第10

〝お岩に〟が ぽつり ぽつりと話しはじめる。


「お岩のおかあさんを探していたよ。‥でも、であえなかった。それでも、いま こうして お岩に 行きあえたんだから、よかったよ。

お岩は、わたしにとって、心の母だから。

実の母は ひとりでも、心の母は いくつあってもいい。たとえ、それが、おすの のらねこだとしても。」


心の母?

のらねこのわてが、〝お岩に〟のお母さんがわり?


「わたしは のらねこ お岩を心の母と呼んでいるけれど、いつかは お岩のことを わすれてしまう時がくるのかな。絶対にお岩をわすれない、と言っているけれど、そうではないのかもしれないね。なぜって、いつか倒れる時がくるのなら、

わすれることと同じだものね。」


ちがうよ!


あきらめて だめになることと、最後まで あきらめなかったことは、たとえ同じ結果になったとしても、ちがうんだよ。


わては、そのようなことを言いたかったが、

それが声になっているかは わからない。


わての心の声、ひとかけらでも〝お岩に〟に届くかな?


茜色に暮れかかった空の下、1つのうたが流れてきた。(♩のらねこ お岩)


やっぱり、とほほのわてには、こういう1歩が似あっている。わては きょう わての前をとおりすぎていった いろいろなもののことを思いだしていた。


ぼろぼろで つくれなかった紙のおにぎり。

ちょうちょ。からす。

白いぼうし。茜の空。すぎさる雲。


みんな、わすれない。



おわり(あと、すこし、つづく)


※次のページに

♩のらねこ お岩 (テーマ)

歌詞をのせるよ。

気になるひとは見てみてね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る