2 マチオと冒険者登録
夕刻、無事にマチオ達はガレの街に到着した。
門を自警団が警備しており、
マチオたちは街入り口の検問所で軽く身体検査を受けた。
街道でゴブリンに襲われたことを伝えると、巡回を強化すると言った。
マチオたちは通行証を受け取ると、門をくぐり街へ入り、行商人たちとはそこで別れた。
ルイーゼ曰く、この街はこの近辺では大きな部類の街のようで、
街に入ってすぐにある商店街は人でごった返していた。
大きい人、小さい人、獣人といった様々な種族の人たちが忙しく歩き回っていた。
マチオが物珍しそうにきょろきょろと周りを見ていると、
「マチオ様、こちらです。」
ルイーゼがマチオの袖を引っ張った。
ルイーゼの横を歩くマチオにルイーゼが言った。
「冒険者登録の時に、出身を書かないといけないと思います。
さすがに出処不明だと登録してもらえないと思うんで、わたしと同じレオネル村出身という事にしておきましょう。
あとは、わたしが適当に取り繕いますので。」
「詳しいな。」
「3年前に姉が冒険者登録する際に一緒に来たんで。
あなたも3年後に来ることになるから、しっかり見てなさい。って言われました。」
歳の割にすごくしっかりした娘だ。
マチオは素直に感心した。
ちなみに、マチオの現在の身なりは、
腰にゴブリンが持っていたショートソード。
背中に革ひもで縛った木刀を背負っていた。
しばらく歩くと、剣と本が書かれた看板がぶら下げられた建物の前に辿り着いた。
「ここが冒険者組合です。冒険者登録だけ先に済ませてしまいましょう。」
ルイーゼが扉を開け中に入る。マチオも後に続いた。
受付がある広い部屋は、夕方のせいか閑散としていた。
ルイーゼが受付に向かい、座っている受付嬢に声をかける。
「すみません。冒険者登録をしたいんですが。」
受付嬢は2人を見ると、
「新人さんですね。冒険者組合にようこそ。
では、こちらにご記入お願いします。」
と言って書類を差し出した。
書類を書く段階で、マチオは全く字が読み書きできない事に気が付いた。
「ルイーゼ。ごめん。オレ全く読み書きできないみたいだ・・・。」
「読み書きできない人はそれなりにいるので、気にしなくて良いですよ。
これから少しずつ教えますんで、おいおい覚えればいいと思います。」
ルイーゼはそう言うと、マチオの分の書類も記入した。
その後の手続きは滞りなく進んだ。
「ルイーゼさんはレベル4。マチオさんはレベル2・・・ですね。
おふたりとも、一番下のF級からのスタートになります。」
そう言うと、壁にある依頼ボードを指差した。
「あそこに掲示される依頼は、ご自身のランク未満の依頼しか受けられませんのでご注意ください。
上位ランクの人と一緒に行く場合は、ご自身の1つ上のランクの依頼まで参加することができます。
これは、事故防止のためのルールなので、ご了承ください。
あと、依頼とは別にご自身でダンジョンに潜ったりする場合は、完全に自己責任になりますのでご注意くださいね。」
受付嬢はカード2枚をテーブルに置く。
「こちらが冒険者カードです。
街に入るときとか、身分証として使うことができます。
依頼を受ける際や報酬を受け取る際にも必要ですので、絶対になくさないように気を付けてください。
あと、ご希望があれば冒険者カードを使った口座も作ることができますので、作るときは仰ってくださいね。」
口座。銀行口座のようなものかな?
なんにしても、今は手持ちの現金は全く無いから不要だな。
ルイーゼはカードを取ると、1枚をマチオに手渡した。
マチオはカードを受け取り、上着の内ポケットに入れる。
「ちなみに、どうしたら昇級できるんだ?」
マチオが受付嬢に聞く。
「そうですねぇ。
達成した依頼の数。
Fランクの場合は依頼を20回達成したら、昇級する資格が得られます。
ちなみに、ご自身のランクより低い依頼の場合は達成してもカウントされませんのでご注意を。
あとは、何か特別な依頼を達成したり、十分な功績が認められた場合は、達成した依頼の回数に関係なく、トレーナーや組合長の権限で昇級する資格が得られる場合があります。
まぁ、こちらは滅多にないですけど。
どちらの場合も資格を得たうえで、組合のトレーナーや組合長と面接をして、問題なければ昇級します。
なので、まずはご自身の身の丈にあった依頼を地道にこなしていくことをお勧めします。」
「わかった。ありがとう。」
「あと、ガレに来る途中で、ゴブリンを2匹倒したので、報酬貰えますでしょうか。」
ルイーゼが腰に下げた袋から、油紙に包まれたゴブリンの耳を取り出した。
「かしこまりました。
これは・・・、通常種のゴブリンですね。1匹当たり銅貨5枚になります。
では、身分証・・・、冒険者カードをこちらに。」
ルイーゼが冒険者カードを石板の上にかざすと、カードがうっすらと緑色に光った。
「はい。確認できました。こちらをお受け取りください。」
受付嬢は、銅貨10枚を机に置いた。
「ちなみに、この辺りに初心者でも行けるダンジョンはありますか?」
ルイーゼが聞いた。
受付嬢はテーブルの上に広げている地図を指差した。
「ここ。レム洞窟ですね。階層は3階層。
1階層であれば、レベル5ぐらいが適正なので、今のおふたりでもなんとかなるかと思います。
なので、まずは1階層でレベルアップを行っていただくのがよろしいかと。
2階層からは適正レベルが8以上に上がるので、レベルが上がるまでは行かないほうがいいと思います。
このダンジョンは最近は潜る人もほとんどいないので、すいていると思いますよ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
ルイーゼは頭を下げた。
2人が組合を出ようとしたところで、受付嬢が声をかけた。
「あのぉ、それ。その背中のは・・・。」
「ああ。木刀ですね。これが何か?」
「いえ・・。その木の剣・・・ボクトウですか。
まさかそれ武器として使うんじゃないですよね・・・?」
・・・・・・
「・・・まさか~。木の剣ですよ。武器として使えるわけないじゃないですか。」
マチオが答える。
「ですよね~。木の剣って子供のおもちゃか、訓練でしか使いませんからね~。
そんな大事そうに木の剣を持っている人はじめて見ましたので。
ハハハハ・・・。」
受付嬢が笑う。
「ですよね~。ハハハハ・・・(汗)。」
「すみません。引き留めてしまって。
もしダンジョン行かれるのでしたらお気をつけて。」
2人は頭を下げると無言で冒険者組合を出る。
マチオはハァと溜息をつく。
「何となく分かってたが、木の剣って武器としては見られてないみたいだな。」
「ですね。今日実際に目にするまでは、わたしの認識もそうでした。
・・・・
でも、さすがにそのままだと目立っちゃいますね。
明日、ダンジョンで稼いだら、何か適当な入れ物でも買いましょうか・・・。」
「だな。」
「はい。」
ルイーゼがゴブリンの討伐報酬の銅貨10枚をマチオに手渡す。
「さすがに全部は・・・。」
マチオが返そうとすると、ルイーゼがマチオの手をそっと握った。
「私は少しですがお金を持ってますので大丈夫です。
それはマチオ様が使ってください。
それに、それが無いと今日、宿にも泊まれませんよ。」
そうか。家無いんだった。
「・・・恩に着る。で銅貨10枚で足りるのか?」
「うーん。多分。一番安い部屋なら・・・。」
その後、宿で聞いたら、一番安い部屋で銅貨15枚。
ルイーゼと二人で粘り強く交渉し、
倉庫の一角の藁の上ならという事で、銅貨10枚を支払った。
夜露をしのげるだけでもありがたい。
なんか、いろいろあった1日だったなぁ・・・。
異世界転生1日目。
マチオは藁にまみれながら眠りに落ちた。
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