第9話 地下にある街

 僕のつくりたかった地下帝国はすでに誰かに作り出されていた。


 地下にある街を見て回ることにした。規模はかなり大きくて端まで見えないほどだ。活気にあふれている。どうもこの街では税はほとんどないらしい。


 一応街の維持費としていくらかの徴収はあるらしいがそれも外と比べれば全然少ない。それに何を売っても文句は言われないようで、違法な売買なども横行している。


「レゼ様、これ魔法石です」


 そこにあったのは、青色のきれいな宝石であった。


「これが魔法石か」


「はい。魔法石の売買にはどの国でも特別な許可がいります。そのため地下に潜って違法に取引をしているようです」


「魔法石は許可がいるんだ」


「はい。基本的に所属している国の許可がいるようです。魔法石やそれを使った魔法武具などは、魔獣に対抗するために必須の物ですので勝手に他国などに流れていってしまうと大変なことになります。そのため、魔法石の鉱山などは基本的に国が管理しているはずです」


「基本的にって」


「それは秘匿されていたり、国が関与できないほどの勢力であったりです」


「魔女ってこと」


「そうとは限りません。マフィアのような裏組織などの勢力が強い国などはそこに鉱山の所有権を取られていたりしています」


 裏組織か。かっこいいな。自分の支配地を広げた後にそういうのも作ってみるのも悪くはないかもしれない。


「こっちには魔法武具が売られています」


「魔法武具は魔法石が使われた武具であってる」


「はい。あってます」


 そこには、見張りをつけて厳重にしながら、多くの武具が売られていた。


「少し見てみようか」


 見張りににらまれながらその店に入っていく。地下だというのに中は清潔に保たれており武具は基本的に壁にかかったりしていた。中にはガラスのケースの中に収められている物もあったりした。


 武器を使うのもいいかもしれない。正直に言うと魔力を持つ魔女としては全く必要のないものだ。むしろ邪魔だと言ってもいい。でもそういうものではないのだ。こういうのはロマンなのだから。それに騎士たるフィディには必要かもしれないと思った。


「どうする。どれか買うか」


「レゼ様。さすがに手持ちに魔法武具を買えるほどの分はありません。ここの統治者を警戒するなら今はやめておいた方がいいかと」


 お金か。そうだ。よく考えれば僕たちは奪われたフェーレス金貨を取り返しに来たんだ。それに地下に街があるなんて考えもしていないからそこまで金を持ってきてはいない。


 仕方がないからここはあきらめるしかないようだ。それでも一応どんなものがあるのか見るくらいはいいだろう。


 壁にかかっている物は100,000シェル程度の物で、ガラスに入っているものは1,000,000シェルや中には100,000,000シェルを超える物さえある。ひどい値段だ。


 魔法石を使った武具の強さは使われた魔法石の純度によって変わるらしい。例えば壁の安い武器は純度1から3といったところで効果は少しの身体強化といったところ。


 ガラスケースに入っているものは純度4から7あたりだ。もっと上はこの店には置いてはいないようだ。


 純度4以上の物となると、身体強化の他に一つ魔法が使えたりもするらしい。魔法は魔力に属性的な効果を持たせるもので魔法武具の場合、決められた威力の決められた形に魔力が勝手に変形してくれるらしい。


 例えば火の玉を飛ばす魔法とか。風を飛ばして相手を切り裂くものとかがある。その中で僕の目を引いたのは、純度7の魔法石を使っているくせに、魔法的なものはなく唯々、身体強化と武器の硬化があるだけというものだ。


 圧倒的な強者が使うような武器である。周りが特殊な武器を使っているとところで自分だけ唯々壊れにくいだけというのはロマンである。値段は15,200,000シェル。かなりする。


 今の手持ちでは到底買えない。仕方がないのであきらめるしかないようだ。肩を落としながら店を出る。すると必死にフィディが慰めてくれる。


「元気出してください。大丈夫です武器なんてなくてもレゼ様は最強ですから」


 それが自分の貧乏をより一層強調されるようで余計に悲しくなる。


「少しよろしいですか」


 そうやって二人して歩いていると。見知らぬ女に呼び止められた。銀色の髪を肩口まで伸ばしている女だ。顔はいい。


「なに」


「我が主がおよびです。ご同行願えますか」


 どうやら向こうから声をかけてきたらしい。魔力の感覚で分かるが彼女は騎士だろう。つまりその主ということならばきっと魔女に違いない。


「いいよ。それで君の主はなんてなんだい」


「これは失礼しました。私、深淵の魔女に仕えております、アニィ・セクトと申します」


「深淵の魔女って」


 新しい魔女の名前が出てきた。フィディに聞いてみることにした。


「すみません。その方については私もあまり知らないのです。少なくとも拝金のような目立つ活動はしていないことは確かです」


 深淵の魔女。こちらからも接触したいと思っていたところに向こうから来るとはなんともラッキーなことである。僕はアニィについていくことにした。

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