はすでにできており、ルールを守って来たのが少し馬鹿らしく思えた。


 買おうとしているのはイベントTシャツ、イベントタオル、ランダムブロマイド、缶バッジだ。今回売られているグッズ全種類になる。イベントTシャツとタオルは今回のイベントタイトルのロゴが印刷されている。

 缶バッジは四人それぞれがライブ衣装を着て撮影されたものが四種類、ブロマイドも四人それぞれで撮影されたものが何種類かあるらしい。どちらもランダムなので複数購入してダブったりしたものを交換していくのが主流らしい。とりあえず、推しのしずるんをゲットするのが目的だ。


 今日のイベント会場は住宅街にあるので、会場付近で騒いだり、通行の邪魔になることはしないよう公式からのアナウンスはされていたのだ。思った以上に人が会場付近に集まってしまったので仕方なく列を作ったというところだろうか。

高そうな家がずらっと並び、飲食店も俺達のような人間が入るにはかなり躊躇しそうな場所ばかりで入れそうなお店がないな。


 俺は馬鹿正直にグッズ販売の三十分前に並んだ。待ち合わせしたわけではないが花林、ナマガルシップス、サスと同じタイミングになった。あまり騒がない程度に三十分間会話する。話している内に次第に声が大きくなっていったが、その度にナマガルシップスが俺達に声を抑えるよう注意してくれた。

 時期は二月、防寒対策もしていることもあり、そこまで寒くはなかったし、会話しているうちに時間はあっという間に過ぎていった。


グッズ列は次第に進んでいき、四十分程度で購入できた。後ろにもどんどんと並んできていたのでまだまだ列は途切れないようだ。

 列から抜けた後、四人で駅前のファミレスへ移動し、昼ご飯を食べた。料理が来るまでの時間に缶バッジとブロマイドの袋を開封する。四人でそれぞれ欲しいものを交換し合った。


 ここで問題が起きる。俺とサスの推しが同じなのだ。カナンが一番の推しでしずるんが二推しのサスにとっては、しずるんのブロマイドが欲しいとなる。そうなればじゃんけんで勝った方がもらう事になった。

「いやー、ブロマイドの種類は各八種類というところですかね。SNSで見ると、そんな感じです。カナン、しずるんを出している人達が多いですね。さらら、まあさが欲しい人ばかりのようです。買い増ししないと全種類揃えられそうにないですな」

「ナマガルさんはあと二種類?私はあと一種類っぽい。SNSで交換しようにもこちらの手札が少ないし、あと一、二セットは買い増しした方がいいかな。入場が始まると物販が閉まっちゃうから、その前に行ったほうがいいかな」


 ナマガルシップスと花林の会話に出てきた買い増しは文字通り『買い』を『増す』こと、つまり買って増やすことである。

 それなりにブロマイドを買ったはずだが、全種類揃えるにはこちらの購入数が足りなかったようだ。なので、もう少し買って手に入っていないブロマイドを手に入れるか、交換で手に入れるか、どちらかということになる。


「僕もカナンはみなさんのおかげで揃いましたけど、しずるんはもう少しですね。推し二人を揃えようとすると難しいですね」

 サスは少し遠慮気味にそう言った。サスはカナン、しずるんの二人を推しているので増々、難易度が高い。こんなに種類が多いとなると尚更だ。推しを増すのは辞めておこうと改めて思った。


 とりあえずご飯を食べてから、すぐに会場に戻りブロマイドを四人で再度購入した。結果としては四人で全種類揃えることができた。

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