第14話 どうしたい

「エクソシズム!!」


眩しい光の中、悪霊は部屋の外へ急いで逃げ出した。


(...生きてる?

いや、もう死んではいるんだけどさ。)


逃げ切れたからなのか効かなかったのかはわからない。

たが、悪霊は光が収まった後も確かに存在していた。


(とはいえこれからどうしようか。)


深く考える必要はない。

今まで通りお嬢様と軽口を叩き合い楽しく過ごせばいいのだ。


...本当にそれでいいのだろうか。


(俺は...どうしたいんだよ...)


お嬢様との時間はなんやかんや楽しかった。


だがそのせいでお嬢様は周りから奇異の目で見られ避けられている。

お嬢様自身が躍起になって除霊しようとしていたのも事実だ。


(幽霊なら大人しくしてるのが正解だよな。)


この日から悪霊はお嬢様の前には2度と姿を見せないと決めた。


とは言ってもお嬢様から離れることはできない。


悪霊は時には別の部屋に隠れたり、時にはお嬢様の真後ろにべったりとくっついたり、時には地面に潜り続けたりと様々な方法で隠れて見守り続けた。


悪霊が姿を見せなくなってしばらく経った夜、お嬢様は1人で泣いていた。


その日だけではなく両親が帰らない日は泣いていることが多かった。


ある時、精霊術の先生がやってきた。


悪霊はバレないように話を聞いて精霊術を一緒に特訓していた。

だがやっぱり魔法は使えなかった。


暇な悪霊はずっと魔術の特訓を続けていたがそちらも全く成果が出ていなかったのだ。


先生が来てからお嬢様が1人で泣くことは無くなった。


先生が出ていってからも泣いたのは見たことがなかった。

お嬢様も12歳になり少しは大人になったのだろう。


立派に育つお嬢様を見て、悪霊は自分の選択が間違いではなかったと確信した。


そうして決めた通り、隠れてお嬢様を見守り続けた。


お嬢様が15歳のある日、事件が起こった。


町が大量の魔物に襲われた。


だが、悪霊には見守ることしかできなかった。


お嬢様がお母様の後を追い危険な魔物の群れのところへ行ってしまった。


だが、悪霊には見守ることしかできなかった。


お嬢様たちが魔物を倒し安堵している時、屋敷の方に大きな魔物が来ているのが見えていた。


だが...悪霊には見守ることしかできなかった。


お嬢様の目の前でお母様が死んでしまった。


だが...悪霊には...


(見守ることしかできないのかよ!!)


(俺は、どうして...

俺に何ができるっていうんだよ!!)


(俺は...どうしたいんだよ...)


悪霊は思い出した。

お嬢様の前に姿を見せなくなった理由を。


(そうだ...俺は、お嬢様の幸せを想って。

この選択でお嬢様が幸せになると思って決断したんだ。)


(俺はお嬢様の、キリエの幸せを守りたかったんだ!)


キリエの目の前に魔物がやってきた。

魔物は右手を振りかぶった。


だが、悪霊は...


(何もできないかもしれない。

でもキリエを守りたい!!)


「キリエ!!

「ファイアボール!!」


キリエは恐怖に怯えながら最後のファイアボールを放った。


その炎は魔物よりも遥かに大きかった。


炎によって魔物も屋敷だったものの半分も消し飛んでいた。


「...悪...霊?」

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