第6話 無駄な知識

お嬢様が取り憑かれてから1週間、悪霊はこの世界についての知識を集めていた。


「どうやらこの町"ヨウニー"はベル・フォークという男が治めているみたいだな。

そしてその妻アカネ・フォークとの間には、

わがままでおてんばなキリエ・フォークという一人娘がいると。」


「聡明で活発で可愛いの間違いですわよ。」


お嬢様の戯言は無視して情報の整理を続けた。


「この大陸は大きく4つの勢力に分かれているらしい。

西のガトー王国、北のキュウビ帝国、南のビーストベルト連邦、東にはいくつかの亜人たちの集落が点在する湿地帯が広がっている。

あとはどこにも属さない中立都市シカトラというところと北東には極寒監獄という生き物が住めない未開の地もあるみたいだ。」


「そして今いるヨウニーという町はガトー王国に属しているが南の辺境で、山を隔ててビーストベルトに隣接しているようだな。」


「山からは魔物が降りてくるんですわ。

そのせいでお父様たちは仕事だと言って可愛い娘を置いてほとんど家には帰らないんですわよ。」


(この娘がこうなったのは父への寂しさからなのかな...)


「ま、世界について知ったところで

ここから出られないなら意味ないんだけどな。」


「そうですわね。

すぐにあの世へ送り返してあげますわ。」


いつものように軽口を叩くお嬢様だが

普段からは考えられない物を手にしていた。


「勉強嫌いなお嬢様が昨日から何読んでるんだ?

本当に聡明なお嬢様になろうと改心でもしたのか?」

そう言って悪霊はお嬢様の読んでいる本を覗き込んだ。


__いかがだったでしょうか?

ここまで自分で行える除霊方法について紹介しましたが、どれも必ず効果があるとは限りません。

1番の方法はズバリ浄化魔法が使える教会に依頼することです!


「まとめサイトかよ!

長々薄い内容を書いて最後に一言でまとめるけど結局当たり前のことしか書いてないまとめサイトかよ!

てかそんなに俺が嫌だったのかよ!」


「フンッ。せいぜい余生を楽しむがいいですわ。」

「どうせどれも意味ないだろうから好きにしろよ!」


パタンと本を閉じるとお嬢様は嬉しそうに部屋を出て行った。


_______翌朝

目を覚ましたお嬢様は寝ぼけ眼で部屋を見渡した後、ガバッと上体を起こし再度部屋を見渡した。


「やりましたわ!!

これで自由の身ですわ!」

最高の1日のスタートを切ったお嬢様は歓喜の声を上げた。


「何かいいことでもあったのか?」

「ええ!きっとあの小煩い悪霊も今頃地獄で後悔して...

なんでいるんですの!!?」


先程まではなかった壁から生えたものを見てお嬢様は愕然とした。


「なんでってそりゃこっちが聞きたいよ。

好きでお前の周りにいるわけじゃないからな。」


「別の方法も試していくしかなさそうですわね...」

お嬢様はそう呟きながら部屋の入り口の方を見つめた。


そこには宝石の原石のような物が積まれたオブジェがあった。


「なんだこれ。

金持ちの趣味はよくわからんな。」


悪霊はオブジェに近づきいろいろな角度から眺めてみた。


「フンッ。盛り塩がダメでも次の手はまだまだありますわ!」

「盛り塩だったのかよ!

普通岩塩でやるもんじゃないだろ!

いやどうせ普通の塩でも効かねーよ!」


こうしてまたお嬢様と悪霊のいつも通りの1日が始まった。

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