第26話
「でも、話してたじゃん?」
そんな私たちの変化に気づかないのか結衣ちゃんは、ふい、と人差し指を私たちに向けながら軽い調子で言う。
「席が近いから挨拶されただけだよ」
あい子がさり気なくその言い方で、仲がいいわけでも、こちらから近づいたわけでもないことを主張する。
「えー、そうなの?」
「なんだ、残念」
目に見えて落胆する彼女たちに、嫉妬のような黒い感情を感じ取ることはできなくて、私はそれに小さな違和感を覚える。
「何よ?」
あい子の冷たく突き放すような一声に、彼女たちからは反論が返ってくる。
「えー、あの高瀬くんだよ?」
「ときめかないの?」
「男とか興味ないし」
「えー!うそー!さくらは?」
「……え、私も、興味は……」
「マジで?信じらんない」
あい子と私の返答に、結衣ちゃんは大きな声で驚きを露にする。
初恋の始め方 mocha @mocha_novel
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