最終話 ウブじゃなくなったギャルたち
青い桜、『アオノハジマリ』
この花は通年咲き続けるものの、やはり春が一番生き生きとしているような気がする。
高校2年の春に転入してきてから、はや2年。
僕はこの汐海学園を卒業する運びとなった。
卒業式といえば、別れを惜しんで歌を歌って泣く、みたいな印象があるだろう。
けど、僕らに別れはない。
確かに学園に通うことはなくなるけど、島の中で暮らすのは変わらない。
つまり、いつだって会えるってことだ。
ゆえに卒業式なのに悲しい感じはまったくなくて、終始和やかなムードで進んでいった。
京蓮寺さんのビデオレターを見てるあいだ、お菓子を食べてる子がいたのには笑ってしまった。
ここは映画館じゃないぞ。
実に順風満帆な学生生活だった。
謳歌できたと自信をもって断言できる。
僕らの学生生活は幕を閉じたけど、ここからがむしろ始まりだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして何度目かの春。
僕は窓の外を舞う、青い花びらを眺めていた。
これを初めて見たときは、すごい違和感があったもんだ。
それが今では安心感すら与えてくれる存在になっていた。
なんて感慨深いなと目をやっていると、声をかけられる。
「羽黒先生! わからない問題があったので教えて下さい!」
「わ、私も……学級日誌、書いたので……見てほしいです」
「うん、わかった」
僕に話しかけてきたのは、自身が受け持つクラスの女子たちだ。
そう、僕は汐海学園の教師になることができた。
試験は合格ラインギリギリの部分もあったけど、それでもどうにか受かった。
そして数ある学校から運良く、ここに赴任してこられたんだ。
教え子である彼女らもやっぱり背が高い。
しかし、僕の小ささはあの頃のままだ。
身長じゃとても敵わないけど、頼りがいのある大人だって思ってくれるように振る舞わないと。
教科は主にタイマンを受け持っている。
これ以外、得意なものがないからっていう部分はある。
ただ、学生たちがタイマンに打ち込む姿を見るのはやっぱり好きだ。
しかし、困ったこともあって……。
「せんせーい、あたしに命令してよ~! 先生が勝ったんでしょー?」
「そうだけどさ! そもそも学生同士でやらないと……僕は指導する側なんだから」
「やーだー! 先生とタイマンして、服破かれたい~」
そう、彼女らは決まって僕に挑んでくるんだ。
そのときは懐かしの枝を使って戦うけど、手は抜きたくないって思ってしまって、結局は圧勝。
彼女らの服は四散し、そのあられもない姿を僕に見せるという不純な目的を持った子が多いんだ。
男としては嬉しいけど、教師としては困ってしまう。
教師としては新米の僕。
まだまだ一人前の教師になるには時間がかかりそうだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
学生時代に千咲先生がそうだったように、教師という仕事は楽しいけど多忙だ。
帰る時間だって夜遅くになってしまう。
ちなみに千咲先生のアパートは、学園を卒業してからしばらくお世話になっていた。
でもスペースが大人数で住むにはあまりに狭すぎるため、僕らは引っ越したんだ。
教師になった僕、同僚の千咲先生。
そして京蓮寺さんのもとで働いている早葉子さんに、フィットネスジムのトレーナーになった雲英さんでお金を出し合った。
他のみんなは大学へ進学して、そこでバイトしたお金を入れてくれた。
京蓮寺さんに頼めばいい話なんだけど、みんなで住む家はみんなで建てたかったから。
彼女にはあくまで1人分の援助をお願いしたんだ。
そして、かなり大きい家を建てることができた。
ここが僕らのマイホームだ。
「ただいま~」
玄関のドアを空けてそう言い終わる前に、返事が帰ってくる。
「おかえりー!」
僕の妻となった8人が、あたたかい笑顔で出迎えてくれた。
彼女らの顔を見ていると、それだけで疲れが吹き飛ぶ。
目線を少し下に持っていくと……みんなのお腹は膨らんでいた。
実は職について社会人になったということで、子宝にも恵まれたんだ。
まさか全員が同じように身ごもるなんて思ってなかった。
いつぞやに翠玲と千咲先生がスポーツの女子チームを作りたいだなんて言っていたけど、あれが単なる願望ではなく叶いそうになっているのが驚きだ。
大学を卒業してからと説得したんだけど、もう待ちきれなかったようで、僕はその想いに応えた。
しかし単一生殖で生まれた人だけで構成されるのが、このジングウ島のはず。
でもその長である京蓮寺さんも僕の子を妊娠してしまったこともあり、僕だけは例外となったらしい。
なんともワガママだけど、そういうところも好きだ。
ちなみに生まれてくる子は全員女の子。
子が親と同性になる単一生殖じゃないのになぜそうなるのかはよくわからない。
京蓮寺さんが言うには、ずっと単一生殖を繰り返してきた母体の遺伝子が影響しているらしい。
美味しい夕食を食べてお風呂に入る。
そして上がれば、お待ちかねのイチャイチャタイムだ。
「青霄! 俺のお腹、かなりデカくなっただろ~?」
「そうだね……まんまるだ」
「あははっ! ほら、触ってくれよ。触りながら~、んちゅうっ」
翠玲の大きくなったお腹を優しく触らせてもらう。
そしてキスも一緒にしてくれた。
喋り方こそ男友だち感はまだあるけど、女の子感も溢れ出している。
「ダーリン! 私にもキスさせろー? おっぱい触りながらでいいからよォ」
「はい、それじゃあ……」
「あぁ、でも……あんまりやるとミルクが出るからな? ふふっ、ちゅうっ」
妊娠を経てさらに大きくなった雲英さんのおっぱいを触ってキスをする。
こんなお腹じゃインストラクターは当然できないため、お休み中だ。
だからかエネルギーが有り余っており、毎晩大変なことになっている。
「わーしともちゅーしなさーい! こっち向いてー! はーやーくー!」
「はい、向きましたよ」
「ニュフフ~! それじゃ、むちゅむちゅしちゃうからねー? んちゅう!」
そう言って可愛らしい見た目とは裏腹に、濃厚なキスをしてくる千咲先生。
僕の同僚になった彼女も今は産休を取っており、家でしか会えないのが少し寂しい。
お腹はぽっこりしたもののおっぱいは小さいまま。
しかし、美味しいミルクはたくさん出るようになった……。
「青霄先輩、ミルクは今すぐに飲みますか? それともらぶらぶベロチューにしますか?」
「い、今はキスで……!」
「わかりました。おっぱいは後にしましょうか。では……はむちゅぅっ」
結婚しても乙音ちゃんの表情はほとんど変わらないままだ。
でも目の奥を覗いてみれば笑っているのがわかるぐらい、僕は彼女を理解できるようになった。
芽那ちゃんにエロ単語を教えられているらしく、夜にはすごい語彙力を発揮してくれる。
「はぁい、青霄くん。こっち向いてくれるかしらぁ? ママともちゅーしましょうねぇ……」
「さ、早葉子さん……服が」
「あらあら、もうミルクが染みてきちゃってるわねぇ……でも、まずは……んちゅううっ」
手をいやらしく絡めながら、優しく優しくキスをしてくれる早葉子さん。
本人いわく、芽那ちゃんを妊娠したとき以上に母乳が出るようになっているらしい。
あまりにも出すぎて、僕の朝食はだいたい彼女のミルクをいただいている……。
「青霄……アタシも。ギュって抱きしめながらしてほしいんだけど……いい?」
「もちろん……」
「はぁ、こうやってされるの好きすぎる……。何人でも作れちゃいそう……んちゅうっ」
身重だから激しいことはできないけど、愛凪ちゃんは僕に強く求められるのが好きだ。
より大きくなった彼女の身体を抱きしめながら、その愛を感じつつキスをする。
出会った頃はツンケンしていたけど、今では甘々に甘やかしてくれる僕のギャルママだ。
「せいちん、こーんなにたくさんの子をママにしちゃうなんてね~。いけないんだ~? きゃははっ」
「僕……みんなのこと、好きだからさ。その証明がほしくて……」
「わかってるっ。からかってゴメンね? せいちんと結婚できて、ママになれて……ウチ、とっても幸せ。これからもずーっと大好きだからね、ちゅううっ!」
芽那ちゃんのずっしりとした愛は、結婚して子どもができてからさらに増していった。
相変わらず盗撮する癖はそのままだけど、もはやいつも見てくれているという安心感さえある。
僕をずっと好きでいてくれた芽那ちゃんを、僕もずっと好きでいたい。
「青霄クン? キュウちゃんとの口づけはまだかな? 待っていたらおっぱいも張ってきてしまったよ」
「待たせちゃってすみません! どうぞ、来てください……」
「生命を授かるとは素晴らしいよね。それが愛する者の子ならなおさらだ。ではこの喜びを、キミと分かち合うとしようか……んくちゅうっ」
京蓮寺さんは人見知りを克服し、彼女らの前でだけ姿を現すようになった。
一度顔を出してしまえば吹っ切れてしまったようで、それからはもう四六時中こんな感じ。
この人がいてくれたから、僕のすべてが始まった。
感謝してもしきれない。
抱きしめ合い、おっぱいを吸い、キスをして甘え続ける。
極上のひと時だ。
この幸せに至るまでには、辛いことも確かにあった。
でも人生という長い時間でみれば、それはほんの短い部分でしかない。
今では毎日が彩られていて、振り返ったら素敵な思い出ばかりが蘇ってくるようになった。
新天地に行きたい。
ベストバウトの頂点に立ったときに僕の口から出てきた言葉だ。
あれにはマイナスな意味もあったけど、今にして思えばプラスの意味もあったんじゃないかな。
どこか自分を受け入れてくれる場所がほしかった。
そんな夢みたいな場所があるとは思っていなかったけど、ここは間違いなくその求めていた場所だ。
ああいう過去の地続きで、かけがえのない今がある。
だから切り捨てることなく、そっと胸にしまっておこう。
大それたことを考えてしまったけど、結局僕はただの甘えんぼうでスケベなヤツ。
情けなく甘えるだけの日々が、たまらなく愛おしいだけだ。
僕はとんだ果報者だな。
だからお姉ちゃん、呆れるかもしれないけど見ていてね。
お姉ちゃんが大切に育ててくれたお陰で、僕は今こうして幸せに生きていられるんだから。
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【あとがき】
ついに最終回を迎えられました!
これも読者の皆様の応援のお陰です。
本当にありがとうございました!
詳しいあとがきと次回作については近況ノートにて掲載しております。
最後に評価のほどをしていただければ幸いです。
またフォロワー様へ向け、近況ノートにてお風呂に入るSSを公開中!
こちらもぜひご覧ください。
次回作は来週に公開予定です!
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小さな僕は、でっかくてウブなギャルたちの景品になりました~タイマンゲームに負ければ勝者の言いなりのようです~【完結!】 佐橋博打 @sahashi-bakuchi
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