あの子が大好きな男子とあいつが大嫌いな女子

鵲三笠

第1章 2人の想い編

第1話 私はあいつが嫌い

「夕香!おはよう!」

「おはよう」


浅田夕香あさだゆうかに挨拶したのは南野美紀みなみのみき

夕香の親友だ。


「ねぇ夕香。お願いがあるんだけど……」

「宿題でしょ。わかってるんだから」


そう言って夕香は今日提出のプリントを机の上に出す。


「ありがとう夕香!帰りアイス奢るから!」


美紀はプリントを持って、自分の席に移動した。


「全く……宿題くらい自分でやりなさいよね」


そう言いつつも美紀にいつも見せてしまう自分も甘いと思ってしまう。


(お願いだから今日は来ませんように……)


夕香はとある人物を嫌っていた。クラスメイトでサッカー部のエース。

イケメンで女子からモテモテで告白経験があるあの男。


(来ませんように……ってか来んな!)


夕香が祈っていると一人の男子生徒が教室に入ってきた。


「夕香!おはよう!」

(……ッチ!来やがった……)


入ってきたのは六皇子修也ろくおうじしゅうや

夕香が嫌っているのはこの男だ。


「なんで嫌そうな顔してるの?」

「あんたが嫌いだから」

「俺なんかしたっけ?」

「あんたが私に絡むせいで付き合ってるって噂されるのよ!」

「なんだよそれ~。俺関係なくない?」

「だから絡んでくるからそういう噂が流れるの!もうそんな噂されるのは嫌だから

絡むな!」

「えぇ~。俺は夕香と仲良くしたいだけなんだけど……」

「私は仲良くしたくない……ってか下の名前で呼ぶな!」


修也と夕香がこうやって言い合うのはクラスでは日常茶飯事だ。

だからクラスメイトは二人が付き合っていないことは理解している。

でも付き合っちゃえばいいのにと思うクラスメイトも数人いる。美紀もその一人だ。


(お二人さん……今日もラブラブだ♡)


美紀はドキドキしながら二人を見つめる。

やがてチャイムが鳴り、クラス全員が自分の席に戻る。


「二度と話しかけて来ないで」

「それってそういうふり?」

「……ぶっとばすわよ」

「怖っ」


担任が教室に入り、修也が席に戻るとホームルームが始まった。



昼休み。夕香がお弁当を鞄から出すと修也が近づいた。


「……何?」

「そんな冷たい目で見るなよ~。一緒に食べよう!」

「二度と話しかけて来ないでって言ったよね?」

「クラスメイトだからそれは無理だろ。一緒に食べよう!」

「いつもは部活のメンバーと食べてるじゃない」

「それがあいつら休みなんだよ」

「悪いけど私は美紀と一緒に食べるから」

「えぇ……」

「美紀。一緒に食べよう」


夕香が美紀の席の方を向くと美紀は急に立ち上がった。


「あいたたたた~!急にお腹が痛くなった~!保健室行ってくる~!」


美紀はわざとらしくお腹を抱えながら教室を出た。


(二度と美紀に宿題見せない……)

「じゃあこれで食べられるな」

「は~……好きにしなさいよ」

「あれ?怒らないの?」

「一人で食べるのが好きじゃないだけ」

「寂しがり屋なんだね」

「何?」

「……何でもない。いただきます!」


修也はレジ袋からコンビニで買ったクリームパンを取り出す。


「あんたコンビニで買ったやつ食べるの?」

「うん。親は仕事で戻ってこないし、朝練で弁当作る時間ないからな。

食堂は満席だし」

「だとしても体に悪いじゃない。栄養バランス考えなさいよ」

「もしかして俺のこと心配してくれてるの?」

「……ぶっとばすわよ」

「それ怖いからやめてよ」

「とにかく一緒に食べるのはこれが最初で最後だから」

「……もう一緒に食べてくれないのか?」

「当たり前でしょ。私は美紀と食べたいし……」


夕香が修也を見ると修也はしょぼんとしている。

「……たまにならいいよ」

「えっ⁉本当⁉」


修也の顔が明るくなる。

「たまにだからね!」

「ちなみにたまにの頻度は?」

「……月一回とか?」

「半年に一回じゃなくてよかった~」

「それでもいいけど?」

「月一でお願いします」

「わかったから早く食べなさいよ」


二人のやり取りを美紀は廊下からこっそり覗いていた。


(いい感じに進展してるじゃん♡今後が楽しみだな~)


「じゃあ夕香また食べような!」

「月一だからね」

「わかってるよ!」


修也は嬉しそうに席に戻った。

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