第38話 武山邸再び
「何だ、これ……? 俺でもわかるくらいやばい
「ものすごい
そこに居るだけで気分が悪くなる。
一郎は
「大丈夫、一郎くん?」
「……ああ、まあ、このくらいなら何とか」
「車で待ってることができればいいんだけど」
「そこを
――キュ~ン。
影の中から申し訳なさそうな
二人は「気にするな」と、影に向かって声をかける。
「部屋の調査が終わり
そう言い、幽子は麗華の部屋のドアを開ける。
「これは、想像以上に
「どれどれ………………うわぁ」
麗華の部屋は、二人の想像の三倍は酷い
身代わりだったシロクマ人形は耳、鼻、目、手、
彼女が使っていたPCや配信用の
これではもう使えない。
麗華が毎日使っているであろう大きな鏡は全体にヒビが入って使用不可能。
ベッドも真ん中から真っ二つにされており、とても眠れるとは思えない。
そして、何より
部屋の
こんな巨大な生物は地球上に存在しない。
「何の爪だよこれ……?」
「多分だけど犬ね。
「最近何かと
「ここまで大きいとできちゃうかも……」
「それだけのことを武山さんはやったってことか」
「うん……でも、何をすればここまで恨みを買うのかしら?」
「考えられるのは動物
「それは確定でやっているでしょうね。
「裏庭の犬たち、何とかしてやりたいな」
「ええ、そうね……かといってそのまま
「親父に
事情を知って、その上で大切にしてくれる新たな飼い主を探すのは
だが、犬たちのためにもそうするべきだ。
せっかく命が助かったその先で、
あの犬たちは今まで
なら、これから先は幸せにならなければならない。
そのために、自分たちのできることをしよう。
「さて、気を取り直して……と。とりあえずベッドのあたりに結界を
幽子が
最後にパンッ――と
特に紋様のある
「よし、
幽子は結界の反対側に身代わり人形を置いた。
そして人形を
「それは?」
「
「捕獲用……やっぱりサンドバッグにするのか?」
「んなわけないでしょ! 車の中でも言ったけど、私は罪のない人を苦しめる
「お、おう、そうか……じゃあ、何で
「武山さんに何をやられてそうなったのか教えてもらうため。あの人、絶対に言わないでしょうし、被害者本人から教えてもらうのが手っ取り早いから」
「なるほど。でも、恨みでこんなに巨大化した相手だぞ? そもそも会話が成立するのか?」
「させてみせる……って言い切れればかっこいいんだけど、正直
「失敗した場合は?」
「いつもみたいに力で解決……あーっ! でも今回それ本気でやりたくないわ! 私動物好きなのにーっ!」
説得が失敗した時を想像し、幽子は頭を
そして軽いストレス
グエッ――と、
「ここでできるのはこれくらいね。一郎くん、他の場所も見て回るけど付いてくる?」
「ああ、もちろん。付き合うよ。で、どこに行くんだ?」
「お風呂場と裏庭」
「その理由は?」
「状況から見て、武山さんが何かをした可能性が一番高い場所がその二つだから」
風呂場のサウナ。
裏庭のドッグラン。
どちらも麗華が何かを残してる可能性は高い。
「一郎くん、どっちから行きたい?」
「裏庭。外だし空気的に少しはマシだから」
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