生きること、食べること、日常を紡ぐこと

異世界ファンタジーですが、魔法もモンスターも出てきませんし、剣での戦いや国同士の争いもありません。
ですが、ここには何よりも温かく豊かな「日常」があります。
ひとつひとつのお話が、ひとりひとりのキャラクターが、丁寧につくられた料理のように、丹精こめて育てられた花のように、愛情深くこまやかに描かれています。
はじめは読者に良い印象を与えないようなキャラクターにも、読みすすめれば彼なりの思いや考えや事情があり、家族に愛されていることがわかります。
また、「食べること」の大切さを語っているのも、本作の大きな魅力のひとつ。
食べることは生きることであり、生命を繋げることだというキャラクターたちの想いが胸に沁みますし、登場する料理やパンやお菓子も実に美味しそうです。私もオルガのつくるデニッシュが食べたい!
読むたびに、自分も一瞬一瞬を大切に過ごそう、人間という存在そのものを信じようと思えることでしょう。

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