第16話
「顔が良くって、華があって、学校でもきっと目立つような人達だろう。僕みたいに、教室の隅っこで一日中漫画を読んでいるような、オタクでないことは確かだ」
妙に、自虐的な言い方だった。
サトシに目を向ければ、いつになく寂しげな目でステージをじっと見つめていた。
さっき食い過ぎたから、ダサいトレーナーの下の腹がパンパンだ。
せっかく勢いに乗って東京までマカオンを見に来たのに、直前になって覇気を無くしたサトシを見ていたら、無性にイライラして来た。
「サトシ。お前はなんで、漫画ばかり読んでるんだ?」
「は? 好きだからに、決まってるじゃん」
「マカオンだって一緒だよ」
「? どういう……」
「バンドが好きだから、やってる。それだけだ。好きなことやってるから、かっこいいんだ。デブでもオタクでも、それがマカオンならかっこいい。そう思わないか?」
するとサトシが、小さな目を目一杯開いて俺を見た。
一瞬の沈黙が、見つめ合う俺達の間を流れる。
ちょうどその時、ステージ上に司会の人が出て来た。
司会の人は少しだけマカオンの紹介をした後で、大きく声を張り上げた。
「ザ・マカオンの皆さんです!!」
キン、とマイクが音を鳴らし、途端にわっという大歓声が場内に湧き起こった。
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