主人公はクリニックの精神科医をやっている。顔を隠すためにウサギのマスクを頭からすっぽり被っているが、その腕は確かだ。クリニックに通う患者たちに向き合い、問題を的確にとらえ、解決に導いていく。
この物語の患者たちが、『不思議の国のアリス』になぞらえられているのも、この作品の魅力の一つだ。例えば突然の睡魔に襲われ、眠ってしまう少女はネズミさんという名前で、ウサギマスクの主人公に懐中時計のねじを巻く約束をする。傷だらけのアリスは、家族に虐げられ、歪んだ愛情で満ちた家を飛び出す。他にも「普通」が分からない少年や、何をやっても失敗ばかりする男性など、クリニックには連日個性的な患者たちがやって来る。
そして、主人公もウサギのマスクを外すための行動に出る。主人公がウサギのマスクを被っているのは、何も患者を和ませるためではない。ある事情で、主人公は顔を隠して生きてきたのだ。その事情とは?
いつか、素顔を晒して、皆で公園でお茶会がしたい。
これは、主人公が唯一願った事だった。
本当に面白くて、この作品がもっと評価されることを望みます。
是非、是非、御一読ください!
他に言葉は要りません。素晴らしいです。
ご自身も精神科にお勤めの方なのでしょうか?
そうであれば日々の賜物であり、それを物語としてまとめあげた手腕に拍手喝采です。私にはとても同じことは出来ず、しようとも思えません。発想すら出来ぬ次第です。
もし医療とは無縁のところにいらっしゃる方なら、その検索力と思慮深さ、そして創造性に拍手です。ご紹介いただきありがとうございました!星★を3つしか送れないことが残念でなりません!!
文章がとても読みやすく、それぞれの登場人物の心情の描写も丁寧で、そしてハッとさせられます。まだ途中なので、続きも楽しみに読ませていただきます。
精神医療物語という書くのが難しい題材ですが、病気との関わり方、人と人の関わり方が丁寧に書かれており、非常に完成度が高いです。
主人公は、初田ハートクリニックの院長・初田初斗。ウサギの被り物をした変人と見られていますが、精神科医として患者と向き合う姿勢は非常に真摯です。
医療に関する小説・ドラマ・漫画は多いですが、本作は精神医療にのみ的を絞り、かつ、(他の方も言及している通り)登場人物のキャラクターが個性的な作品となっているため、肩肘を張らずに読むことができます。
個性的といっても、無理なキャラづけではなく、初田先生のウサギの被り物にもしっかりとした理由があります。
精神関係の病気は、中々他人には理解されないもの……、家族でさえそれは同じです。まして、職場の上司・同僚や学校の同級生など、理解してもらい配慮までいくまでは非常に大変です(経験談)。作中でもそれは顕著に描かれており、それを解決するために初田先生は能動的に動きます。
理詰めと同時に患者に寄り添う初田先生と、先生が抱える問題に寄り添う受付のネルさんの関係も、ケース2で語られるように納得のいく間柄です(いわゆる、"てぇてぇ"という関係です)。
作中では、初田先生が患者と向き合う姿勢や、患者の家族との関係、患者が己の内面を見つめ知らなかった自分を発見するなど、誰かとの関係が織りなす心の機微が描かれており、精神医療物語として非常に完成度が高いと思います。
(もちろん、物語ですので「現実はここまでうまくいかない」と感じるかもしれませんが、それを差し引いてもドラマ性十分の作品かと思います)
埋もれるには惜しい作品ですので、是非、ご一読ください!
ウサギの被り物をした精神科医・初田。変わり者の彼のクリニックには様々な患者がやってくる。目に見えない、「普通とは違うもの」を抱えて迷う彼・彼女たちを導くため、初田は患者たちやその家族と向き合っていく。
連作短編的な形式の精神医療モノです。パーソナリティ障害などの精神障害、投影法・行動療法などの専門的な内容を含むのはもちろんですが、メインは治療過程で見えてくる葛藤や成長などの人間ドラマにあると思いました。
患者はクリニックに「つらい」と泣きながら訴えにくるのではありません。なぜ受診する必要があるのかわかっていなかったり、自分が傷つけられていることに無自覚だったりします。さらには、問題となるのは患者本人だけではありません。周りの環境から悪影響を受けている場合があり、その悪環境の中にも「普通とは違うもの」が潜んでいます。
初田はそんな「普通」の通用しない相手たちと向き合い、決して患者のことを見捨てません。
しかし、彼がそうするのは、「人を救いたい!」等の熱い正義感に駆られて、というわけではありません。彼自身も「普通とは違う」変わり者であり、彼独自の感性をもっているのです。
患者を理解し、受け入れるクリニックの雰囲気はあたたかく、優しく、安心感を覚えるものであり、それは真実でもあるのですが、それとは別に、来談者中心療法といった理論に基づくものでもあるのだろうと個人的には感じました。
私はそんな患者や初田たちに、すごく感情移入することができました。あたたかい気持ちになったり、ジンとしたり、ヒヤッとしたり、クスッとなったり。応援せずにはいられませんでした。
読んでいて何度も浮かんだのは「鏡」のイメージです。他人の中に自分を見出だしたり、鏡に映ったように反対であったり……他人とは鏡なのだと、そんな印象を抱きました。
クリニック関連のシーンの他に、ウサギの被り物に纏わるエピソードも絡み、そちらからもまた、雰囲気の違ったエンタメ要素を感じることができました。
ひとりでも多くの方と感想を共有したい、魅力的な作品です!
小説として面白いのはもちろん、ドラマ、漫画、アニメとしても見てみたいです。
今後のエピソードもとても楽しみです!
(※「ケース3」の「閑話5」までを読んでのレビューです)
カクヨムは他人の評価の数が全てでないことをたまに教えてくれます。
こういう作品のことです。
精神科の個人院を舞台に、あらゆる患者の治療を描く本作。序盤、医療ドラマや医療漫画、医療小説では一般的な展開かと思われますが、この作品が他作品と一線を画すのは登場人物のキャラクターが個性に溢れていること、絵本のような芸術性を秘めていること、それから全体を通したドラマが背後で進行していることです。
芸術面を表に出した描写がたまに出てくるにも関わらず、文体はやさしめで読みやすく、人間ドラマで重くなりがちな雰囲気も非現実的なキャラクターでうまい具合に緩和してくれています。
感動です。早く本の形で手をとりたいと思わせてくれました。
こんな素敵な作品を教えてくださり、本当にありがとうございました。