第16話 週末のハーレム
「今週末はどこのお店の大会に赴くのでありますか?」
家に帰り、食事や風呂などをすました後、自室でカードの整理をしていると大和田からラインのメッセージが届いた。
「すまん、今週末はパス」
俺が文字を打つと即座に既読が付き、驚いたようなスタンプが送られてくる。
「友人のいないハカセ殿に予定……妙だな?」
ナチュラルに煽られてむかついた俺は既読スルーを決めようとした、その直後だった。
「もしや、部活関係ですかな?」
……相変わらず勘の良い奴だ。
「自分を差し置いて週末にハーレムとは、許されませんぞ」
週末にハーレムって……違う漢字の漫画があった気がするなぁ……などと、頭の中で関係のない考えをしつつ、シカトを決めようとすると大和田から大量のスタンプ爆撃が飛んでくる。一秒間に三個以上のスタンプが飛んでくるのは怖すぎるって。
「安心しろ。 一緒に出掛けるのは一人だけだからハーレムじゃない」
大和田の勘違いを正そうと俺はラインの文章を送る。これであいつの怒りも収ま……うわ、電話してきやがった。これは流石に無視出来ないよな。
「……もしもし」
「ハカセ殿、あの文章は本当でござるか?」
「嘘をつくわけないだろ。 カードゲーム始めたばかりの子がいて、デッキが必要になったからそのパーツを買いに行こうって話だ」
「ほう、ではカードショップを巡る感じですかな?」
「そうなるな」
「このあたりだとハカセ殿の通う高校近くなら安く、それでいて品ぞろえも良いですな」
「俺も最初そこから行こうって提案したんだけどな……」
「む?」
「有栖川……その子からグランドショッピングモールが良いって言われてな」
俺たちにとってなじみ深い場所、それがグランドショッピングモール。子供から大人まで、それこそ暇を持て余した高校生は週末にだいたいここで遊んでいる。
以前俺と大和田が訪れていたカゼノタウンでも大抵のお店は揃っているが、グランドショッピングモール店は土地の広さも相まって更に規模が大きい。もちろんカードショップも施設内に存在している。ただ、専門のカードショップに比べると品ぞろえに差がある印象なので俺と大和田はあまり訪れていなかった。
「ハカセ殿、もう一度聞くが、その有栖川という女子と二人で行くのか?」
大和田の声のトーンが一段低くなり、口調が少し真面目になった。
「そうなるな……あ、良かったら大和田も一緒にカード探し手伝ってくれないか?」
「……は?」
「お前も週末空いているなら丁度良い。 そのほうが効率よく揃えられるしな」
「……はぁ~」
大和田は電話越しでもわかるぐらい大きなため息を吐いた。
「天然でそれをやられたらこちらの興が冷めるというもの」
「え、何? 俺、何かした?」
「有栖川殿、同情するでござる……」
「なんでお前が有栖川を憐れむんだ……俺に何か問題があるなら教えてくれ」
「嫌でござる。 こういうのは自覚しないと駄目なもの。 自分は週末、遠慮しておこう」
言い終えた大和田は電話を切った。一方的に電話をかけてきて何がしたかったんだ、あいつは。
ピコン、と今度は月ヶ瀬先輩からラインにメッセージが入る。
「君は明日どこの大会に出るつもりだ?」
「なぜそんな事を聞くんです?」
「答えなさい、部長命令だ」
……さては先輩、俺が参加しない大会に出るつもりだな?
「明日は家の近くの大会に出る予定です」
「そうか! わかった!」
先輩は最後におやすみのスタンプを送ってきた。まだ寝るには早い時間帯な気もするが、先輩は夜早く就寝して早朝から活動するタイプの人間なのかもしれない。
「さてと……」
カードの整理を終えた俺は明日の授業に備えて最低限の予習を済ませるとベッドに入り、ユーチューブで対戦動画を見ながらその日は寝落ちした。
次の日の放課後、学校近くの大会に出ると再び店内に先輩の叫び声が響き渡った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます