03
なにも難しい話ではない。マグラルド様に恋したらしいご令嬢がわたしを排除して彼の妃の座につこうとしたのである。
聖女自体はその重要性から国内の中でもそれなりの地位を与えられるのだが、それはあくまで聖女本人のみ。わたし自身は平民の出身なので、家の力というものがない。
あっさりとそのご令嬢に負けて、わたしは排除され、国外に放り出されてしまったのである。
それにしても、わたしを追い出すとき、「わたくしも聖女ですのよ。伯爵家のわたくしの方が、よりマグラルド王子には――……ふさわしいのではなくて?」とか言ってたくせに、今、王城聖女いないんだ。ということは、やっぱり聖女という自称は嘘だったのか。
まあ、そりゃあ、本当に聖女だったら、結婚できる年齢にまで成長しているのに聖女という職についていないのはおかしいし。
二年経って、ボロが出たのだろう。
『障り』は土地の広さにもよるが、最低でも半年に一度は浄化しないとならない。わたしは三日に一回とか、場合によっては毎日とか、そのくらい頻繁にやってきたけど。
それでも、一年弱は何もしなくても誤魔化せる。どうしようもなくなって、あのご令嬢が聖女というのは嘘、というのが、今になってバレたのか。
わたしがいなくなった後のことの情報をマグラルド様から聞きたいものの、どこまで突っ込んでいいのか分からず、わたしはもそもそと食事を続ける。下手に聞き出そうとして、わたしが元・ジュダネラル王国の王城聖女であったことを周りに知られたくない。
「だが、僕は逃げてきたわけではない」
かちゃり、とマグラルド様はカトラリーを持つ手を止める。
「僕は、そのいなくなった聖女を探しに来たのだ」
飲もうとしていた水を吹き出しそうになった。それを無理やり飲み込もうとしたらむせそうになる。それすらもなんとか我慢したけど。
とにかく、マグラルド様に気が付かれたくないのである。目立つことはしたくない。
咳き込むのを必死に押さえようとしているわたしを他所に、ザフィールとマグラルド様はどんどん話を進めていく。
「いなくなった? なんだ、死んで代替わりしたとかじゃないのか?」
「……ああ。まあ、いろいろとあってな。城を去ったのだ」
そこまで話すんだ。というか、そこまでバラしてしまって、王子と言う肩書を隠すつもりはないのか?
「へー、なかなか詳しいね。王城関係者?」
「あ、ああ。まあ、そんなところだ」
リリリュビさんの質問に、マグラルド様は分かりやすく動揺していた。
一応、隠す気はあったのか……。嘘が下手というか、そういうところあるよね、マグラルド様。どちらかというと、詰めが甘い、だろうか。
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