リサさまの言う通り!(実話です)
碧絃(aoi)
第1話 逃げるなよ?
免許をとったばかりの頃。リサが「いちご狩りに行きたい」と言い出しました。
二人で出かける時は、僕が運転手です。ガソリン代は払ってくれるし、ご飯も奢ってくれたりするので、それはいいのですが——。
約束をしていた日の前日。僕は風邪を引いて、熱を出してしまいました。38度もあって熱が出始めたばかりなので、次の日に治っているとは考えづらい。僕はリサに、
『熱があるから、明日は無理だと思う。日にちをずらすか、他の人を誘って』と連絡をしました。早く言っておいた方がいいと思ったんです。
しばらくすると、電話がかかってきました。
「別に運転するだけでいいよ」
「え???」意味が理解できませんでした。
「だから、連れて行ってくれるだけでいいよ。私が1人でいちご狩りをすればいいじゃん」
そうじゃねぇ。僕は熱でつらいんだよ。それに、薬を飲んで運転して、事故でも起こしたらどうするんだ。——と思いましたが、言うと後が面倒くさい。
「いや、熱が高くてぼーっとするし、1時間半くらい運転しなきゃいけなくなるから、無理だと思う……」
途中で具合が悪くなっても、リサは免許を持っていないので、運転を代わることができません。もしかしたら翌朝には熱が下がっているかもしれませんが、僕の判断は正しいと思います。でもリサは納得しませんでした。
「ずっと楽しみにしてたんだから、今更いけなくなるとか、あり得ない!」
いや、しらねぇよ。というか、もう寝かせてくれ……。
「マジでないから。明日の朝、起こしに行くから! 逃げるなよ!」
僕が言葉を返す前に、電話は切られました。
えっ、逃げるなよ……?
僕が悪いんですか???
友達の会話じゃないですよね、今の。
12時間くらい一度も目覚めずに眠ったので、身体は多少楽になりましたが、結局、熱は38度ある状態で、いちご狩りができる農場まで行くことに。
彼女はもしかして人間じゃなくて、魔王だったのでしょうか?
〈つづく〉
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