本作を紹介する上で、綺麗という言葉よりも綺麗な表現があるなら教えていただきたいです。
本作の特筆すべきところはその文の秀麗さによって描かれる夏の澄み渡った色彩です。
夏はたくさんの顔を持っていると私は思っています。
宇宙まで広がる真っ青な空、暑くてたまらない体が海水で冷やされる清涼感、盆頃の静けさ、夏の終わりに打ち上がる花火の色、屋台のりんご飴。
そのどれもが、一言では言い表せないほど複雑に絡み合って、ひとえに夏という季節を形作っていると言ってもいいでしょう。
四季の中で唯一夏だけが「終わる」という表現をされると聞きます。終わりがあるからこそ今が輝く。命の息吹や、彷徨える魂の還る場所、それらの境界線が曖昧になる季節が夏です。
だからこそ、何が起きても不思議ではないわけですね。
頁をめくれば、そこには忘れられない夏があります。
どうか本作を手に取ったあなたに、極上の色彩がありますことを、いち読者として心から願います。