$人生敗者の異世界転生$

中村サンタロー

第0話:プロローグ


突然だけど君は異世界って信じるかい?

きっと驚くだろうけど僕は信じる。

だってそれを"見つけた"のだから……

異世界ってやつを。


「ルビー様!朗報です!遂にあの"予言の書"を入手することに成功しました」

僕はその声を聞いて思わず微笑む。

(ついに……ついにきたか)

"予言の書"

それは僕達が大魔王を倒す為に探し求め、遂に見つけたお宝だった。

しかし、大魔王の手下にその予言の書は盗まれて無惨にも僕達は、僕と仲間達は涙を流したんだ。

オルナ……フリー……悪かったな。

"新しい仲間"を得られたかもしれないのに。

何のことを言っているのか分からないかもしれない。

無理もない異世界語みたいな物だと思ってスルーしてくれて構わない。


「入っていいぞ」

僕は先程の声にそう返答する。

扉がゆっくりと開いて「失礼します」とその女性の声を聞く。

メイド服の可愛らしい姿が見える。

「こちらがそれです」

存外、スピーディーに彼女は事を運んできた。

その書を僕はメイド服の女性……"リア"から渡され受け取る。その書は薄く長方形で造られていた。 

そして僕は予言の書を開く。


「ふむ……なんだって!?」

驚きのあまり僕は声を上げる。

リアはそれに反応して僕に声をかける。

「ど、どういった内容でしたか?」

「異世界……異世界!?世界は一つじゃないのか?」

僕の言葉に疑問な顔を浮かべてリアは僕を見ていた。

そう。予言の書にはこう記載されていたのだ。


"汝が大魔王に匹敵する選ばれし魂を望むのなら……異世界より誕生した黒髪の男に会うべし"


その文章をリアにも言うとリアは僕と同じような反応をした。

「異世界!?」

僕はそれに頷く。

そして次のページを開くとまたも驚きがあった。


"汝、異世界に行くのであれば「クリアライズ」と唱えよ。そして、この異世界の地図に記された場所にAD2005年 5/3 19T30Mに訪れろ。必ずや世界を救う魂「クリアル」は居る"


(クリアライズ?)

頭の中でそう復唱する。

あと余談だけどAD、TMっていうのはそちらの世界で言うところの2005年 5/3 19時30分って意味になる。

そして僕は次のページを開いた。

そこには異世界語で描かれたであろう地図がある。

赤いマークがあり、いわゆるここに僕達の求める"お宝"がある。

「にしても……な、何でよりによって異世界語なんだよ!?分かるわけないじゃないか」

当たり前だがこんな言語、歴史探究家ですら解けないであろう。

試しにリアにも見せてみたがその桃色のツインテールの髪を左右に振る。


「こうなりゃやけだ。アルスト自警団の優秀な召喚士"アルファ"と"ベット"を使おう」

僕は一刻も早く新しい仲間が欲しかったんだ。

アルファとベットはこの世界では腕の立つ召喚士だ。

(まさか4人めの仲間が"異世界"から来るなんて……)

僕は驚きの気持ちを隠せなかった。

(あ、そうだ。地図に詳しい人も見つけてもう少し的確な情報を得よう)


神の悪戯なのか知らないが予言の書は中々に意地悪だった。


そうして僕は"異世界"のクリアル。クリアルって言うのは大魔王に匹敵する選ばれし者。つまり「新しい仲間」だ。


僕は地図に詳しい人物を見つけある程度の予測をつけた。

建物の名前も場所の名前も分からないが地図の設計からして巨大なガラス製の建物の近くにそいつはいるらしい。

訳わからないしもう当てずっぽうしかないだろう。

(一かばちかだ。人生はギャンブルさ)

父親の名言を僕は頭の中で復唱する。

「それにもし間違えてもその異世界人に異世界語を読み解いて貰えばいい訳だし?」


そう軽く考えていた。

というか予言の書はそこまで考えられていたのではとも思う。……多分。


そして遂にその日5/3 19T30Mが来た。

アルファとベットは言う。

「反転召喚でいいんだよな?」

アルファは剣をしまいながらそう言う。

「ああ……ってか何回言うんだよそれ」

ベットは魔法の杖を布で拭きながらそうジト目になった。

「じゃあ2人とも……頼んだよ」

僕はその2人にそう言うとアルファは「はっ!」と言ってベットは礼儀正しく答える。

「は!ルビー様!もう一度確認ですが、リベラ村のカルロ君ですよ?」

「分かってるって」


(頼んだよ……)


END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る