恋愛ものの皮を被った兄弟の物語
- ★★★ Excellent!!!
ほのぼの恋愛物語ではあります。ですが、運命の残酷さを感じさせる物語でもりました。
簒奪された前王朝。残された王子は母の違う三人。王太子パトリックは廃されて修道院へ。残った王子のうち、末王子のロバートは惨たらしく殺され、第二王子の主人公シリウスは重臣コーネリアス宮中伯に引き取られて幽閉される。
弟のシリウスは死を常に意識する幽閉生活をおくりながらも、比較的行動の自由が認められ、絵を描くことができ、宮中伯の娘と会話することができる。
一方で、兄で廃太子のパトリックには何があったのだろうか。シリウスが恐怖に陥りながらも令嬢のユディットやサンダースさんと静か(いやそれにしてはユディットのせいでおおさわぎ)な生活を送る中で、パトリックは修道院でどんな暮らしを送っていたのだろう?
そういうことを思わされる作品でした。
兄のパトリックの行動は確かにずさんで危険なもの。でも、前王朝の遺児として正しいことをしました。でも弟のシリウスのほうが生きていく上では正解。
いや、そもそもこれが正しいというものはないのかもしれません。パトリックはパトリックの人生を生きたし、シリウスはシリウスの人生を生きている。
この兄弟ふたりが、満足できる人生を送れれば、と私は思います。