4 マチオと初心者ダンジョン2

そろそろレベルが上がってほしい。

いや。マジで。

ただのスケルトン相手に苦労するのはさすがにちょっと恥ずかしいな・・・。

散らばったスケルトンの骨から喉仏を探しながらマチオは考えていた。


人間の骨の場合、大体200個ぐらいあると聞いたことがある。

その中から喉仏の骨を探すのはなかなか大変だ。

「見つけました!」

ルイーゼが喉仏を頭の上に上げニコッと笑った。

それからしばらくの後、マチオも無事見つけ、ルイーゼに手渡した。

「スケルトンは骨がバラバラになると、探すの大変だな。」

「そうですね。スケルトン系は大して討伐報酬はおいしくないですし、探すのも手間がかかるんで、討伐報酬は無視してドロップ品だけを売る人のほうが多いらしいです。」

「そうなのか。とは言え、ドロップ品は今持って行くと邪魔になるから、そっちの隅にまとめて置いておいて、帰りに持って帰ろう。」

マチオは、ショートソード2本を通路の壁に立てかけた。


「あと少しでレベルが上がりそうな気がするから、 もう少し探索したいのだが、いいかな?」

「もちろんです!まだ呪文も撃てますから、大丈夫です!」

マチオは頷いた。

「じゃあ行こうか。」


途中でスケルトン1体と出会ったが、マチオは落ち着いて接敵し、木刀で粉砕した。

「すごいな。なんかよくわからんが、ショートソードなんかより圧倒的に強いぞ。」

「他の人が見たらびっくりしますよ。これ。

 目の前で見てるわたしも信じられないですもの。」

ルイーゼが喉仏を拾いながら言った。


「ちなみに、一般人のレベルってどれくらい?」

ルイーゼは少し考えて答えた。

「そうですね・・・。私ぐらいの歳で普通に生活している人であれば、3とか4ぐらいじゃないかと。

 ただ、街の自警団とかに参加している人や、狩猟で生活をしている人とかは、レベルが20以上の人とかは結構いますね。

 冒険者についてはあまり詳しくないですけど、Sランクの冒険者とかには500超の人がいるとか。」

「はぁ。やっぱりオレは一般人以下か・・・。」

マチオが溜息をついた。


2人は広間の入口に辿り着いた。

広間とは言ってもボス部屋ではない。

ボス部屋は扉があり、戦闘中は扉が閉まり出入りができなくなるとのことだった。

つまり、ここはただの広間。

2人は入口の陰から静かに覗き込むと、そこには先程までのスケルトンより一回り大きい、ロングソードと盾を持ったスケルトンが1体いた。

「たぶん、スケルトンソルジャーです。どうします?」

ルイーゼが小声で言う。

「今のオレには格上だと思うが、こいつがあれば何とかなると思う。

 最初の先制攻撃を頼めるか?

 その間に間合いに入る。」

「分かりました。お任せを。」

「じゃあ、魔法発動に合わせて突入する。」


ルイーゼが詠唱を開始する。

スケルトンソルジャーはまだこちらには気づいていないらしく、こちらに背を向け、広間の中心に立っている。

マチオがルイーゼを見ると、詠唱が終わったルイーゼが頷いた。


マチオが入口の陰から飛び出し、全速でスケルトンソルジャーに向け走る。

「ファイアボール!」

同じく広間に侵入したルイーゼが魔法を発動させる。

スケルトンソルジャーに向け構えた杖から火の玉が発射される。

走るマチオの横を火の玉が通り過ぎる。

振り向いたスケルトンソルジャーは、ファイアボールを察知したらしく、素早く左手に持った盾を構える。

ドーン!

マチオから数メートルというところで、ファイアボールが着弾するが、

構えた盾に防がれ、ひときわ大きな炎を上げ爆散する。

ほんの一瞬であるが、スケルトンソルジャーの視界を奪う。


ここ!

マチオは間合いに入ると、両手で持った木刀を斜め上に切り上げる。

が、スケルトンソルジャーは1歩後退り、木刀はあばら骨を掠め空を切る。

マチオとスケルトンソルジャーの間で消えかかる炎の向こうで、スケルトンソルジャーの真っ暗な眼腔がマチオを見据えていた。

スケルトンソルジャーが素早くロングソードを振り上げ、そのまま振り下ろす。

ガキン!

マチオは振り抜いた木刀を引き戻し、

とっさに木刀の背を使い、頭の上でロングソードを受ける。

衝撃でぐっとマチオの腰が沈む。

スケルトンソルジャーがもう一度ロングソードを振り下ろす。

「くっ!」マチオは歯を食いしばり、両手で木刀でロングソードを押し上げる。

そのまま返す刀で上から下に木刀を振り下ろす。

木刀は胴体には届かなかったが、ロングソードを持った手首に直撃し手首を粉砕した。

音を立ててロングソードが地面を転がる。

が、無防備になったマチオに、スケルトンソルジャーが力任せに盾を叩き付けた。

「ぐはっ!」

無防備の上半身にまともに盾を食らい、マチオが吹き飛ばされ地面に転がる。

げほっと大きく咳をし、口から血を吐き出す。

ソルジャースケルトンがとどめを刺すべく、盾を振り上げ倒れたマチオに近づく。


「ファイアボール!」

ルイーゼが最後のファイアボールを放つ。

察知したスケルトンソルジャーは振り上げた盾を下げ、ファイアボールを受け止める。

爆発音とともに炎が爆散する。


この一瞬が明暗を分けた。


マチオは体を起こしながら木刀を振り抜く。

木刀はスケルトンソルジャーの左すねから右脚に当たり、事も無げに粉砕。

続けて大腿骨までまとめて粉砕した。

盾を燃やしながら音を立てて地面に倒れこむスケルトンソルジャー。

カタカタカタと音を立てて動こうとするが、右手と両足が無い状態では動くこともままならない様子であった。

マチオはゆっくりと立ち上がると、首元にとどめの一撃を放った。


「マチオ様!大丈夫ですか?!」

「ああ。さすがに強かったな・・・。最後はルイーゼが助けてくれなかったら危なかった。ありがとう。」

「怪我はないですか?」

ルイーゼに聞かれた時、

ピロリロリン♪

頭の中に音が鳴り、ステータス画面が表示された。

「お、レベルが上がったみたいだ。」


名前:マチオ

職業:農民

レベル:4

HP:20

MP:15

STR:10

DEX:7

SPD:4

魔法:なし

スキル:なし

武器:木の剣(攻撃力:1+※▼☆)

防具:布の服(防御力:1)

   布のズボン(防御力:1)

   布の靴(防御力:1)


今まで感じていた胸の痛みがスッと消える。

レベルアップでHPとかと一緒に怪我も回復したみたいである。

「お。スピードが1上がった。」


「あ、わたしもレベル上がりました!」

ルイーゼが笑顔で言った。


「MP全快しましたけど、どうします?」

「そうだな。2人ともレベルアップできたし。

 無理はよくないから今日のところは一旦帰ろうか。」

「そうですね。あ、買い物もしたいですしね。」


ルイーゼが喉仏を探すあいだに、マチオは落ちているロングソードと盾を拾うと、

ロープで縛り背中に担いだ。


「どのくらいの稼げたかな。」

マチオが帰り道を歩きながらルイーゼに聞いた。

「今日1日で4、5日分ぐらいの宿泊費と食費ぐらいは稼げたんじゃないかなと

 思います。

 ひとまず金銭的な当面の危機は避けられたんじゃないかと。」

「今日倒したモンスターは復活するのか?」

「ええ。ダンジョンにもよるらしいですが、

 1週間程度で新しく生まれるらしいです。

 なので、それまでに潜れば楽に先に進めますね。」

「知らないことだらけだな。」

「マチオ様は記憶が無いんですからしょうがないですよ。

 分からないところは、わたしが教えたりフォローしますんで。どんどんわたしを頼ってくださいね。」

ルイーゼがえっへんと胸を張る。


マチオは途中に置いてあったショートソードを回収すると、

1本を腰の鞘に入れた。

「?それ使うんですか?」

ルイーゼが不思議そうに言った。

「いや。使うつもりはないけど、見た目が木刀だけだと・・・さすがに・・・ね。」

「あー。そういうことですね。納得です。」


2人は出口に向かって歩く。

モンスターに出会うことも無く、無事にダンジョンの入り口を出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る