第40話 メロのこれから
ぐぅーーー
メロをベッドへ運んだキリエは一緒に眠ってしまったようだ。
大きな音で2人は目を覚ました。
「お腹空いたんですのね。
そういえば。メロちゃんはなにを食べるんですの?」
「?...ゴ...ハァン?」
「そ、そうですわよね。」
「植物だし水とかでいいんじゃないか?
ああ、ここのメロンは小動物も食べるんだっけか。」
「とりあえず私と同じものでも食べさせてみますわ。」
キリエはメロを連れて部屋を出た。
一階に降りると受付には誰もいなかった。
何やら奥の部屋から音が聞こえたのでキリエたちはそちらへ向かう。
コンコンッ
キリエが扉を叩くと中から声が聞こえた。
「嬢ちゃんかい?
ちょうどよかった。入っておいで。」
扉を開けると美味しそうな匂いが漂ってきた。
「ご飯の支度をしてたのさ。
テーブルに運ぶのを手伝っとくれ。
嬢ちゃんたちも食べるだろ?」
「いいんですの?
わざわざ作ってくださったんですわね。」
「ああ、旦那もそろそろ帰ってくるだろうしついでだよ。
それにこの町は食堂なんてのもないからね。
冒険者を支えるのがギルドの役目だしね。」
「これがほんとに冒険者ギルドか?
悪どいやり方で冒険者から金を搾り取る悪徳組織じゃないのかよ。」
「ギルドがそこまでしてくださるんですのね。」
「ああ。あたしも元は冒険者だからね。
できるだけ力になりたいのさ。
それにね、ギルドが金にがめついのは知ってたけどさ。
こんな町にまで支部を置いたり意外とギルドも冒険者のためにお金をかけてるんだよ。
ぼったくりまがいの登録料もあながち妥当なのかもってこの仕事をしてから思い始めてるわね。」
「そういうものなんですわね。」
「いや、こいつもギルドの尖兵だぞ。
きっと洗脳されてるに違いない。」
キリエたちは料理を運ぶのを手伝った。
そして3人で夜ご飯を食べ始めた。
「旦那さんは待たなくていいんですの?」
「ああ、いいんだよ。そのうち勝手に帰ってくるからね。
ところでそっちの子は...」
お姐さんはご飯を食べるメロを見て言葉を詰まらせた。
骨つき肉を掴むメロの手は緑色をしていて、およそ人とは思えなかった。
「え、えぇっと。これはその、あれですわ。」
キリエはなんとかごまかす方法を考えている。
「何か病気なのかい?
それとも...魔物...?」
「と、とりあえず。精霊術ってことにしておけ!
精霊術で魔物を使役してるとかなんとかさ。」
アクリョーの助言を聞きキリエは冒険者カードを取り出した。
「そうですわ!
私、精霊術師なんですわ!
この子は私の精霊術で契約をした魔物なんですの。
元々人は襲わないですし、今は私の言うことを聞くので何も問題ないですわよ!?」
「そ、そうなんだねぇ。
精霊術師だったのかい。
魔術師だろうとは思ってたけど精霊術師かい。
確かに精霊術師は変わった魔法を使うとは聞くけどねぇ。
魔物を従えることもできるんだねぇ。」
お姐さんは驚きつつもなんとか納得はしていそうだった。
「そ、そうなんですわよ。
精霊術師はそれぞれ違う魔法を使うので、きっと私にしか使えない魔法ですわ。」
「そうなんだねぇ。
あたしが会ったのは"魔法を跳ね返す魔法"と"どんな鍵でも開ける魔法"を使う精霊術師だけだね。
2人ともちょっと変わった人だったけどね。」
「どっちもかなり使えそうな魔法だな。」
「そんな魔法もあるんですのね。
...お姉様は理解があるようですけど、
やっぱり魔物を連れて町へ入るのは難しいですわよね。」
キリエはこのままメロを連れて行くことがメロのためになるのか不安になってきた。
「どうだろうね。
確かに人型の魔物を連れてるとなると、怖がる人の方が多いかもねぇ。
だけど、馬の魔物だったり家畜として魔物と共存してる人だっているんだ。
きっと不可能じゃないと思うよ。
まあ魔物によくない思いを持つ人の方が多いからできるだけバレないようにした方がいいとは思うけどね。
その子の場合、手袋とか服装で見た目を工夫すれば人間に見えるんじゃないかい?」
客観的な意見を聞けてキリエは少し安心した。
「少し気が楽になりましたわ。
...ちなみに、この町には洋服屋さんなんてないですわよね?」
「食堂もない町さ。残念ながらないね。
そういうのはたまにくる行商人から買うくらいだね。
まあ、この街にいる間はあまり気にすることないさ。
旦那にも町の人にも話はしておくよ。
それにこの町の人たちは無闇に魔物を倒すべきじゃないって考える人が多いからね。」
「...感謝しますわ。」
「カァ...ンヤ。」
「そういう時はありがとうでいいんじゃないか?
あ、り、が、と、う。」
「アァ...リガ、ト...ウ!」
「ふふふ。可愛い子だね。
こんな子なら誰も怖がったりしないさ。」
3人はその後も食事を続けたが、食べ終わるまでに旦那が帰ってくることはなかった。
キリエたちは食器の片付けなどを手伝うと部屋に戻って明日の仕事に備えた。
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