現在編:選ばれし者の覚醒



アークコアから放たれた光が徐々に収束し、グリードの周囲に再び静寂が訪れた。しかし、その心は嵐のように揺れていた。過去のゴブリン文明「ザルヴァス超構造体」の繁栄、そして神々との戦い――すべてが鮮烈なイメージとして脳裏に焼き付いている。


「俺たちゴブリンが、あんなに強大な文明を持っていたなんて……」


彼の小さな拳が震える。繁栄から破滅へ――それはまるで自分たち現代のゴブリンの姿を映し出しているかのようだった。だが、同時に胸の奥に燃え上がる感情があった。


「俺は絶対に同じ過ちを繰り返さない。新しい未来を切り開くんだ。」



アークコアが停止した後、その中心に小さなクリスタルが現れた。それは淡い青色の輝きを放ち、まるでグリードを待っているようだった。


「……これが、ザルヴァスの遺産か?」


彼が手を伸ばすと、クリスタルが触れる前に彼の手の中へと吸い込まれるように消えた。同時に、頭の中に機械的な声が響く。


《アクセス認証完了。適性保有者、グリード・ザルヴァス。選ばれし者として、プロトコル「ガイア・リストレーション」を開始します。》


「ガイア・リストレーション」とは何か。その答えはすぐに彼に明かされた。


《このプログラムは、ゴブリン文明の再建と神々への挑戦を目的とするものです。進行には適切な資源と知恵が必要です。》


プログラムに応じて、クリスタルが彼の体内に溶け込み、失われた知識や技術が断片的に流れ込んでくる。その情報は彼にとって膨大かつ圧倒的でありながら、不思議と理解できるものだった。


グリードはアークコアを離れ、集落へと戻った。だが、その目に映ったのは荒廃した風景だった。


「……何があったんだ?」


集落は襲撃を受けた後のようで、家屋は壊れ、地面には争いの痕跡が残っていた。ゴブリンたちが何人か生き延びているものの、全員疲弊し、絶望の色を浮かべていた。


彼に駆け寄ったのは幼馴染のマーヤだった。


「グリード!どこに行ってたの!?ここが襲われたんだよ……!」

「誰がやったんだ?」

「……人間の傭兵団だよ。」


人間たちはゴブリンを「弱い存在」として虐げることを当然のように考えている。そしてその結果が、目の前の惨状だった。


グリードの拳が自然と握られる。だが、心の奥で別の感情も芽生えていた。


「俺たちもかつては、神々から同じ目で見られていたんだろうな……」


その瞬間、彼は決意した。この苦しみを終わらせるために、自分が新たなリーダーとなり、かつてのザルヴァス文明を超える存在を築き上げることを。


翌日、グリードは集落の中央に立ち、ゴブリンたちに向けて宣言を行った。


「俺たちはもう逃げない。奪われるだけの存在でもない!」

彼の言葉に戸惑う者もいたが、その目の輝きに引き寄せられる者も少なくなかった。


「かつて、俺たちの祖先は偉大な文明を築いた。そして、神々に挑んだんだ!」

誰もが驚いた。ゴブリンたちにそんな歴史があったとは知らなかったからだ。


「俺たちもそれを取り戻す。そして、もう誰にも支配されない自由を手に入れるんだ!」


その日のうちに、グリードを中心とした「再建の計画」が始まった。彼はアークコアから得た技術を使い、集落の再建や武器の製造を指揮するようになった。


だが、その動きはすぐに「外部」に知られることになる。古の神々は、再び動き始めたゴブリンの気配を敏感に察知していた。


ある夜、グリードの夢に再び機械的な声が響いた。


《警告:神々の干渉が予測されます。選択せよ――戦うか、降伏するか。》


彼はためらわずに答えた。


「戦う。それが俺たちの道だ。」

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忘れられた種族〜宇宙でゴブリンが帝国の復興を目指す成り上がり物語〜 @ikkyu33

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