白線の内側

道路に引かれた白い線はいつも私を区切るように影を分断した。

突き刺された何かの矢が実体がない影に深く根ざして私を主張するが如く、白線だけが、まるでルールのように私を定義し続けてるようだ。私はこうであるべきなのだと。その内側に降り立つことすら不安定なゲームボードの上で繰り広げられてる人生に過ぎないのだと。

子供の頃、黒白ゲームというように区切りしか歩けないゲームをして自らを白線のうちにおいた。私の存在を示すようにそういう定義を設けて初めて自分の色が色濃く映る気がした。落ちてしまうとそれで終わりというドキドキした気持ちはあの時の私を高揚させていたのに、歳を取れば取るほどそれはただの定義から義務へと成り下がる。

私と言うものをふた方向へと引き裂くある種の白線へとなってしまっていたことには気が付かず、落ちないようにわざと笑顔を貼り付ける羽目になってしまうことは、最近になって気がついた。白線のうちにお下がり下さい。とホームで声が聞こえたように、私はこの線を跨いでどこかへ飛んで行きたいと願いながらその一歩を躊躇い、自分の足先の痛みを先に優先してしまうのだから、どこにも行けそうにもない。

あの時の気持ちを思い出せばまた探せるのだろうか、と郷愁に耽ってみても、私はこの影の方が居心地が良いので全てを振り払い自分となるには時間がかかりそうだとどこかで思った。

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トンネルを抜けると 珊瑚水瀬 @sheme

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