20:スフィアと地球


「凄い……これがルーナがいた世界……」


 そう言って目をキラキラさせている隣の少女はスフィア。人員が欲しいってことで、エレスティア様が天照様とも話して向こうの世界……エレスティアから連れてきた1人目の人である。


「驚いた?」

「ん……とても。建物も走っているアレも……見たことがないものばかり。前、言ってた車ってあれのこと?」


 道路を走る車を指差して聞いてくるスフィア。


「そうそう。あれがそうだよ」


 車とかはさぞスフィアからすれば珍しいと言うか初めて見たものだろう。まあ、エレスティアはよくあるファンタジー世界で、大体地球の中世ヨーロッパ風の世界観だ。

 ただ、確かに中世ヨーロッパ風ではあるものの魔法という地球には存在しなかった力があったため、別の方面で進化しほぼ地球と変わらないような生活水準に到達している訳だ。

 とは言え、生活水準にはそれなりに高いが身分関係については未だに貴族や王族と言ったような存在が居る訳だ。


 そう言った高位の存在もいれば逆も居る訳で。

 分かりやすく言うなら奴隷とかだろうか。エクレール王国では、奴隷は禁止しているので関係ないが、他国では普通に奴隷というものが存在しているところもある。

 奴隷については知っての通りというか予想通りだと思う。その奴隷の扱いについても国によっては結構異なったりするのだが……。


「ん。……これからどこに行くの?」


 そんなことを考えながらスフィアを見ていると、その視線に気づいたのかちょっとだけ頬を赤くして話題を変えてくる。

 目をキラキラさせているスフィアも可愛かったが、こんなに表情に出るのは珍しいかもしれない。


「まずはスフィアのこっちで使う日用品とかを買おうかと思ってね」


 文化が異なる……まあ異世界なので当たり前なんだけど、地球についての知識もスフィアに教えておかないと駄目だろう。

 まああとはついこの間言ったように、どこか良い物件がないかどうかをついでに探してみようかなと思って。


 地球人であれば、都会の方が便利でこちらを選ぶだろうがわたしの場合は逆に都会から離れたような場所が望ましいと思っている。

 値段が安いからとかそういう理由ではないが……いや少しは理由に入っているけれど、一番はやっぱり気にせずエレスティアの話題を出せる場所が欲しいのである。


 エレスティア様もちょくちょく来るだろうし、天照様も来るかもしれない。同じ階層に人が居ないとは言え、どこで聞かれてもおかしくない。

 それに何人来てくれるかはわからないけど、スフィア以外にもエレスティアから人が来る予定ではあるので予め用意しておきたいね。


 貸物件とかではなく購入したい。

 家と土地……どの道、かなりの金額になるのは確かだ。とは言え、エレスティアで稼いだお金をこちらでも使えるように天照様がしてくれているので、金銭面は問題ないと思う。

 身分証もある。まあ以前の自分のものではなく、今のこのわたしのものになるのだが。そこは仕方がない。


「スフィアの服も買おうか」

「ん……これで大丈夫」

「いや、着替えは幾つか持っておいた方がいいよ」


 何があるか分からないしね。


「それなら自分で買う」

「大丈夫大丈夫。今回はわたしに買わせて欲しい」

「……ん」


 スフィアも身の回りの物をエレスティアから幾つか持ってきているが、地球の服もあった方がいいだろう。

 元を辿ればこっちに来させたのはわたしだしね。連れてきたのはエレスティア様ではあるが、スフィアを候補に入れたのはわたしだし。スフィアは自分の意思で来たと言っているが、こっちに関しては嘘ではなさそうだ。


 まあ……色々散々と言っているけどエレスティア様はそんなことをしないということは分かってるし。口には出さないが。


「じゃあ行こうか」

「ん」





□□□





「……」


 ふむ。

 取り敢えず、スフィアが必要そうな日用品等の買い物を終わらせた。今わたしの目の前に見えるのは、都市部からそこそこ離れた位置ににある空き物件である。

 建物も結構古くなっているが、まだまだ使えそうな状態。エレスティアとは違って、土地関係については地球では厳密に管理されているので、色々と手続きが必要である。

 まあ、魔物の出現等のアクシデントが発生してから以前よりは杜撰になっている点については否定できない。


 魔物の襲撃によって被害を被った建物や人々も居る。

 地球に魔物が出現し始めたのは割と最近の話だったりする。突然出現した魔物たちは近くの居住区や自然を破壊し尽くした……らしい。


 らしい、というのはそれが本当なのかどうかは判断が付かないから。わたしが戻ってきた地球は既に復興もしており、元の水準と変わらない状態であったし。

 当時の映像や写真といった物も残っているので、まあほぼ間違いないのだろうけど……。


「しかし……魔物の出現がわたしが転移した1年後ってところがどうも気になる」


 エレスティア様の話では、魔物の正体はエレスティアの魔物であること。魔族ではなく魔物である。

 となると、魔王が何か関わっている可能性は低そうだ。とはいえ、魔王が関わっていなくてもその他の魔族が関わっている可能性は否定できないが。


 因みにどうでもいいことだが、エレスティアに君臨している魔王はわたしが間に入って話し合いをした魔王本人である。

 今更だけどこっちの世界と向こうの世界での時間差はさほどない。向こうで1年過ごせばこっちも1年経過しているといったように考えると分かりやすいだろう。


「ルーナ、考え事?」

「うお!?」


 スフィアさん近いです。

 めっちゃ顔が近い。当の本人は特に気にした素振りも見せずに、淡々としているがわたしにとっては心臓に悪いよ。


「?」


 不思議そうな顔をされても困る。


「エレスティア様から簡単に聞いていると思うけど……」


 そこまで言って周りを見回し、聞き耳を立てている人や怪しい人、通行人等が居ないことを確認する。怪しい人は居ても困るけど。


「ん。簡単には聞いてる」

「この世界は本来魔物は居なかったはずなんだけどね」


 わたしがまだ地球で生きていたときは魔物のまの字すら聞いたことがなかった。本当に6年で何があったし。

 ……いやまあそれを突き止めるためのわたしなんだけどさ。


「この世界に初めて魔物が出現したのは5年前。わたしがエレスティアに行った1年後なんだよねぇ。ちょっとそこが気になっていた」


 気になるだけだけど。

 偶然1年後なのか、意図的なものなのか。それは魔物がこっちの世界に出現したことと同じなのだけど。


「まあ、取り敢えず情報収集かな。スフィアにも色々と手伝ってほしいし」

「ん。任せて」

「心強いな」

「ルーナのためなら何でもする」

「それは言いすぎなのでは……女の子が気軽に何でもするとか言わないの。しかも、スフィアに関しては王女なんだから」

「大丈夫。ルーナにしか言わない」


 他の人に言っていたらそれはそれで問題な気がするけど。


「ひとまず、一度帰ろうか」

「分かった」


 後でここを購入できたらするつもりだけど、今日はいいかな。

 そんなことを思いながら、わたし達はそのまま帰路の付くのであった。





あとがき

ここにて一段落です。先週は忘れてすまねぇ……!

リアル事情で不定期になりそうです。

が、頑張る……

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異世界出戻りTS少女と魔法少女 月夜るな @GRS790

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