第4話


 夕方…

「ただいまー…お、ラーメンやん!珍しい」

今夜の夕飯は非常食として蓄えていたインスタントの袋ラーメン、台所に置かれたパッケージを見ると夫は明らかに嬉しそうな顔をした。


「ごめん…買い物出そびれちゃって」

「ええやん、休日は休むためにあんねん…弁当ありがとね、今日も美味かった」

「そう」

「レンコンの…なに、キンピラか、あれ好きやな」

「…ん」


 弁当箱はご飯粒ひとつ残さず綺麗に食べてあって、おかずを入れていた紙のカップやプラスチック製のピックもきちんと分別してシンクへ置いてくれる。

 ほらそういう気遣いが好きなの、でも本心なのか私の機嫌をとるためなのか分からずリアクションに困る。

「着替えて来る」

「うん」


 ぐらぐらと鍋の湯が沸いたら乾麺を3つ投入、解れてきたら刻んだ野菜をフライパンへ入れて中華出汁で炒めた。


「なぁ、千里…昨日のことやけど…悪かった、ほんまに…千里の気持ちを考えてへんかった」

「…いいよぉ…満足させてあげられなかったんだもん、私の事が嫌いじゃないなら…いい」

「嫌いちゃう、好きや……でもごめん、セックスの相性みたいなもんは…合うてへん気がする」

「……後にしよ、座って待ってて」

塩ラーメンの口に性的なエッセンスを加えたくない。

 丼を出して粉末スープの袋をパタパタ振って、夫を台所から離脱させる。



「……美味い!千里はほんまに料理上手やな」

「ありがと」

「野菜も美味い……俺、買い食いも控えるから…ダイエットするわ」

「そう」

「千里のメシが一番やな……美味い」


 二番や三番を試したから一番が分かるのよね、彼の評価もお世辞にしか聞こえなくて嬉しさは以前ほど無い。

 これを食べ切ったらまたセックスの話をしなきゃいけないのか。ネギの浮いたスープをぼんやり見つめては箸で麺を探した。

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