第7話 理由

「うーむ。

やはりお嬢様には魔術の才能が...」


「当たり前ですわ!!お母様の娘ですのよ!」

お嬢様は得意げにじいやのほうを見た。


「い、いえ。

才能が...その、あまりよろしくないようでして...」


お嬢様は得意げな顔のまま固まっている。


「な、7歳という年齢で魔法を発動させているだけでもなかなかなできないことですぞ!!

(家庭教師をつけられない家では魔術を学ぶのが早くても12歳頃だからですが...)

ただ、魔術の実技演習を始めて3ヶ月でできるようになったことが小さな火を起こすことだけというのはちょっと...」


お嬢様が勘違いしていたのにも理由がある。


魔術の演習のときにはいつも隣で悪霊も一緒に演習を受けていた。

お嬢様が初めて火を起こせた日にも悪霊はまだ魔術を使えずにいた。

もちろん今だって使えるようにはなっていない。


演習が終わり部屋に戻るといつも悪霊をバカにして自分は優秀だと悦に浸っていたのだ。


「きょ、今日の演習はここまでにしましょう。

きっとお嬢様は奥様の魔術の才よりも旦那様の剣術の才を強く引き継いでいるんでしょうぞ!

明日からは剣術の時間の方を増やしていきましょう。」


じいやがフォローするために言ったことは厳密には正しくはなかった。


生まれつき総量が決まっている魔力が少ないお嬢様に魔術を練習させても効果が薄いのは正しい。

剣術ならしっかりと訓練すれば誰でもある程度までは戦えるようになるので、重点的に学ぶべきだというのも正しい。


だが、お嬢様は剣術の才に恵まれているわけでもなかった。


とぼとぼとお嬢様は自分の部屋に戻って行った。


「な、なぁ。そんなに落ち込むことないって。

俺なんてまだなんの魔法も使えないんだぜ?

火を起こせるだけだって凄いことじゃないか!」


ベッドの上で体育座りするお嬢様に悪霊は語り続けた。


「料理するときだって魔法で簡単に火を起こせるし、野営するならきっと必須スキルだぜ。

小さくたって火なんだから着火さえすれば燃え移って立派な攻撃になるだろうし...」


「そんなんじゃ意味ないんですわ!!

お父様やお母様のようにこの町を守れるくらい強くないと...意味がないんですわ!!」


「...」


「その...あれだ...

家のことならさ、強いお婿さんでも迎えればなんとかなるんじゃないか!?

それこそ火の魔法で料理の腕を磨くとか花嫁修行してさ...!」


「そんな話してないですわ!!」


(うーん。どうしたものか。

一人っ子だしこの家を継ぐために強くなりたいのかと思ってたがそういうわけではないのか...)


(ああ、そうか。

町を守るため家を出ることが多い両親と、ただ一緒に居たいだけなのか...)


悪霊はかける言葉を失ってしまった。

自分にできることはないと悟った悪霊は、

今は1人にしてあげようと部屋を出て行った。

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