10話 金曜夜 居酒屋にて
金曜夜 居酒屋にて①
日曜にブルームの1stライブを控え、週初めから落ち着きに欠けていた。そんな水曜日、サスから「金曜に飲みに行きませんか?」と連絡が来た。そういえば連絡先を交換したんだったな、とふと思い出した。
正直、金曜はブルーミングタイムがあるので家に帰りたいのだが、せっかくの誘いなので受けることにした。
サスのことはほとんど知らない。しずるんと出身が同じという事は秋田県出身なのと、同い年という事しか情報がない。この機会に知っておくのもいいだろう。
金曜夜、待ち合わせ場所の秋葉原駅に着いた。時刻は待ち合わせ時間より少し遅れて二十時前の到着になった。
月曜に休む分の仕事を先にやっておかなければいけないので少し遅くなった。休む為に休む分の仕事をしなければいけないとは、どこか矛盾している気がする。
人の多い改札前から離れてサスを探す。この辺にいるらしいのだが、どこにいるのかわからないので電話をかけてみる。二回目のコールでサスは電話に出た。
「もしもし。すみません今着きました。どこにいますか?」
「もしもし。改札の近くにいますよ。じゃあ、右手を挙げて振りますね」
そう言われ周りを見渡す。そこに一人、スーツ姿で大きく右手を振っている人物がいた。見覚えのある顔だ。
「見つけました」
そう言い電話を切り、サスの所へ小走りで向かった。
「お待たせしてすみません。仕事が長引いてしまって」
「いえいえ、僕もさっき着いたところですから。お店は予約してるので行きましょうか」
そう言われサスに付いて行った。サスも俺と同じスーツ姿だ。お互い仕事帰りなんだろうな、となんとなく察した。
秋葉原駅から徒歩五分、お店に着いた。大衆居酒屋という感じのお店だ。席に着いてメニューを見るが基本的に値段はお安めだ。味にはあまり期待できないかな。
二人とも生ビールを注文し、早めに出てきそうな料理と揚げ物を注文する。サスも結構こういう場所には慣れているようで俺と同じような物を注文していた。
飲み物が来るとお互い乾杯する。ビールに口を付けストレスを解消するように半分ほど一気に飲み、ジョッキをテーブルに置く。
さて、これから何を話すのか。誘われたは良いが、共通の話題の話をすればいいのだろうか。
「いやー、ナマガルさんも誘ったんですけど、忙しいみたいです」
「あの人も仕事が忙しい時は忙しいみたいですけど、暇な時は暇みたいですよ」
「そうなんですね。ベアリンさんは?」
「誘っても多分来ないので誘ってないです。職場からも遠いですし、多分興味もないと思います」
「そうですか」
ちょっとした会話をした後、しばらくの沈黙が生まれる。これは少し酒が入って酔いが回ってきてから色々と話した方がいいのかな。
サスと同じペースで酒を飲んでいくが、俺にとってはペースが少し速い気がする。もしかしてこいつ、酒が強いのか。
飲み始めて十分くらいで二杯目が飲み終わる。これはこちらが潰されてしまうので少しペースを落とすことにする。帰り道は長いので酔いつぶれてしまうのはまずい。
料理も次々と出てきてつまんでいくがどれも美味しい。値段を見て侮っていた。こういう店でも食事は侮ってはいけないな。
「フカジロウさんはどこからブルームに興味を持ったんですか?」
「あー、ベアリンに誘われて行ったお披露目ライブでハマりました。しずるんの声がいいですよね」
「いいですよね。一応、地元が一緒なので応援してはいますけど、それ抜きにしてもいいですよね。僕も地元の後輩がライブするって聞いてお披露目ライブ行った時にカナンにハマりましたよ」
「カナン推しって、なんか昔のドラマとか観てた人が多い気がするんですけど、どうなんですか?」
「僕は後から知らなかったんですよ。元子役だったんだなって知りませんでした。最近は昔に出ていたドラマをサブスクで見たりしてますよ」
少し酒が入って話も弾む。あまり面識のない人でも共通の話題があれば話が弾むのはナマガルシップスで実証済みだ。酒が入るのなら尚更だろう。なんだかこういう飲みも楽しいな。
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