旅立ち
第17話 キリエと少女
ヨウニーの町を出たキリエたちは北西に向かって歩みを進めていた。
「目指すはヒコウの町だな。
あそこはヨウニーよりも栄えたところみたいだし冒険者ギルドもたぶんあるだろ。
どんな町なんだろうな。」
道中、悪霊はキリエに頻繁に話しかけた。
「地図では見たけど、どれくらいかかるんだろうな。
キリエは町の外に出たことないからわからないよなぁ?
箱入りお嬢様だからな。」
ツッコミを待って煽ってみたりもした。
キリエは黙々と歩いている。
まだあまり人と話す気にはならないのだろう。
それでも悪霊は話しかけ続けた。
「案外魔物は少ないんだな。
ここまで1匹も出会わないとは思わなかったぜ。」
キリエたちがヨウニーを出てから森の中を歩き1日が経っていた。
森といっても道がある。
道を通るのは冒険者か冒険者の護衛をつけた馬車がほとんどだ。
魔物も冒険者にやられることを学習しているのか道にはあまり近づかないようだ。
「あんまり遠いと食糧も心許なくなってくるよな。
せめて食える魔物でもいればいいけど。」
「キャーーー!!!」
道の先から叫び声が聞こえた。
キリエたちは声の元へ走り出した。
向こうからも人が走ってくる。
その後ろには魔物が3匹。
「横へ避けなさい!!」
キリエの指示に従い逃げてきた人は道から森の方へ飛び込んだ。
「ファイアボール!」
巨大な炎が正面の魔物を3匹とも燃やし尽くした。
キリエは自分が放った魔法を見て呆気に取られていた。
「ありがとうございます!!
...もしかして、キリエ様ですか?」
「...ええ、そうですわ。」
「やっぱりそうでしたか。
本当にありがとうございます。
ほら、あなたもお礼を言いなさい。」
女性は自分の後ろに隠れる幼い少女にそう言った。
少女はキリエを黙って見つめていた。
キリエと同じような目をして黙って見つめていた。
「娘がすみません。
いつもは挨拶もできる明るい子なんですけどね。
あんなことがあったばかりですから...」
「いえ、気にしなくていいですわ。」
キリエには娘の気持ちがわかる気がした。
「キリエ様はどちらに向かわれているのですか?」
「ヒコウの町へ行こうと思っていますわ。」
「そうですか...
あの、助けていただいて図々しいですが、
途中にあるウーラカ村まで一緒に来ていただけないでしょうか。
もちろん、村に着いたらお礼はいたします!」
ウーラカ村へ行くならヒコウの町へ行く途中、少し寄り道をすることになる。
だが大きな目的もなく旅をしているキリエたちにとってはどうでもいいことだった。
「ええ。もちろん、よろしいですわ。」
「ありがとうございます。」
ウーラカ村へはあと2日ほどで着けるらしい。
キリエたちはウーラカ村まで親子の護衛することになった。
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