第4話旅にでる
そういえば、〝お岩に〟は、からすから
おにぎりをもらったことがあると言っていた。
もらったと言っていたけど、
それ、ほんとうは、横取りしたんじゃないの?
わて、のらねこだけど、わてだって、
ごみ袋をいじったりしないよ、なのに、
からすから おにぎりを取るなんて、
〝お岩に〟ってば、最低だよ、意地ぎたないんじゃないの。
〝お岩に〟って、ひとじゃないんじゃないの、
白いぼうしをかぶった ただの変ちくりんだよ。
‥とほほ、
空から おにぎりがふるのを待って座っているのに。おにぎり1つふってこない。
わては、日記の書きかたについて
小言を言われて いやになった日記帳の、
さいしょの1ページをのぞく、
残りのページをつぎからつぎへと破く、それをまるめて、じぶんの思うおにぎりらしいものをつくろうとするが、うまくいかない。
それでも、なんだか、いい気分なんだっち。
むりに書かされた こんな日記帳なんて、
いらないんだっち。
おにぎり1つ持って出るのが旅なら、
なに1つ持たずして外に出るのも、
それもまた旅なのかもしれない。
すべてを失くしても、なお、最後に1つだけ持てるものがある。それは、勇気。
そうだよ、わて、びびり症だけど、勇気を持って とべば、ことばなんて使わなくたって、前にいける。
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